医療法人 瑞頌会 尾張温泉かにえ病院
(愛知県 海部郡蟹江町)
落合 淳 院長
最終更新日:2023/11/30
地域包括ケアシステム体制の拡充をめざす
愛知県西部に広がる濃尾平野、その南部に位置するのが蟹江町である。「尾張温泉かにえ病院」は町の中心部、源泉かけ流しの温泉施設の近くに立つ。引き湯をした入浴施設を持ち、コロナ禍以前は温水の中での歩行訓練や体操を行ってきた。開院は1988年で、リハビリテーション専門の「尾張温泉リハビリかにえ病院」として長く認知されてきたが、2014年に全面移転し名称変更。現在、外来は内科、脳神経内科、循環器内科、糖尿病内科、整形外科などを有し、頭痛専門の外来診療も開始するなど地域住民の幅広いニーズに応えている。「高齢の方は複数の疾患を持っておられる場合が多く、リハビリも含め複数科と連携した総合的な治療を心がけています」と落合淳院長。回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟を持つケアミックス病院で、2023年末に向けての病棟リニューアルにより地域包括ケア病棟のさらなる拡充を図る予定だ。急性期治療後すぐの医療とリハビリから在宅療養のサポートまで、切れ目なく患者の生涯に寄り添うことが信念。急性期病院とかかりつけ医をつなぐ「地域密着型病院」として歩む同院の現状について聞いた。(取材日2023年9月19日)
病院の成り立ちや地域での役割について教えてください。
当院は1988年「尾張温泉リハビリかにえ病院」として開院したのが始まりです。2014年に全面移転したのを機に「尾張温泉かにえ病院」と名称変更しました。回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟を拡充し、さらに2017年、旧病院を改装し介護老人保健施設を開所、要介護の高齢の方が自宅や居宅系施設での生活に戻れるように連携して包括的な支援を行ってきました。法人内には訪問看護ステーションもあり、在宅療養を支援する機能も持っています。また、風邪などのちょっとした体調不良の診療など「地域のかかりつけ医」としての役割も担っています。外来は、内科、脳神経内科、循環器内科、糖尿病内科、整形外科、リハビリテーション科、リウマチ科を有し、専門の医師による診療にも力を入れています。地域にある身近な病院として、専門的な医療提供から在宅療養のサポートまで携わり、地域貢献することが当院の大きな役割だと考えています。
特徴としてはどのようなことがありますか?
一つは、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟の計118床を持つケアミックス病院であることです。脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などの急性期治療を終えられた患者さんをできるだけ早い段階から受け入れ、適切な医療とリハビリを集中的に行っています。退院されてからは症状に応じて介護老人保健施設に入られる方、自宅に戻る方それぞれですが、当院への通所リハビリや適切な在宅医療支援によりサポートを続けます。地域包括ケア病棟は今後数を増やす計画で、軽症急性期の患者さんや、あるいは在宅療養中に体調が悪くなった患者さんを今まで以上に多く受け入れていく予定です。近隣の開業医さんには気軽に患者さんを紹介していただければと思っており、より連携を強化していきたいです。地域包括ケアシステムを担う一員として、地域密着型の病院であることが当院の一番の特徴といえますね。
リハビリ専門の医師もいらっしゃるんですよね。
はい。日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医が在籍しておりますので、その経験と専門知識のもと、スタッフ教育も含め、より良い体制づくりにも取り組んでいるところです。また、今の建物の4階には広々としたリハビリルームがあり、見晴らしの良い窓からは、天気が良ければ一方には鈴鹿の山並みを、もう一方には名古屋のビル群を望むことができます。ここで約50人在籍する専門スタッフが交代で日々患者さんのリハビリを行います。若いスタッフが多く、活気に満ちた雰囲気がありますね。リハビリスタッフ、医師、看護師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど多職種がチームで患者さんを支えます。また、当院には隣接する温泉施設から湯を引いたプールがあり、コロナ禍以前はお湯の中で歩行訓練や体操を行っていました。いずれは再開したいですね。ほかにも屋上庭園があり、外の空気を感じながら歩くこともできます。
先生のご専門の脳神経内科についてもお聞かせください。
当院では脳神経内科と整形外科が毎日診療している外来です。脳神経内科で多いのは、頭痛、めまい、認知症など。若い患者さんでは頭痛のほか、てんかんの方も来られます。脳卒中の後遺症や神経難病にも対応しています。脳神経内科疾患の適切な診断のためには患者さんのお話をよく聞き、歩き方なども含めて全身を診ることが大切。当院では即日、MRIやCTによる画像検査も可能です。今は高齢でパーキンソン病の方が増えていますが、大きな病院では入院してのリハビリは難しいことも。当院では地域包括ケア病棟がありますので、在宅で状態が悪くなってきた方には薬の調整やリハビリを兼ねて短期入院していただくことができます。また、脳梗塞の慢性期に起こる手足の痙縮に対しボツリヌス療法も行っているほか、頭痛専門の診療も対応しています。2023年11月には物忘れに特化した外来診療を開始する予定で、認知症の診療には力を入れていきたいところです。
今後についてお考えをお聞かせください。
高齢の方は内科疾患、整形外科疾患、認知症など複数の症状をお持ちのことが多いため、複数科の協力体制が大切ですが、当院はコンパクトな規模ですので連携しやすいといえますね。そのため全身の状態やリハビリの状況を考慮しつつ治療方針を決めていくことができます。決して敷居が高い病院ではないので、困ったことがあればお気軽に何でも相談してください。頭痛や物忘れについても早めに受診していただければと思います。繰り返しになりますが、当院では現在、地域包括ケア病棟の拡充を計画しています。急性期患者さんの病状が落ち着き次第できるだけ早く受け入れるポストアキュート機能をより高めるとともに、在宅療養中の軽症の急性期疾患の患者さんを受け入れるサブアキュート機能も整えることが地域において当院に求められていることでしょう。今後も皆さんのお役に立てるよう、地域医療の要としての役割を全うしていきたいですね。
落合 淳 院長
1982年岐阜大学医学部卒業。九州大学病院にて初期研修を終え、岐阜県の河村病院に勤務、その後、岐阜大学大学院修了。中津川市民病院脳神経内科、名古屋大学医学部附属病院神経内科を経て名古屋掖済会病院神経内科部長などを歴任。2022年9月より現職。日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医。