社会医療法人明陽会 成田記念病院
(愛知県 豊橋市)
成田 真 院長
最終更新日:2020/12/16
慈愛に満ちた姿勢で温かな医療を提供する
開設から70年以上を数える「成田記念病院」は、地元住民から「成田さん」の愛称で慕われる、地域密着型の病院だ。近年は日本人の死亡原因の上位を占めるがんの治療への特化に力を尽くしている。放射線による検査・治療の充実を図ったり、外科手術や抗がん剤治療に温熱療法を併用したりと、侵襲性の低いがん治療の提供にこだわっているのも、特筆すべき点といえよう。地域の急性期医療を担う立場として、同院は地域との連携も密にして医療ニーズを拾い上げながら、豊橋をはじめ東三河地方の医療を支えてきた。戦後の動乱期に病院開設に踏み切った初代院長の頃より、同院で継承されてきたのは「人の優しさと温かさ」を根源とした医療の提供だ。「患者さんの困り事をいち早く解決できるよう、当院では急性期医療を中心に体制を整えてきました。将来的には健診などの予防医療の領域も充足させ、包括的な医療体制を整えていきたいです」と、目を輝かせる成田真院長。そんな院長に、医療ニーズに応え続けてきた同院の歴史、今後思い描く医療の在り方について詳しく語ってもらった。(取材日2020年10月29日)
貴院の成り立ち、歩みをお聞かせください。
当院は、私の祖父が1947年に開設した小さな病院を始まりとしています。祖父は外科医師で、物資が不足していた戦時中も、苦心しながら医療を提供していたそうです。当院を開いてからは、2人の息子と3人で力を合わせ、地域の皆さんを診てきたと聞いています。息子の一人が、内科医師だった私の父です。父は、当時受けられる場所が限定されていた透析治療を、一人でも多くの人に提供したいとの思いから、当院での提供に踏み切りました。その結果、患者数が増加。これを契機に、透析治療の充実を図るだけでなく、他の診療科や病床を拡大し、現在のような総合病院の規模へと拡大することとなりました。そして私が院長職を継承してからは、特にがん治療の強化に努めています。病棟移転新築に伴い、空き地となっていた旧病棟跡地に、成田記念陽子線センターを開設したのも、その一環です。
貴院が提供するがん治療にはどのような特徴がありますか?
当院では手術や化学療法によるがん治療も提供していますが、近年特に充実に努めているのは、放射線によるがん治療です。がんは若年層から老年層まで、誰もが罹患する可能性のある病気といえます。早期の社会復帰や、生活の質の維持をめざすためには、できる限り負担の少ない治療方法を選択する必要があるといえるでしょう。その点において、放射線治療はとても有用性があるといえるのです。放射線治療は健康な組織への影響が小さく、がん細胞に直接アプローチできる方法です。手術が難しい年配の方にも提供しやすく、がんの進行抑制につながることが期待できるとされています。超高齢社会にとって、放射線治療は欠かせないものと考えています。また当院では良い結果へと結びつけるため、手術や化学療法、放射線治療に温熱療法を併用しているのも特徴です。あらゆるメリットを踏まえて、より効率的な治療の提供をめざしています。
その他、貴院の特徴ともいえる検査・治療は何でしょうか?
各診療科どれも特徴があるのですが、特筆すべきは眼科と整形外科ですね。眼科では、年間多くの硝子体疾患に対する手術を行っています。この地域には硝子体疾患を患う方が多く、手術の精度向上はもちろん、検査体制も強化してきました。整形外科についても、多くの手術に応じています。やはり高齢化を受け、人工関節置換術や脊椎の手術などを必要とする人は増えています。そういったニーズに十分応えられる体制が整っているといえるでしょう。また先述した透析治療も、今もなお当院を代表するものです。糖尿病との関連が非常に強いため、当院では「腎・糖尿科」を置き、糖尿病の専門家と腎臓の専門家がともに糖尿病患者を診療するスタイルを確立しました。腹膜透析を積極的に提供しているのも特徴です。血液透析に比べて心臓への負担が少なく、腎臓の機能を温存しやすいといったメリットがあり、患者さんの生活の質を守る上で大切な選択肢といえます。
どんなときも患者さんの生活を第一に考える姿勢がうかがえます。
病院の規模が拡大しても、めざす医療の在り方は初代院長の頃より変わりません。それは、「人の優しさと温かさ」を根源とした医療の提供です。これが医療の基本であり、当院のすべての職員の使命なのです。この姿勢が浸透しているからか、職員一人ひとりがとても優しいんですよ。たとえ患者さんがトラブルを起こしたとしても、常に優しく、温かく接しています。自慢の職員ですね。一方で、私たちだけでこの使命を全うできるわけではありません。大事なのは、地域の医療機関との連携です。例年なら毎年11月に地域医療連携フォーラムを開き、地域の先生方に当院の医療体制をご紹介したり、新しい治療方法についてともに学んだりして交流を図っています。また緩和ケアを含めた終末期医療や、在宅医療といった、当院内ではまかないきれていない領域については、対応可能な医療機関へご紹介し、安心して医療を受け続けられるサポートに努めています。
今後の展望をお聞かせください。
ありがたいことに、地域の皆さんには「成田さん」と呼んでいただけるなど、親しみの持てる存在として、これまで歩んでこられたのかと思います。一方で、全国的な人口減少は医療者の立場からも、無視できない事態だと感じています。今後は、豊橋をはじめとした東三河地方だけでなく、日本各地、さらには世界にも目を向けていく必要があると感じています。豊橋駅は新幹線の乗り入れもあるなど、地の利を生かしながらより特徴的な医療を打ち出すことで、多くの地域から当院に医療を求めて足を運んでいただける病院として成長していきたいと考えています。具体的には、陽子線治療をはじめとした先進的ながん治療のさらなる強化、そして現在も需要の高い健診部門の拡充を考えています。予防医療の観点からも、いかに早く病気の芽を摘み取れるかが重要となります。その一助となり、そして万が一病気が見つかったとしても適切に治療できる体制を構築していきます。
成田 真 院長
1982年昭和大学医学部卒業。名古屋市立大学医学部第二内科での初期研修を経て、名古屋第二赤十字病院、菰野厚生病院に勤務。消化器内科を専門に研鑽を積む。成田記念病院では1994年より消化器内科部長を務め、2004年に院長に就任。2010年より社会医療法人明陽会理事長を兼務する。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。