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兵庫県立こども病院

(兵庫県 神戸市中央区)

飯島 一誠 院長

最終更新日:2022/10/24

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先進の医療で子どもを救い病院の未来を開拓

ポートライナーの南公園駅から徒歩約5分。緑あふれる公園を望むロケーションにある「兵庫県立こども病院」は、兵庫県政100周年を記念し1970年に須磨に開設された小児専門病院が、多くの医療施設が多く集まるポートアイランドに2016年に移転、創設。総合周産期母子医療センター、小児救命救急センターの機能を持ち、小児がんや小児の心臓疾患、アレルギー疾患など、胎児期から小児期のさまざまな疾患に対して、多様な治療やケアを組み合わせた集学的な医療を提供している。長期に入院しても子どもたちが学びを継続できるよう院内には学校の分校があり、家族のための滞在施設も用意。地域で病気とともに暮らしていく子どもとその家族のために、地域の医療機関はもちろん、福祉施設や行政とも密接に連携し、多角的なサポートを実践している。職員一同がめざすのは子どもと家族を支える「最後の砦」となる病院。新院長の飯島一誠先生も2021年4月の就任以来、先進的な医療を積極的に取り入れ、医療の質を上げるために研究にも力を入れようと日々奔走している。病院の特色やめざす医療のかたちについて飯島院長に話を聞いた。(取材日2022年9月21日)

周産期・小児医療の総合施設として注力していることを伺います。

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医学は目覚ましい進歩を遂げ、今まで治らないと思っていたような病気も、治る時代になってきています。その状況下で大事なのは、先進的な医療をしっかりと取り入れていくということだと思っています。私はこちらへ2021年に着任してすぐ、血液腫瘍内科の医師と相談し、小児の難治性白血病で注目を集める、CAR-T(カーティー)療法という遺伝子治療の一種を導入するめどを立てました。全国的に見ても小児専門病院では、まだあまり導入が進んでいませんから、兵庫県のお子さんが地元で治療できることは画期的だと思います。子どもさんの病気の中には、遺伝子の異常で起こってくる病気もたくさんあります。これらは必ずしも親から受け継ぐわけではなく、どの遺伝子にどのような変異が生じているかを突き止められれば、将来、有用な治療法が出てくることも期待できます。そのために、2022年4月にゲノム医療センターを正式に立ち上げました。

小児医療の「最後の砦」となるために努力されていることは?

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新型コロナウイルスの流行で注目されたのが、PICU(小児集中治療室)病床の少なさです。当院は移転を機にPICUを拡張しました。ところが2022年の第6波では「これ以上新型コロナウイルス感染症の重症患者を受け入れられないかもしれない」という状況に陥ってしまいました。新型コロナウイルス感染症の患者さんの場合、ウイルスを外に出さないように室内を陰圧にする必要があるのですが、当院の14床のPICUのうち、新型コロナウイルス感染症の患者さん対応の陰圧室は2床だけでした。兵庫県立尼崎総合医療センターなどと連携を密にして、なんとか乗り切れたのですが、これから先のことを考えると早急な改善が必要です。PICUは感染症だけでなく、他の重症患者や術後管理にも必要です。当院は小児救命救急センターでもあり、今年度中に16床に増やす工事を行い、そのうちの5室を陰圧室対応にして来年度からの運用をめざしています。

やはりこちらでも新型コロナウイルス対応は大変でしたか?

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第5波までは子どもはかかりにくいといわれていましたが、オミクロン株が流行してからは、それまでの10倍ぐらいの患者さんが来院されました。予想外だったのはスタッフに感染者や濃厚接触者が多く出て、一気に人が足りなくなってしまったことで、毎日ドキドキしながら睡眠不足で仕事をしていました。国立感染症研究所がオミクロン後の子どもの重症、死亡例の調査結果を最近発表したのですが、それによると、重症化や死亡に至るのは、基礎疾患のある人とない人がそれぞれ半々ぐらいという結果で、必ずしも基礎疾患のある人だけが、重症化しやすいというわけではないことがわかりました。死亡原因としては、脳症や心筋炎が多く、肺炎はまれです。賛否両論ありますが、日本小児科学会が推奨するように、子どももワクチンがちゃんと打てるような状況になることが望ましいと思います。

診療と研究を両立できる環境が必要とお考えだそうですね。

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前職が神戸大学小児科の教授だったこともありますが、私は研究がすごく大事だと思っています。当院は本当に難病の患者さんがたくさんいらっしゃいます。その数は大学病院よりも多いのに、研究成果があまり出てきていません。病院は臨床だけでいいんじゃないか、という昔ながらの文化が残っているような気がします。私たちは毎日、患者さんを診ていますが、ベースに科学というものがないと本当に良い医療はできないと思うのです。各自がリサーチマインドを持つことが重要です。同じ病名がついても子どもさんはお一人お一人、病状が違います。「なぜ、違うんだろう」と思うところから研究は始まり、そう思えるかどうかが医療の質に関わってくると思うのです。当院は神戸大学医学研究科の連携大学院であり、今年から、文部科学省の科学研究費助成事業に応募できる体制も整いました。今後、研究をサポートする組織を整備することも構想中です。

地域の方へのメッセージと病院の将来についてお聞かせください。

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私たちは、兵庫県立こども病院が小児医療の「最後の砦」だと強く認識しながら日々診療しています。先進的な医療を率先して取り入れることはもちろん、患者さんとご家族に優しい医療の提供も大切にしていきますので、どうぞ遠慮なく来院ください。院内の目安箱「ハートメッセージ」に寄せられたご意見には、各部署から丁寧に返事を書き、またホームページではお子さんに有益な医療情報の発信を、よりスピード感を持って発信するよう努めてまいります。医療の根幹は医療安全です。たくさん患者さんを受け入れてしっかりと医療を行うためには、スタッフが過重労働にならないようにバランスを取ることも大切です。私一人の判断ではなく、各部署のスペシャリストとオープンにディスカッションをして、常に現状を把握することにも尽力いたします。今後10年20年先まで持続的に当院が発展していけるように、そのための基盤をつくることが私の使命だと考えています。

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飯島 一誠 院長

1982年神戸大学医学部卒業後、神戸大学小児科に入局。1989年米国ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に留学。1991年より神戸大学附属病院小児科助手、講師、2002年から6年間国立成育医療センターで腎臓科医長を務めた後、2008年、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野特命教授、2011年から同分野教授。2021年より現職。先進的な医療を積極的に取り入れ、研究環境整備に奔走。

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