医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院
(愛知県 刈谷市)
吉田 憲生 病院長
最終更新日:2025/11/21


総合病院として救急、がん診療に力
刈谷市の南部、住吉町の田畑や住宅が広がるのどかな地域に「刈谷豊田総合病院」は立つ。南側にはコスモス畑が広がり、秋には病棟からの眺めに癒やされそうだ。刈谷市、高浜市ならびに民間企業8社により運営され、市民病院のない両市、および周辺市町住民にとって、公立ではないけれども市民が頼りやすい総合病院という位置づけとなっている。ICU、CCU、救命救急センター、周産期母子医療センターを設置。さらに化学療法部門、内視鏡部門、脳卒中部門、循環器部門など専門部門を備え、先進的な急性期治療やがん治療を提供している。同じ医療法人豊田会には刈谷豊田東病院、高浜豊田病院があり、緊密な連携により急性期治療後の患者のフォロー体制も整う。吉田憲生病院長は「病気やけが、災害など何かあったときに行こうと思ってもらえる病院でありたいですね」と穏やかに話す。患者を支え続けることはもちろん、2000人近い職員に対しても誇りと喜びを持って働き、それを患者に還元できるようにと心を向けている。(取材日2025年9月16日)
歴史ある病院で、地域の中核病院という役割を担われています。

当院は昭和初期、1935年に現在の刈谷市東陽町に外科医院として開業したことが始まりです。先代たちは地域医療と地域社会への貢献の思いを持って豊田病院をつくり、戦後、1962年に医療法人豊田会が設立されました。その後、刈谷豊田病院、刈谷総合病院と名称変更し、当院は「刈総さん」と呼ばれるなど親しみを持っていただける存在になりました。平成以降、新病棟の建設、救命救急センターの拡充、先進の医療機器の導入と続き、さらにISO認証取得により医療面だけでなく品質管理や環境面においても力を注いできました。2006年、刈谷豊田総合病院に名称変更。刈谷市、高浜市ならびに民間企業8社を運営母体とし、刈谷市、高浜市、また知立市、東浦町など近隣の地域も含め、皆さんの市民病院のような役割を担っています。現在は救急医療とがん診療が2つの柱といえるでしょうか。
救急医療体制について教えてください。

基本的に、救急搬送された患者さんはすべて受け入れる姿勢でいます。患者さんは、脳血管障害、急性心筋梗塞などの循環器疾患、肺炎、さらに交通事故の外傷などで、2024年度(2024年4月~2025年3月)の救急車受け入れ台数は9453でした。大府市や安城市、豊田市の刈谷市に近い地域から搬送されることもあります。救急は時間との勝負という面もあり、医師、看護師、診療放射線技師などのチームにより内科、外科両面から迅速に診断、適した治療に進みます。手術室はしっかりと整備し、一般手術室4室と無菌手術室を含む高機能手術室8室があります。ドクターカーも運用していますので、スマートフォンによる映像伝送システムで現場での診断から受け入れまでの流れがスムーズになりました。産婦人科、小児科も24時間対応しています。当院には研修医が1学年16~17人在籍していて、そのパワーも大きいですね。
がん診療についてもお聞かせください。

化学療法部門においては31床を用意し対応しています。薬を混合調製するロボットも導入し、設備面の拡充にも力を入れています。放射線治療装置は精度にこだわった放射線治療照射ができる機器が2台あり、それぞれに適したがんで用いています。手術では、泌尿器科をはじめ消化器、呼吸器、婦人科疾患などの分野で適応する患者さんには、積極的に手術支援ロボットを活用しています。先代院長の専門が外科で早期導入に努めたこともあって、現在、当院は3台のロボットを所有しています。ロボット手術に精通した医師も多数在籍し、若手医師の育成にも力を入れています。外科を志す若い医師にとってロボット支援手術は興味のある手技ではないでしょうか。さらに、緩和ケアも重視し、体の治療だけでなく、がん告知の時点から看護師らがお話を聞いたり情報提供したりと、患者さんの心にも向き合っています。
医師だけでなくすべての職種の皆さんの存在も大きいのですね。

当院には2000人に近い数の職員がいるのですが、医師、看護職員、医療技術者、事務職員など、全員が各分野におけるスペシャリストです。それぞれの能力を、互いに協力し組み合わせて、病院の診療に生かしてもらいたいですね。また、職員にはワークライフバランスをしっかりと保ち、安心できる、無理のない働き方をしてもらいたいと思っています。私がよく話すのは「患者さんの幸せ」「地域の幸せ」「職員と家族の幸せ」の3つをめざそうということ。職員が誇りや喜びを持って幸せに働ける環境であれば、それがひいては、患者さん、地域の皆さんの幸せにつながると確信しています。私も家族と過ごす時間がささやかな幸せですので、職員にもそうあってほしいですね。より良い職場環境実現のために、引き続き、課題に取り組んでいきます。
改めて地域医療や今後についてお聞かせください。

刈谷市、高浜市、そして周辺市町の医療機関とオンラインネットワークでつながり、情報をやりとりできるようになっています。そのため患者さんの紹介や逆紹介、検査予約などがスムーズです。代々、当院の病院長は刈谷医師会の副会長を務めることになっていて、現在、私がその任についているのですが、理事会で地域の医師会の理事の先生方とは2週間に1回顔を合わせています。オンラインだけでなく顔の見える関係ができているのは、お互いに心強いですね。最近では在宅医療という選択肢もでき、対応されるクリニックも増えてきました。当院は急性期病院ですが、治療して終わりではなく、関連病院や地域とのつながりを生かし、点ではなく面で支える医療を実践していきたいと思います。最初にお話ししましたように、先代から引き継がれてきた地域医療への貢献という信念を、職員一丸となって貫いていきたいですね。

吉田 憲生 病院長
1990年名古屋大学医学部卒業。愛知県厚生連加茂病院(現・豊田厚生病院)、豊橋市民病院勤務を経て名古屋大学医学部附属病院へ。呼吸器内科の研究室にて臨床と研究に従事。1999年刈谷豊田総合病院に赴任。2024年より現職。今も週1回外来を担当。赴任以来25年以上付き合いのある患者も。日本呼吸器学会呼吸器専門医。医学博士。和歌山県出身だが長年の東海地方在住により、名古屋拠点の球団のファンとなったそうだ。





