医療法人善恵会 長屋病院
(愛知県 豊橋市)
安井 章裕 院長
最終更新日:2025/10/06


内科を充実させて時代に合わせた医療貢献を
愛らしいフクロウのキャラクターを掲げた「長屋病院」は、市役所や警察署、市公会堂などが並ぶ豊橋市の中心部にあり、明治時代から続く歴史ある病院。長年、外科が得意な病院として知られてきたが、最近では時代に合わせて、内科疾患の診療、特に胃がんや大腸がん早期発見のための内視鏡検査や、増加する認知症患者のケアや診療に力を入れる。2025年より地域包括ケア病棟の運用が始まり、急性期治療後から在宅・社会復帰をめざす患者に対してリハビリテーション、看護、社会資源の調整など医療、福祉の両面からのサポートを積極的に行っている。安井章裕院長は消化器をはじめ外科一般を専門としながらも認知症についての学びを深めてきており、現在はその知識を生かして職員の教育にもあたる。院長自身は先祖代々豊橋生まれの豊橋育ち。「病院の長い歴史と地域の人々とのつながり、この両方を大事に地元に貢献していきたいですね」と朗らかに話してくれた。(取材日2025年9月4日)
病院の歴史や概要について教えてください。

当院は明治時代、1900年に初代院長の長屋善作が開院しました。その後、昭和時代に豊橋の中心部に移転し、1986年医療法人善恵会長屋病院となりました。平成になり、法人が開設したグループホームやデイケアセンター、地域包括支援センターと連携し、医療と介護の両面から地域医療に貢献してきたと自負しています。令和に入ってからは、リハビリテーション部門や地域連携室もできました。2024年には84床となり、新しく内視鏡検査室も始動。さらに2025年3月からは、豊橋市では少なかった地域包括ケア病棟の運用を開始し、急性期治療を終えた方々の在宅復帰や介護施設入所などに向けたリハビリテーション、看護などをサポート。このほか、豊橋市民病院や豊橋ハートセンターなど急性期病院とも連携を深め、安心して医療が受けられる環境を整備しています。
地域包括ケア病棟のほか、障害者施設等一般病棟もありますね。

障害者施設等一般病棟のうち約7割が、重度の障害がある患者さんや神経難病の患者さんになっており、多いのは神経難病の患者さんです。障害のある方々の受け入れは、戦後、傷痍軍人を診療していた当院の歴史も関係していると思います。さらに当院の長屋孝美理事長も長屋昌宏顧問も小児外科が専門で、愛知県心身障害者コロニー(現・愛知県医療療育総合センター)での診療経験があり、特に顧問は同センターの名誉総長を務めています。障害のある方々の受け皿になろうという姿勢は受け継がれているといえますね。神経難病とは、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、急性期病院での治療後の低酸素症など。進行すると自発呼吸が難しくなる場合があるため、当院は人工呼吸器を10台備えています。ちなみに当院の顧問は小児外科時代、日本でも早くから体外式膜型人工肺(ECMO)を取り扱っておりました。
リハビリテーションではどのような取り組みを行っていますか?

当院の副院長で、以前豊橋市民病院の整形外科部長も務めた三重野琢磨医師がリハビリテーションを専門分野としています。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士や管理栄養士、介護士などの医療スタッフと、地域連携室のスタッフや医療事務員によるチームで連携して行っている点が、当院のリハビリテーションの特徴です。また当院では、体のリハビリテーションのほかに、嚥下のリハビリテーションにも力を入れています。私は大学病院時代、食道がんの手術を数多く行ってきたのですが、高齢になると嚥下の機能が衰え、誤嚥性肺炎で亡くなってしまう方が多かったんですね。そのため当時から嚥下のリハビリテーションの必要性を強く感じていたため、当院でも実践しております。現在、当院では言語聴覚士が4人在籍しており、さらにもう1人増える予定です。
先生は外科がご専門ですが、認知症にもお詳しいそうですね。

私が国立長寿医療研究センターにいた頃に介護保険制度が始まったのですが、センターの内科の先生方が保険の骨組み作成に関わっておられましたので、介護保険や認知症のことはよく耳に入ってきました。私が診ていた外科の患者さんでも認知症の方は少なくありませんでしたので、認知症や介護に関わる知識は必要だと感じ、研究会に出るなどして勉強し、ケアマネジャーの資格も取得しました。認知症は、二次症状で「BPSD」といわれる暴力や大声などの攻撃的な行動症状が出ることがあり、せん妄などの心理症状が合併することもあります。当院では認知症ケアチームをつくり、そうした方々の診療にもあたっています。
今後の展望についてお聞かせください。

消化器内科専門の長屋龍太郎医師が着任され、今後は胃と大腸の内視鏡検査を積極的に行い、内科診療にも注力していきたいと考えています。内視鏡は先進のものをそろえ、2ミリの小さながんの発見も見込める高精度なものです。胃の内視鏡検査は経鼻、経口いずれにも対応しており、胃も大腸も検査には鎮静剤の使用が可能。大腸内視鏡検査では専用個室も用意し、安心して検査が受けられる環境です。私自身のことをいえば、私は豊橋生まれの豊橋育ち。4代前の先祖も豊橋です。長屋病院に着任してやっと腰を据えて地元に医療貢献できるようになりました。患者さんの中には同級生や知り合いも多いです。この病院が長く皆さんに親しまれてきた歴史の縦糸と地域や人のつながりという横糸を、これからも丁寧に大事に織っていきたいですね。公開医療講座もしていますので気軽にお出かけいただき、地域の皆さんに親しまれ、頼りにされる病院であり続けたいと思っています。

安井 章裕 院長
1978年名古屋大学医学部卒業。岐阜県大垣市民病院勤務、米国クレイトン大学外科フェロー、豊田厚生病院外科医長、米国南カリフォルニア大学外科フェロー、静岡済生会総合病院外科医長、国立長寿医療研究センター外科系総合診療研究室長、愛知県済生会リハビリテーション病院副院長、名古屋大学医学部腫瘍外科臨床教授などを経て、長屋病院に副院長として着任。2022年4代目院長に就任。日本外科学会外科専門医。医学博士。





