公立陶生病院
(愛知県 瀬戸市)
福岡 宗良 病院長
最終更新日:2024/07/23
多職種がチームとなり先進の医療を提供
新瀬戸駅と瀬戸市役所前駅の中間に位置する「公立陶生病院」。瀬戸市、尾張旭市、長久手市が構成する一部事務組合を設立母体とする総合病院だ。手術支援ロボットや3テスラMRI、320列CT、放射線治療装置など高機能の医療機器をそろえ、先進の医療を提供。「断らない救急」をモットーに救急搬送を積極的に受け入れ、心臓カテーテル治療など迅速さが求められる治療にも24時間体制で対応し、尾張東部医療圏をリードする。一方で、地域に根差す病院として、出張出前講座を催すほか、一般住民向けのイベントを開催したり、院内に地域を代表する産業である陶磁器のギャラリースペースを設けたりと、さまざまな切り口から地域との交流を図る。2024年4月に就任した福岡宗良院長は「約1400人の職員が働く大規模病院でありながら、診療科や部門の垣根が非常に低く、多職種が力を合わせるチーム医療の文化が根づいているのが当院の大きな強み」と語る。「それぞれが自身の専門性を発揮し、チームで地域医療に貢献してくれています」と笑顔を見せる福岡院長に、同院の特徴や使命、診療にかける思いについて聞いた。
(取材日2024年5月31日)
診療の理念と、理念に込める思いをお聞かせください。
当院は1936年に設立した瀬戸市、尾張旭市、長久手市が構成する一部事務組合を設立母体とする公立の総合病院です。そんな当院が掲げる基本理念は、「地域の皆さんに親しまれ、信頼され、期待される病院をめざします」。地域に必要とされる医療の在り方は、時代や社会のありようによって当然ながら変化します。それらに柔軟に対応し応え続ける当院の姿勢を、基本理念で示しています。コロナ禍に際しては、ドライブスルー方式で発熱患者の診療を行うなど、運び込まれる、あるいは駆け込んでくる多くの発熱患者さんを適切かつ安全に受け入れるための体制を、各診療科で協力し構築しました。また、医療設備を充実し、先進の医療を安定的に提供できることも当院の大事な役割です。瀬戸市や尾張旭市、長久手市のほか、守山区や春日井市、日進市や東郷町など、さまざまな地域に暮らす患者さんの期待に応えられる病院であり続けられるよう励んでいます。
貴院の強み、力を入れる取り組みについて教えてください。
地域医療を担う中核病院として、さまざまな分野においてリードできるよう設備・体制を整えています。まず特徴として紹介したいのが、救急医療です。当院では「断らない救急」をモットーに、救命救急部門を筆頭に各診療科が協力し、多くの救急搬送に対応。動脈硬化による心筋梗塞、狭心症に迅速に対応できるよう、心臓カテーテル治療は24時間365日いつでも行える体制を整えています。ロボット支援下手術も、力を注ぐ取り組みの一つです。泌尿器科や消化器外科、婦人科に加え、今年から新たに呼吸器外科でもロボット支援下手術を実施しています。また、放射線科のドクターを1人増員したのに伴い、この4月からIMRT(強度変調放射線治療)を開始しました。ロボット支援下手術もIMRTも、患者さんの心身の負担を軽くするのに有用なものといえます。今後も件数を増やし、活用する診療科も広げていきたいと考えています。
チーム医療の充実にも力を注がれているとお聞きしました。
当院では医師や看護師、薬剤師や理学療法士などのセラピスト、社会福祉士など多職種がチームとなり、患者さんの回復や日常生活の復帰などをサポートしています。扱う領域は栄養サポートや緩和ケア、排尿ケアなど非常に多岐にわたるのも特徴です。患者支援部門では、入退院や治療に関して不安や疑問を抱える患者さんやそのご家族に寄り添い、必要な支援を提供しています。またチーム医療は、病院内に限ったものではありません。例えば高齢になると増える大腿骨近位部骨折は、異なる職種が地域を含めて連携し、大腿骨近位部骨折を予防し、二次骨折を防ぐFLS(骨折リエゾンサービス)の取り組みが全国的に進んでいます。当院でも連携するクリニックなどと力を合わせ、手術を終えた患者さんが退院後も継続して治療・リハビリに取り組める体制を築いています。他にも、在宅療養患者さんに対する訪問看護なども、かかりつけ医と連携し展開しています。
包括的医療の実現に不可欠な地域連携についてお聞かせください。
近隣クリニック・施設からの紹介、あるいは逆紹介も多く、病診連携システム運営協議会には地域の医療機関の方にも参加いただき、意見交換を重ねて問題点の改善に努めています。また、地域の回復期・療養病院、愛知医科大学付属病院や旭ろうさい病院などとも密接に連携し、万一の場面でお力添えいただける関係性を築けていることに心強さを感じます。行政との連携も欠かせません。実は市役所職員さんや市議会議員の方の中には、当院で産まれた方や、手術を受けたという方など、強い思い入れを持って関わってくださる方も多いんです。院長に就任し、改めて当院にご縁のある人の多さを実感し、皆さんの思いに応えなければと思いを強くしました。新しいご縁をつくっていけたらと思い、コロナ禍で休止していた「陶生まつり」を再開しました。手術着の試着や電気メスの体験などの催しを通して地域との関係性を深め、当院を身近に感じていただけたらうれしいです。
今後の展望をお聞かせください。
基幹病院として、この地域に暮らす方々の健康を守るのが、私たちの使命です。それをかなえるためには、当然ながら医師や看護師を含め、診療に関わるすべての職員のスキル向上が求められます。先進の医療技術を積極的に取り入れ、患者さんの心身により優しい方法による治療を提供できるよう今後も努めてまいります。医療に従事する職員にとって風通しの良い職場環境を築くことも、注力したい取り組みの一つです。チーム医療を実践するなど、現状でも風通しは良いほうと自負していますが、より高みをめざすことでこれまで以上に多くのご期待に応えられる組織となると考えております。他にも、出張出前講座などを通して地域の皆さんと関係性を築くことにも積極的に取り組んでいく考えです。病気やけがに見舞われるという、ご本人やご家族にとって大きな不安にある中で、当院が安心感を提供できるような存在となれるよう、引き続き励んでまいります。
福岡 宗良 病院長
1986年名古屋市立大学医学部卒業後、初期研修を経て名古屋市立城西病院(現・偕行会城西病院)に勤務。名古屋市内の複数の病院で研鑽を積み、同大学医学部医学科に帰局。25年以上にわたり主に脊椎脊髄疾患に対する研究や後進育成に従事する。2018年公立陶生病院整形外科部長に就任し、2024年4月から現職。医学博士。日本整形外科学会整形外科専門医。