財団法人積善会 愛媛十全医療学院附属病院
(愛媛県 東温市)
鶴岡 裕昭 病院長
最終更新日:2024/10/25
整形外科の治療とプライマリケアを2軸に
愛媛県東温市にある「愛媛十全医療学院附属病院」。1981年の設立以来、整形外科・内科・リハビリテーション科を標榜し、地域に根差した診療を続けてきた。入院施設を併設し、整形外科の専門的な治療、予防やリハビリテーションに注力。脊髄疾患や関節疾患の先進的な治療を行うほか、地域の医療ニーズに広く応えるプライマリケアにも積極的に取り組んでいる。「整形外科の専門的な治療とプライマリケアを両輪とし、地域に求められる医療・介護・福祉の提供に努めています」と話すのは、2021年10月に同院の新病院長に就任した鶴岡裕昭先生。今回、整形外科の医師でもある鶴岡先生に、地域医療への思いやめざす病院像、新たな取り組みなどについて話を聞いた。(取材日2022年10月21日)
まずは、病院の成り立ちと理念を教えてください。
当院は、1981年に愛媛十全医療学院附属十全診療所として設立し、翌年、愛媛十全医療学院附属病院に名称変更しました。「医療学院」からのスタートなのですが、病院を持つ専門学校は全国的にも珍しいのではないでしょうか。学院も病院も「誠の医療」をモットーに、40年近く続けてきました。また、当院の理念は「私達は他人のために尽くして感謝しよう」「私達は自分の力で伸びて行こう」「私達は私達の規則を尊重しよう」です。優しさと思いやりの心を持って患者さんに接し、地域に根差した病院として質の高い医療の提供をめざしています。そのためには、職員や学生が向上心を持って取り組み、知識や技術を高めることも欠かせません。病院は患者さんの安全を守る責任があり、学生も実習で患者さんと関わることがありますので、厳しく指導しています。これまで多くの理学療法士と作業療法士が巣立ち、全国で活躍してくれていることはとてもうれしいですね。
整形外科としての役割を大切にされているとお聞きしました。
当院はこの地域で入院施設のある病院として、整形外科をメインに医療を提供してきました。地域の高齢の方々が安心して暮らしていけるように、「いかに健康寿命を長くできるか」を第一に考えています。というのも、医療が発達し、平均寿命は延びましたが、寿命と健康寿命の間には10年くらいの差があります。人生の仕上げの時期に立ったり、歩いたりが思うようにできず、日常生活を制限されている方は少なくありません。例えば、ちょっとした日常の動作で骨折をしたり、膝痛、腰痛などに悩まされたりするわけです。それらがきっかけとなり、歩行が困難になり、寝たきりになるというケースも珍しくありません。骨や関節、筋肉の老化が健康寿命を短くしてしまうため、治療だけでなく、リハビリテーションや骨粗しょう症の予防、移動機能の低下予防などにも取り組んでいます。地域の方々が健康であり続けることをお手伝いしていきたいです。
地域に住む人たちの健康寿命延伸をめざしているのですね。
当院では健康教室の一環として、院外の介護職の方を対象に骨粗しょう症講座などを行ってきました。多くの人たちが知識や情報を得ることで、地域全体の健康寿命の延伸につながるかなと。今後も幅広い立場の人が学べる機会を設ける予定です。健康で尊厳のある生活を送れる高齢者を増やすには、移動機能の低下予防やそれぞれの力に応じて体を動かすことが大事になります。当院では訪問リハビリや通所でのケアを行い、専門スタッフが患者さんをサポートしています。また、この地域に限らず、高齢化が進み、子どもさんが県外に出てしまった独居の高齢者は増えてきました。当院では地域連携室を設け、退院後の生活をサポートしています。地域医療機関との連絡調整をはじめ、転院や施設入所に関する相談を受けたり、介護用品の購入やレンタルの情報提供をしたり、経済的な問題への相談に応じたり……。行政とともに、地域包括ケアに注力していきたいですね。
プライマリケアにも熱心に取り組んでいると伺いました。
専門性の高い整形外科の治療だけにこだわらず、打撲や捻挫、切り傷など「なんでも診ますよ」というスタンスで地域の医療ニーズに広く応えています。東温市の川内地区にある有床の医療機関として、プライマリケアも求められているのが特徴です。私の関心領域でもあるので、プライマリケアに熱心な内科医とともに力を入れていますよ。ほかにも、中堅どころの優秀な医師がそろっていますので、専門性の高い治療は彼らに頑張ってもらい、私は「広く応える」を担当しています。若手医師の育成も精力的に行っていきたいですね。当院は専門職の集まりですから、一人ひとりが目標と向上心を持って仕事に取り組み、成長を生きがいにつなげてほしい。計画を立て実施、チェックをして、次につなげていってほしいのです。私も含め、それぞれが自分の専門分野で力を発揮し、全体で協力し合い、患者さんを支えていきたいと考えています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
整形外科の専門的な治療とプライマリケアを両輪とし、在宅や施設で療養されている患者さんの軽・中等度の急性疾患に対する医療(サブアキュート)にも重点を置いた、地域の方から信頼され選んでいただける身近な病院であり続けたいですね。温かみや優しさを感じてもらえる病院であることと、「広く、浅く」にならないように、「広く、深く」を大事にしていきたいです。また、ほかの医療機関、福祉施設、行政との連携を深めながら、地域に必要とされている医療を考え、できる方法を見つけて取り組んでいきたいです。今後はICT(情報通信技術)を活用した医療が増えてくると予想されますので、遠隔診療や処方、健診情報などの電子共有体制も整えていきたいです。私自身はこれまでの経験で得た知識や技術を生かし、地域医療や病院運営のお役に立てることにやりがいを感じています。円滑に地域医療のニーズに応えていけるよう精一杯努めていきたいと思います。
鶴岡 裕昭 病院長
1982年愛媛大学医学部卒業。専門領域は整形外科、脊椎外科。同大学医学部附属病院や市立宇和島病院に勤務。市立宇和島病院では診療に加え、若手医師の指導も精力的に行い、副病院長も務めた。2021年10月に愛媛十全医療学院附属病院の新病院長に就任。日本整形外科学会整形外科専門医。