愛知県厚生農業協同組合連合会 海南病院
(愛知県 弥富市)
奥村 明彦 病院長
最終更新日:2022/07/27


高度医療から訪問介護まで担う次世代型病院
愛知県の西の端、三重県との県境にある「海南病院」。弥富市役所や弥富市立図書館が立ち並ぶ市中心部にあり、近鉄弥富駅からも徒歩10分と利便性の良い病院だ。屋上には、ヘリポートが舞台のように建物から大きく突き出し、救命救急センターとしての存在感を示している。「質の高い、安全で安心な医療提供をとおして、地域を守り、地域から信頼される病院を築く」という理念をもとに、高機能でコンパクトな次世代型病院をめざして進化し続ける同院。救命救急医療や高度医療から緩和ケアや訪問看護、通所リハビリテーションなどまで、地域のニーズに寄り添って多機能化してきた。奥村明彦病院長は、「顕微鏡的な見方に偏らず、人としての患者さんを診るという心構えを大切にしています」と話し、心ある医療人の育成にも力を入れる。同院の特徴や地域での役割について奥村病院長に話を聞いた。(取材日2022年6月7日)
病院の歴史について教えてください。

1938年に地域の農協組合員のための病院として開設したのが始まりです。1959年には、伊勢湾台風の被害で病院の再建を余儀なくされ、その際に20床から245床へと規模も拡大しました。以降、地域医療のニーズに応えるため増改築を重ね、手術室とICUを含む新病棟や緩和ケア病棟、感染症病棟を開設し、診療病棟は2011年から6年越しで建て替えを行いました。当院は市の中心部に位置しているため周囲に建物が隣接しており、限られた敷地の中で医療を止めずにいかにリニューアルしていくかというのは、常にある課題です。工事中はご迷惑をおかけしましたが、現在は多くの診療科を有し、540床の3次救急医療機関として24時間365日診療しています。救急医療や高度医療だけでなく、地域の高齢化に伴い、訪問看護ステーションや通所リハビリテーション施設も併設しました。訪問入浴サービスなども行い、介護領域でも積極的に取り組んでいます。
こちらの病院の地域における役割を教えてください。

地域においては、救急医療、災害時医療、周産期母子医療、がん診療など多様な機能が求められ、地域医療の中核を担う役割があります。そのため、高機能病院となるべく、救急医療体制の確立をはじめ、高度医療機器の導入、チーム医療の推進に取り組んできました。救命救急センターでは、県南西部はもとより、三重県北西部や岐阜県南部などから患者さんが搬送されています。最後の砦と自覚し、極力、断らずに受け入れることが病院全体の共通認識。ドクターヘリやドクターカーなども活躍し、地域の災害拠点病院として機能。災害時には、外来のソファーが簡易ベッドになり、柱から酸素吸引機器接続ができます。新型コロナウイルスの感染拡大に際しては、愛知県の取り組みとして、新型コロナウイルスに感染した妊婦さんの受け入れを輪番制で行うことになりました。当院も輪番病院として、大学病院の協力も得ながら対応しています。
高度医療機器を導入したことでどんな疾患が治療できるのですか?

ロボット支援手術は県下でも早い段階から導入し、前立腺がんや膀胱がん、子宮良性疾患など、主に泌尿器科と産婦人科の手術で活用しています。CTの中でも320列のタイプは、ワイド撮影が可能なので患者さんが動かなくても心臓を撮影できます。造影剤を使って連続撮影することで血管の流れなどを観察することもできるので、段階的な治療や検査に幅広く活用しています。がん診療では、放射線治療に力を入れています。定位照射、画像誘導などができる先進の放射線治療装置により、腫瘍性疾患に活用しています。体の負担が少ない低侵襲な治療に役立っています。
コンパクトな次世代型の病院をめざしているそうですね。

医療の質を高めるための効率化は、病院設計の段階から行っていました。検査室の配置や入院病棟へのアクセスなど、動線を短くしたこともその一つです。特に救命救急センターは、初療室から扉1枚でCT撮影室への移動ができます。内視鏡検査室や手術室も近くにあり、救急病棟への入院までが迅速な流れで完結できるようになっています。また、ソフト面では地域医療機関とのネットワークを強化し、コンパクトな医療体制を整えています。地域のクリニックと緊密に連携し、急性期を終えた患者さんがスムーズに回復期、慢性期の診療へとつながるようにしていきたいです。当院は臨床研修病院にも指定されており、医師だけでなく看護師、臨床検査技師、薬剤師など多職種の学びの場でもあります。次世代の医療を担う若い人たちには、当院で人と人との和やコミュニケーションを大切にし、しっかりとチーム医療を学んでほしいと思っています。
地域の読者へ向けたメッセージをお願いします。

地域の中核病院として当院の役割を実践するためには、開かれた病院でなければならないと思っています。取り組みの一つとして患者さん満足度調査アンケートや院内ポストに投函されたご意見を分析し、必要であれば改善するよう努めています。アンケート結果と医療の質を具体的な数値で示したデータは、ホームページで公開していますので、ぜひご覧ください。地域のクリニックの先生方とは、カンファレンスも行い、良い関係を築いてきました。病院の立ち位置も確認しながらさらに前進していきたいと思っています。今後は、新しい技術を取り入れるためにもスペースが必要になるため、施設の拡充が必要となりますが、どんな場合でも診療機能は止めず慎重に行っていきたいと考えております。

奥村 明彦 病院長
1986年名古屋大学医学部卒業後、市立四日市病院に勤務。その後、名古屋大学医学部附属病院第3内科を経て1996年愛知医科大学第1内科学講座助手。1998年アメリカ・マサチューセッツ総合病院に留学後、2000年愛知医科大学消化器内科学講師を務める。2007年海南病院消化器内科部長、副院長を歴任、2019年病院長就任。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器病学会消化器病専門医。日本肝臓学会肝臓専門医。