医療法人愛知会 家田病院
(愛知県 豊田市)
家田 純郎 理事長
最終更新日:2025/09/12


46年の実績を持つお尻と胃腸の専門病院
1979年に外科の有床診療所として設立された肛門と胃腸の専門病院「家田病院」。現在は、84床を擁する肛門科診療に特化した病院として、多種多様な肛門疾患に対応している。患者は愛知全域のみならず、岐阜県、三重県、静岡県、長野県など東海地区およびその周辺からも訪れる。先代が掲げた基本方針「痛くない」「再発しない」「早く治す」を継承する家田純郎理事長を筆頭に、専門的な知識を持つ医師が多数在籍し、経験豊富なスタッフとともにチーム医療で日々の診療に取り組む。また、IBD(炎症性腸疾患)も得意としており、受診する患者の多さも注目すべき点の一つだ。予防的な観点から胃と大腸の内視鏡検査、特に大腸内視鏡検査には力を入れている。2023年に完成した新棟には、男女別の待合室や診療室の設置、展望大浴場を設けた病棟など患者の受診しやすさや入院中の快適さを追求した工夫が随所に見られる。「お尻の専門病院」として、高い専門性と患者の気持ちに寄り添った診療を提供する同院の歴史や患者目線の診療の工夫などについて家田理事長に詳しく聞いた。(取材日2025年7月14日)
病院の成り立ち、特徴について教えてください。

当院の歴史は、1979年に私の父である先代の家田浩男が、有床診療所「家田外科」を設立したことに始まります。先代の開業以前は、肛門疾患の治療や術後の管理などがまだ確立されておらず、入院期間が長期にわたったり、痛みが強くて苦しかったり、痔ろうに関しては再発の恐れから拡大手術を行ってお尻の筋力が落ちる、便失禁が起こるなど多くの問題がありました。先代は、そのことに強く興味を持ち、研究を重ねて当院独自の診療方針を確立し「お尻の専門病院」として現在に至ります。また、肛門疾患の手術では、出血や腸の状態の確認、大腸がんの検査なども必要になるため、当時はまだ珍しい病気だった炎症性腸疾患やクローン病なども専門的に診てきました。お尻を専門とする医師は、もともと消化器外科や一般外科でがんの治療に携わりながら専門性を高めていくため数が少ないのですが、当院には数多くの専門の医師が在籍しています。
こちらの肛門疾患の手術について教えてください。

入院設備のない医療施設では、内痔核に対する治療は硬化療法による日帰り手術が一般的です。当院でも日帰り手術に対応していますが、硬化療法の場合「根治」をめざすことは難しいです。当院では「根治」を最も重視しているため、痔核根治術と2週間の入院を基本としています。これは先ほどお話しした先代が確立した診療方針にあたるのですが、手術をゴールとせず、術後いかに快適に入院生活を送るか、いかに退院後の生活を快適にするか、といったお尻のトータルライフをサポートするためです。硬化療法はいずれ根治術を行う患者さんに対する中継ぎ的な意味合いで行う場合が多いです。痔ろうに対しては、初発、再発、単純、複雑、どのような状態に対しても治療が可能なため、クリニックでは対応しきれない、深くて広い範囲に及ぶ痔ろうや再発した痔などの難症例を紹介されることも多々あり、最終的な根治をめざしてチーム医療で取り組んでいます。
食事をはじめ快適な入院生活のための工夫があるそうですね。

入院中の食事には、新棟完成以前から力を入れていました。オリジナルレシピは1000種類以上あり、栄養や成分だけでなく味にもこだわっています。また特別メニューのイベントを行うなど、入院中でも楽しく過ごしていただけるよう心を砕いています。肛門疾患の手術で怖いのは、術後の出血であることから、当院では入院期間を2週間としています。2週間の入院は長いと感じる方も多いと思いますが、手術後10日前後に出血しやすい時期があるため、この期間としているのです。入院期間を快適に過ごしていただくため、2年前に完成した新棟は和モダンな旅館をイメージし、すべての個室にトイレとWi-Fiを完備しました。またその他にも特別感のあるホテル並みのスイートルームや在宅ワークがしやすいビジネスルームも用意しています。景色が一望できる展望大浴場も人気です。病気を治しながら快適な「大人の夏休み」を過ごしていただくイメージですね。
IBD(炎症性胃腸炎)の治療も得意な領域と伺っています。

肛門疾患の診療では、お尻からの出血、腸に問題はないかなどを診ることから胃腸を専門的に診るようになり、予防医療というかたちで胃・大腸内視鏡検査にも力を入れています。特に、大腸内視鏡検査の数は2024年1月から12月の1年間で7495件に上ります。当院では、今では一般的になった「鎮静剤を使った検査」をかなり早い時期から実施しており、ありがたいことに多くの患者さんからご支持をいただいています。最近のIBD(炎症性腸疾患)の治療には生物学的製剤を用いるなど専門性が高くなってきているため、当院にはこの分野に特化した医師が常勤で2人おり、多くの患者さんを診療しています。田舎の一医療機関ではありますが、先進の医療技術を導入し、患者さんができる限り普通の生活を送れるようサポートしています。
今後の展望についてお聞かせください。

肛門疾患の治療の問題点として、手術の方法に統一性がないことが挙げられますが、当院では先代をはじめ経験豊富な医師が長年の歴史の中で手術方法を確立してきました。これからも「お尻のことなら家田病院が一番良い」と思っていただけるよう努めていきたいと思います。この分野では知られた病院であると自負していますが、地域から一歩出るとまだ当院のこと知らずにいらっしゃる方も多いと思います。来ていただければ、必ず良い医療を提供できる自信はありますから、SNSや動画配信なども活用して当院の情報を発信していきたいですね。お尻に関わる症状は、相談しにくいことの一つだと思います。デリケートな領域ではありますが「こんなことで受診していいのかしら」と悩まず、気軽に足を運んでいただきお尻を診させてください。そのためにも、受診しやすさや快適な入院生活を過ごしていただく工夫に努め、身近で親しまれる病院でありたいと思います。

家田 純郎 理事長
2004年藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)医学部卒業。2012年より家田病院に勤務し、2018年に同院院長に就任。2023年より理事長。肛門領域を専門とする父の姿を見ながら育ち、肛門科の医師になりたいと医療の道を志す。インフォームドコンセントを重視し、患者のライフスタイルに合わせた適切な医療の提供に努め、日々数多くの診療を行う。日本外科学会外科専門医、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医。





