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公益財団法人 甲南会 甲南医療センター

(兵庫県 神戸市東灘区)

具 英成 院長

最終更新日:2020/11/25

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高度急性期・救急医療を担う総合病院に一新

「甲南医療センター」の前身は、1934年に、川崎造船所社長であり文部大臣などを歴任した平生釟三郎(ひらお・はちさぶろう)氏によって開院された「甲南病院」。「営利本位に陥らず、すべての患者が名医の治療や手術が受けられる患者本位の医療を追求する」ことを創立時からの理念とし、80年以上にわたり、神戸東エリアの人々に親しまれてきた。「心ある医療」で地域の健康を支えてきた同院は今、大きな変貌を遂げつつある。50年先、100年先を見据えた医療を提供するため、大規模な改築工事を行い、医療設備や診療体制を一新。24時間365日対応できる救急医療体制も整い、高度急性期・急性期医療を担う総合病院に生まれ変わった。2019年に1期工事が終了したのを機に、院名も新名称へと改名。2期工事が完了する2022年には、病床数は480床になる予定だ。親しみやすいマスコットキャラクター「コーニャンズ」も誕生し、新病院への期待がますます高まる中で、新たな医療に向けた取り組みや、「心の深くに届く医療」をめざす同院の精神について、具英成(ぐ・えいせい)院長に話を聞いた。(取材日2019年11月26日)

甲南病院から甲南医療センターへ。どのように変化したのですか?

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老朽化が進んだ建物の改修はもとより、新たな時代に必要とされる医療の実現に向け大規模なリニューアルを行いました。甲南会が運営する六甲アイランド甲南病院から、脳神経外科、歯科口腔外科、泌尿器科、循環器内科、小児科、産婦人科などが移り、診療科が増えました。2019年に竣工した新病棟には8床のICU(集中治療室)と10室の手術室を設け、PET-CTなど先端の医療機器や設備が多数導入されました。また内科診療が強化されるとともに、多数の外科系医師を増員してチーム編成も一新し、低侵襲手術から高難度手術までさまざまな手術にも対応可能に。「断らない医療」を実践すべく、365日24時間の救急医療体制を整えたほか、緩和ケアチームが6人の医師を軸に充実した診療を行っています。2期工事が完了する2022年には480床に増床予定で、高度急性期・急性期医療、救急医療を担う総合的な基幹病院へとさらに診療規模を拡大します。

六甲アイランド甲南病院との統合再編も大きな変化ですね。

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3年前に病院長に就任して、私が最初に取り組んだことは、甲南病院と六甲アイランド甲南病院の垣根を取り払うことでした。母体は同じなのに独立して機能していた両院を一体化させ、リニューアルを機に、急性期医療は甲南医療センターへ、地域包括医療、回復期リハビリテーションは六甲アイランド甲南病院へと集約しました。機能統合・再編の狙いは、高度急性期だけでなく回復期においても高いレベルの医療の提供をめざし、社会復帰まで切れ目のない手厚い医療支援を担っていきたいと考えたからです。ベテランの医師をはじめ、理学療法士など専門技術を持ったスタッフを多数配置し、急性期を脱した後も地域の中で質を追求した回復期リハビリテーションが行える体制を整えました。役割分担をすみ分けすると同時に、両院を結ぶくるくるバスによる交通の利便性を高めるなどして連携は以前より強化されています。

新しい行動指針に込められた想いをお聞かせください。

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建物を一新しただけでは意味がありません。大切なのはやはり人であり、医療の土台は人の手で温かく接することだと私は考えています。行動指針に掲げた「心技一体」。これは武道の言葉ですが、よき医療にも相通じるものがあります。よき医療は患者さんを助けたいという想いだけでは実現できません。技術と能力なくして患者さんは救えません。いくら優れた技術があっても技術一辺倒では駄目です。心がなければ、可能性をとことん突き詰め、患者さんに喜んでもらえるベストな医療を実現することはできないでしょう。また、心のある医療は医療安全にも通じるものがあります。人は誰でもミスをするものですが、「心技一体の医療が行えているだろうか?」と常に自らに問いかけていれば、何かおかしいことに気づき立ち止まることができるはず。「高い品格を持ち、心の深いところに届く医療をやってほしい」。これは医師だけではなく、全職員に常々伝えていることです。

若手医師や医療スタッフに対し、具院長が求めるものは何ですか?

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私は30年以上、神戸大学に在籍し、外科医師として消化器を専門としてきました。研究者としても大学で働いて思うのは、行間を読む能力を培うことの大切さです。新しい技術のすべてが、素晴らしいものであるとは限りません。若いうちにロジックを鍛え、医療だけでなく文化人類学的な教養も深めなければ、「価値のある医療」と「人間を不幸にする医療」とを判別することはできないでしょう。若い人には本物を見極める力量と感性を磨いて、広い視野で医学に向き合ってほしいと思います。今回、新病院開設に伴い、医師とスタッフを大幅に増員しました。今後も神戸大学と連携して、活気ある若手医師の確保に努めていくつもりです。ここで勤務する医師とスタッフには、医療レベルの向上と心のある温かい医療に取り組んでもらいたいのと同時に、甲南で勤務した経験を今後の活躍につなげ、次世代の医療を引っ張っていく存在になってくれることを願っています。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

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東灘区は人口21万人を超える、神戸市の中でも規模の大きい行政区ですが、公的な総合病院がありませんでした。その中で甲南病院は民間病院でありながら、公的病院と同じような役目を果たすことを使命に、地域の方々に親しまれてきました。この役割はこれからも変わりません。むしろ今後は、さらに高いレベルを追求した医療を提供し、これまでの甲南病院とは似て非なる病院にしていくつもりです。24時間365日、救急搬送の受け入れにも対応しており、最善の医療が受けられる「甲南医療センター」が近くにあるから安心だ、頼もしい病院だと地域の皆さまが確信し、頼ってもらえるような病院であり続けたいと思います。今後は神戸大学や行政との連携を一層深めながら、職員全員が力を合わせ、時代のニーズに合った医療を、ここ「甲南」から発信していきたいと考えています。

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具 英成 院長

1977年神戸大学医学部卒業。1990年英国ケンブリッジ大学への留学、2005年神戸大学先端医療探索応用分野・肝臓移植外科教授就任。2007年同大学院肝胆膵外科学教授。先端技術を駆使した肝胆膵がん治療のエキスパートとして、多くの手術を行う。2012年から同大学附属病院移植医療部長を務め、2017年一般財団法人甲南会甲南病院院長就任。日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本肝臓学会肝臓専門医ほか。

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