医療法人三九会 三九朗病院
(愛知県 豊田市)
加藤 真二 理事長
最終更新日:2023/03/14
リハビリテーション病院として患者を支える
開設以来、70年近く豊田市に根づいてきた「三九朗病院」。4代目となる加藤真二理事長は、患者はもちろんその家族、職員、病院に関わるさまざまな人や地域にも、「ここに来て良かった」と思ってもらえるような病院にしたい、との理念を掲げる。長らく急性期病院として歩んできた歴史を持つが、地域の高齢化や医療の機能分化の流れを受けて1990年代に大転換を果たし、回復期リハビリテーション病院として生まれ変わった。以来、患者一人ひとりに合わせたリハビリテーションと生活習慣病対策を主軸とし地域医療に貢献し続けている。地域にある医療機関が協力し患者に必要な医療を提供する地域完結型医療の実現のため、急性期病院やかかりつけの医師、介護・福祉分野との連携を重視しており、リハビリに取り組む同院の存在はそのつながりの中で大きな要となっている。「患者さんの持ち得る最高の健康状態をめざし、夢や希望を持ってここを退院してほしい」と加藤真二理事長。終始笑顔で、患者への思いや展望について力強く語ってくれた。(取材日2023年1月20日)
病院の歴史について教えてください。
当院は1954年、私の祖父、加藤三九朗がこの地に診療所を開設したのが始まりです。祖父は外科の医師で厚生連の病院立ち上げに関わり、秋田や桐生などの厚生連病院の開設後、豊田に戻り加茂病院(現・豊田厚生病院)の初代院長を務めました。その後、当院を開設。院名は、祖父が往診に行った先で子どもたちから「三九朗さん」と呼ばれていたことが由来です。2代目院長の父も専門は外科で当時は急性期医療を行っていましたが、次第に手術は大規模病院でという風潮となり、地域の高齢化もあって当院は高齢の患者さんがメインに。私が当院に戻った1994年に、3代目院長の義兄が整形外科ということもあり会議でリハビリの重要性が提案され、リハビリに注力することで活路を見出そうと方向転換が図られることになりました。藤田医科大学から講師を招き職員全員でリハビリを学び、2003年、回復期リハビリテーション病棟56床の運用がスタートしたのです。
今は地域のリハビリを担う病院となられていますね。
当初はリハビリに対する認知度が高くなく、毎週、当院のリハビリテーション科の医師が豊田厚生病院、トヨタ記念病院などに出向き、患者さんの状況等を確認しつつリハビリの必要性・重要性を訴え続けました。今は140床すべてが回復期リハビリテーション病棟で、約9割がその2つの病院からの紹介入院で、脳血管障害を発症された方や骨折・人工関節などの手術を終えられた方等です。当院にはリハビリ専門の医師をはじめ理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、公認心理師、社会福祉士ら計100人以上の専門スタッフが在籍しています。現在、豊田市では、急性期病院が高度・救急医療を担い、当院がその後の回復期のリハビリテーションを担い、退院後は、地域のかかりつけ医、介護施設やデイサービス施設が患者さんを支え、訪問診療、訪問リハビリテーションにつなげる、といった地域完結型医療・地域包括ケアシステムが定着しつつあると思います。
こちらのリハビリの特徴はどんなことですか?
単なる体の機能回復や社会復帰をめざすだけでなく、患者さんのやりたいことを聞き取り、退院後それを実現するにはどうしたらよいかを考え支えていくことを大切にしています。その方がどんな医療やケアを受け、どのように今後の人生を送りたいかといった意思や価値観を尊重するアドバンス・ケア・プランニング(ACP:人生会議)の考え方を取り入れ、ご家族、医療スタッフ、介護スタッフが連携し支えていくことを理想としています。障害を負って落ち込むのではなく、リハビリの中で人生に夢や希望を持って退院していただきたい。そのためにわれわれは「身体的、社会的、精神的にその方の持ち得る最高のレベルの健康状態・幸福に思える状態」をめざします。それには患者さんとのコミュニケーションやスタッフの高いモチベーションも重要であり、現在3ヵ年計画で、患者さんの自己実現を支援でき、スタッフにとっても働きやすい仕組みづくりにまい進しています。
診療科についても教えてください。
そもそもリハビリが必要となる前の段階、つまり予防が重要だということで、内科では循環器・糖尿病・リウマチ等の分野で専門の医師を配置し、生活習慣病対策として健診や食事・運動療法に、整形外科領域では転倒防止や痛み防止などにも力を入れています。当院の4階には、この地域ではここにしかないメディカルフィットネス施設があり、循環器内科が専門の医師指導のもと、患者さんに合わせた運動プログラムを実施しています。また私は消化器内科が専門ですが、患者さんの中には精神的なストレスが原因で体に不調が出ている方が少なからずおられます。そのため心療内科学を学び、その経験を生かして、診療に取り入れるなど、体だけでなく心にも配慮した全人的な医療を行うように努めています。
これからの展望などお考えをお聞かせください。
当院の理念は「ここに来て良かった」と思っていただけること。「満足」にとどまらず、予想以上の「いいこと」が得られたという「感動」を届けられる病院になりたいです。たとえ体が思うように動かなくとも「身体的、社会的、精神的にその方の持ち得る最高の健康状態」で希望を持って生活が送れるよう寄り添いたいです。それは当院や当法人の施設だけでなく、急性期病院、かかりつけ医の先生、介護・福祉の施設、行政とつながってこそ実現できると思います。今は豊田加茂医師会会長として、地域の機関が協力し合って各病態に対応する地域完結型医療や、医療・介護・福祉を一体的に提供する地域包括ケアシステム構築に注力。2023年4月には当法人の拠点が増えるので、さらに地域全体のリハビリを充実させていきます。患者さんの夢を実現させるシステム「夢現列車」を、地域が協力して敷いた「幸福な時間」というレールに乗せて未来に向かって走らせたいです。
加藤 真二 理事長
1986年藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業。公立陶生病院にて研修後、藤田保健衛生大学に戻り複数の病院に勤務。1994年三九朗病院に着任、前理事長とともに、リハビリを主とする病院への転換に力を尽くす。専門は消化器内科で心の状態も含め全人的な治療を心がける。2022年6月より豊田加茂医師会会長として地域完結型医療の実現にも力を注ぐ。