医療法人 住友別子病院
(愛媛県 新居浜市)
鈴木 誠祐 理事長
最終更新日:2024/11/27
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「断らない医療」を推進し、地域を支える
1883年、別子山村において住友家事業の従事者とその家族の診療を目的として設立された「住友別子病院」。昭和の時代に現在地へ移転、一般社会保険診療を開始した。2009年に医療法人化、2016年には地上7階建ての新病院棟の建設が完了。2018年にグランドオープンし、設備面が拡充され、救急要請の受け入れ体制も強化された。同院を2013年から統括する鈴木誠祐理事長は、「専門性を生かしたがん診療、救急医療から回復期医療まで、総合的に対応できるのが私たちの強み。患者さんが抱える背景を考慮すること、多職種が互いに協力し合う風土を大切にすることで、満足度の高い医療を提供したい」と話す。地域と手を携え、「断らない医療」をめざす同院の成り立ち、現在と今後について、鈴木理事長に話を聞いた。(取材日2024年11月6日)
明治時代に開設された歴史ある病院なのですね。
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住友家が経営する別子銅山の従業員を診療する施設として開設された病院を起源としています。1966年に現在地へ移転、2009年には医療法人へと移行しました。旧病棟の耐震対策が必要であったこと、地域の中核病院として急性期医療の強化を図る必要があったことから、2016年に新病棟の建設に至りました。救急領域においては、新居浜市内のみならず、西条市や四国中央市など近隣市町からの受け入れ要請にも対応しています。内科系と外科系、両方の医師が救急対応できる体制を取っており、搬送されてきた方の状態によっては、複数の科の医師による診断を行っています。例えば外傷で搬送されたとしても、頭を打っている可能性も否定できなければ、脳神経外科の医師も診断や治療に加わるといったかたちで、見落としリスクの低減に努めています。
救急医療のほかに、柱となる診療はありますか?
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1つ目はがん治療です。当院は地域がん診療連携拠点病院に指定されています。PET-CTや320列CT、MRIをはじめとした検査機器を備え、早期診断に努めていること、手術支援ロボットを導入していることが特徴です。外科と泌尿器科領域において、低侵襲ながん手術に取り組んでいます。化学療法は化学療法センターにて専門スタッフによる治療を行っていますし、放射線治療にも対応。3年前には緩和ケア病棟を開設し、緩和ケアに精通した医師や看護師など多職種で患者さんを支えています。2つ目の柱は回復期医療です。新病院グランドオープンと同時に回復期リハビリ病棟を開設し、多職種で患者さんの社会復帰に取り組んでいます。さらにリハビリセンターでは理学療法士、作業療法士、言語療法士など専門スタッフが連携し、整形外科および脳外科領域に対するリハビリテーションを提供。入院患者さんはもちろん、外来患者さんにも対応しています。
先生のご専門の消化器内科について、教えてください。
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当科では消化器内視鏡検査を行い、消化管がんの早期発見に努めています。早期の段階で発見した胃がんや大腸がんに対し、内視鏡を用いて行う粘膜下層剥離術という術式を数多く実施しています。ある程度進行したがんに対しては、化学療法による治療も行っています。化学療法と放射線療法を併用したり、手術療法の前後で化学療法を行ったりするケースもあります。また、膵臓がんや胆管がんなどの悪性疾患に対しても早期発見に努めるとともに、病変が見つかった際には超音波内視鏡下穿刺吸引法を行い、治療方針を決定しています。このほか、潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患の治療にも力を入れています。ほかの診療科との連携を図ることも重視しており、消化器外科や放射線科と定期的にカンファレンスを実施。科を超えてコンサルテーションを重ね、症例を共有し、治療にあたっています。
診療モットーについてもお聞かせいただけますか?
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病気を治療して差し上げることがもちろん重要なのですが、どうしても治せない病気もあるのが現実です。そのような中でも、患者さんに「この病院にかかって良かった」と思っていただけるような存在になることをめざしています。そのため、医師や看護師、薬剤師など医療スタッフには、患者さんの気持ちを推察し、一人ひとりの背景を考えて行動してもらいたいと思います。患者さんの中には自分の思いを伝えることが得意な方もいれば、そうでない方もいます。また、早く治療を終えて自宅に帰りたい、という方がいる一方で、独り身のため自宅では転倒のリスクが高く、見守ってくれる人がいる環境にいたほうがいい、という方もいます。その方にとってより良い状態とは何なのかを考えて、接することが大切です。スタッフには「あなたがいたから頑張れた、ありがとう」と患者さんに言ってもらえるような関わり方をしてほしい、と伝えています。
最後に、今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。
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医療資源の多くは都心部や県庁所在地に集中しています。中でも、救急医療をはじめとする急性期医療の担い手である若手の医師が不足していることは、地域医療共通の課題です。一方で、社会の高齢化が進む中、求められるものが増えていくのも地域医療の持つ側面といえます。そのため、当院では若手医師の受け入れを積極的に行っています。地域内で十分な医療やケアが受けられる体制維持のために、人材の教育や確保に加えて、医師にとって働きやすい職場づくりにも尽力しています。その上で開業医さん、救急搬送、どちらに対しても、「断らない」医療を実践していく所存です。病診連携の一環として、地域の先生方との「地域連携交流会」も開いています。当院の医療や設備について知っていただく機会であり、今後もこうした「顔の見える関係性」を大切にしていきたいです。地域に開かれた病院として、市民の皆さんにとって頼りになる存在でありたいですね。
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鈴木 誠祐 理事長
1983年3月岡山大学医学部卒業。同大学医学部第一内科(消化器内科)を経て、1983年10月住友別子病院へ入職。2013年院長就任、2014年からは理事長も兼任。消化器内科を専門とし、中でも潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の診療に注力している。日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。日本消化器病学会消化器病専門医。日本内科学会総合内科専門医。医学博士。