独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO) 宇和島病院
(愛媛県 宇和島市)
渡部 昌平 院長
最終更新日:2023/02/28
地域包括ケアシステムの要の役割を果たす
1948年に宇和島社会保険病院として開院して以来、70年以上にわたって地域の人々の健康を支え、寄り添ってきたのが、「宇和島病院」だ。現在は、内科や外科、整形外科をはじめとする診療科を備え、急性期と回復期リハビリテーションに対応。また、地域包括ケアの病棟や健康管理センター、介護老人保健施設、訪問看護ステーション、居宅介護支援センターを併設することで、病気の予防から急性期、回復期の医療とリハビリテーション、在宅医療・介護支援、福祉まで、シームレスなサービスの提供をめざし、宇和島地域の人々が安心して生活できるよう努めている。そんな同院の院長で「地域包括ケアの要としての役割をしっかりと果たしていきたいですね」と話す渡部昌平先生に、地域における同院の位置づけや特徴について聞いた。(取材日2022年12月17日)
病院を紹介していただけますか?
当院は、ベッド数が199床で、診療科は内科、外科、整形外科、神経内科、心療内科、糖尿病内科などがあり、常勤医師は10人体制で診療を行っています。特徴としては、急性期一般病棟と回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟の3つの機能をもつ病棟があり、さらには健康管理センター、介護老人保健施設、居宅介護支援センター、訪問看護ステーションもあるということで、地域の皆さんの予防医療から急性期、回復期、在宅医療まで対応して、地域医療に貢献することをめざしています。また、地域包括ケアの要として、当地域の三次救急と高度急性期医療に対応している市立宇和島病院や地域の基幹病院の一つである宇和島徳洲会病院、そのほかの二次医療圏の病院などから回復期リハビリテーションが必要な患者さんや、地域の開業の先生から紹介された在宅療養中で入院が必要となった患者さんの受け入れなどを積極的に行っています。
力を入れているのは、どの分野でしょうか?
一つは整形外科と、それに関連するリハビリテーションです。整形外科は全般的に対応していますが、その中でも特に力を入れているのが関節疾患と脊椎疾患、大腿骨近位部骨折、リウマチ疾患の治療です。変形性膝関節症や変形性股関節症などの関節疾患では、膝と股関節の人工関節置換術に積極的に取り組んでいて、患者さんへの侵襲ができるだけ少ない手術をめざしています。脊椎疾患については、保存療法と手術治療で対応。また、高齢者の転倒などによる大腿骨近位部骨折も積極的に受け入れていて、手術によってできるだけ元の生活に戻れるように努めているほか、その原因となる骨粗しょう症の治療にも力を入れています。ほかに、関節鏡下の膝靱帯再建術や半月板損傷の手術にも対応しています。関節リウマチは私の専門ですが、この20年間で薬物療法が非常に進歩して、現在では手術が非常に少なくなりました。当院でも、薬物療法を積極的に展開しています。
リハビリテーションと総合診療部門についても教えてください。
リハビリテーション科では、理学療法士と作業療法士、言語聴覚士を含めた50人以上のスタッフがいて、回復期リハビリテーション病棟の患者さんはもちろん、急性期病棟や地域包括ケア病棟、さらには、外来や通所、訪問、付属の介護老人保健施設までシームレスに、患者さんが住み慣れた地域で生活できるようリハビリテーションを提供しています。専用に設計したリハビリテーション用のプールなど、非常に充実した体制を整えています。総合診療部門も当院の特徴の一つで、何か症状があるものの原因がはっきりわからない、自分の症状がどの診療科にかかれば良いのかわからないということは、決して少なくないと思います。また、高齢化が進む中で複数の臓器に病気があって、内科や外科、整形外科のどれかだけではカバーしきれないこともあります。そのため、その患者さんの全体を診ることができるような診療が必要だということで、2022年8月に開設しました。
病院の運営や診察の際に心がけていることはありますか?
「私たちはプロとしての誇りをもって研鑽し『愛と誠』の精神で患者様中心の医療に最善を尽くします」が当院の理念です。愛と誠はとても大切で必要なことですが、そういう精神的なことだけではなく、医療人として知識や技術を駆使して、患者さんの治療にあたることが大切だと考えています。加えて、先ほども話しましたが、地域医療、地域包括ケアシステムの要として、超高齢社会における地域の皆さんの多様なニーズに応え、生活を支えること。市内にある基幹病院は、それぞれで機能が比較的はっきりしています。その中で、当院が得意とする外傷を含む整形外科領域の診療に注力し、回復期リハビリテーションの患者さんをしっかり受け入れていくことが重要だと思っています。診療の際には、高い専門性を持つと同時に幅広く診ることを心がけ、一つの病気だけに注目するのではなく、患者さん全体を診ながら、細部にも注意を払って治療に取り組んでいます。
最後に今後の展望とメッセージをお願いします。
地域医療構想などにも関係してきますが、少子高齢化が進む中で地域の医療をどうやって維持していくのかが問われている今、当院の立ち位置や在り方というのは、非常に重要になってきます。その中で、今もお話ししたような地域のほかの病院や開業の先生方との連携も強化して、地域に根差した医療を進めていくこと。やはり、地域包括ケアシステムの要というところに行き着くと思います。また、当院は愛媛大学医学部との関係も非常に良好で、医師の多くがそちらから来ています。この関係を維持しながら、これからもより質の高い医療を提供していきたいと考えています。そして、当院では予防医療から急性期医療、回復期医療、在宅医療までをシームレスに提供しつつ、地域の病院や診療所との連携も通じて、広く患者さんを受け入れることができる体制を整えています。ご自身やご家族などが病気でお困りの際には、ぜひ当院を受診していただきたいと思います。
渡部 昌平 院長
1982年秋田大学卒業。1987年愛媛大学大学院卒業。米国留学、愛媛大学医学部助手、同助教授などを経て2013年に同院の前身である宇和島社会保険病院院長に就任。2014年より現職。日本整形外科学会整形外科専門医、日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医、同学会代議員、日本リウマチ学会リウマチ専門医、同学会評議員。医学博士。