医療法人社団秀英会 神戸朝日病院
(兵庫県 神戸市長田区)
金 秀基 院長
最終更新日:2022/01/26
めざすのは「地域医療と専門的診療の融合」
1988年に開院した「医療法人社団秀英会 神戸朝日病院」は、急性期病棟100床、地域包括ケア病棟34床の計134床を有す病院。兵庫県肝疾患専門医療機関となるなど肝臓疾患の診療を得意とするが、内視鏡、人工透析、認知症診療などにも力を入れ、神戸大学医学部附属病院や神戸市立医療センター中央市民病院など近隣の医療機関からさまざまな疾患の患者を受け入れているという。地域包括ケア病棟では、疾患治療はもとより栄養状態の改善やリハビリテーション、退院調整まで含めての患者サポートを実施。「関わってくださった患者さんの人生を大事にする」をコンセプトに、患者の生活背景を考えたきめ細かな診療を提供する。急性期病院と慢性期病院の中間である「地域包括期病院」として、「地域医療と専門的診療の融合」をめざす同院。院長の金秀基(きん・すぎ)先生に、現在掲げている3つのビジョン、地域への思い、めざす病院像、今後の展望などについて話を聞いた。(取材日2019年11月25日/再取材日2022年1月25日)
病院の歴史と理念を教えてください。
1988年に先代院長の金守良(きむ・すりゃん)理事長が開院しました。1995年に阪神・淡路大震災があり、全力で取り組ませていただいたという歴史があります。創立31年となる2019年4月に2代目院長として就任した私が掲げたのが、震災20年を機に市民の想いを集めて神戸市から名づけられたシンボルに、地域医療への思いを込めた「BE KOBE」、全スタッフが技術・知識の習得はもちろん患者さんへの接遇も含めて⾼いプロ意識を持って取り組むという意味の「Top Professional」、スタッフそれぞれが夢や目標に向かって挑戦することで、患者さんにとっても魅力ある病院になろうという「With Your Dreams」。この3つのビジョンをもとに、より良い病院を築き上げていければと考えております。
地域への強い思いと、新時代への期待が感じられるビジョンです。
2016年に当院に副院長として入職するまで、大学病院や総合病院で主に専門的な診療に携わってきました。一方、当院の周辺の地域は神戸の中でも特に高齢者が多いエリアであり、さまざまな生活環境の中で複数の疾患を抱えた方も少なからずいらっしゃいます。医療産業都市といわれる神⼾市ですが、⾼齢化社会におけるリアルな患者さんへのアプローチも重要な課題だと考えています。こうした私の思いを全スタッフに伝えることができるのも、スタッフとの密なコミュニケーションが可能なこの規模の病院だからこそ。患者さんの人生をダイレクトに感じられる病院で、その機動力を生かしながら型どおりではない新しいチャレンジをしていきたいと考えました。
貴院の持つ地域包括ケア病棟とはどのようなものでしょうか。
大学病院などの急性期病院は長期にわたり入院することが難しいのが現状です。当院は急性期病棟に加え、2~3ヵ月単位という比較的長い在院が可能な地域包括ケア病棟があり、疾患治療はもちろんリハビリや栄養状態の改善、退院調整などにも時間が割けることが特徴です。患者さんはそれぞれ違う生活背景を持っていますから、病院は病気を治す機能だけでなく⼀⼈ひとりの患者さんの⼈⽣を⼤切にし、トータルで対応できれば、なお良いのではと考えています。患者さんと関わる時間が長い分、スタッフにも同じ思いが芽生えていると感じています。これまでは急性期病院と慢性期病院の2択が基本でしたが、この地域包括ケア病棟を活用し、その中間の「地域包括期病院」として一つの病院像を提示していきたいですね。しかし“地域”という言葉にこだわるあまり診療の質が置き去りになってはいけません。「地域医療と専門的診療の融合」が当院のめざす姿です。
貴院の得意とする診療について教えてください。
兵庫県肝疾患専⾨医療機関であり、肝炎や肝硬変、肝臓がんまで診療可能です。神⼾⼤学医学部附属病院や神⼾市⽴医療センター中央市⺠病院などに患者さんをご紹介いただくなど、特に専⾨性の⾼い肝臓分野を中心に近隣医療機関と関係を築いています。内視鏡は⼤学病院や基幹病院から実績のある医師たちにサポートいただき、質の高い検査、治療の提供に努めています。透析では腎臓内科を専⾨とする医師が在籍し、外来透析治療だけでなく、リハビリ対応の⼊院透析治療も可能です。⾦理事長は神⼾市の認知症サポート医でもあり、もの忘れの外来や神⼾市認知機能検診ではCTとMRIを⽤いた画像診断も行っています。さらに2019年から放射線画像診断およびIVR治療のスペシャリストである⼩林久⼈医師が就任し、透析シャント経⽪的⾎管形成術(PTA)や肝臓がんのラジオ波治療に加え、マイクロ波治療を開始。そのほか下肢静脈瘤の治療も行っています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。
当院の長所を問われたら、迷わず「将来性」と答えます。30年の歴史を持つ病院ですが、若いドクターやスタッフも含めて意見やアイデアを出し合い、当院だからこそできるチャレンジに取り組み、新しい病院像を創り上げていきたいと考えています。また、当院は、開院当初より韓国の複数の医療機関や大学と医療交流を続けており、人的な連携や肝臓分野を中心とした学術活動を行ってきています。今後は韓国のみならずアジア全体も視野に入れて、医療を通じたグローバルな社会貢献をできればと考えております。当院は総合病院と言っても大規模ではありませんので、決して敷居が高いことはありません。「関わってくださった患者さんの人生を大事にする」をコンセプトに、さまざまなことに対応し得るような可塑性、柔軟性を持っている病院だと思っています。多くの患者さんのお役に立てるように尽力してまいりますので、いつでもお越しいただければ幸いです。
金 秀基 院長
2004年3月京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院、大津赤十字病院、大阪赤十字病院勤務。2011年京都大学大学院医学研究科に進み、2012年~2015年は日本学術振興会の特別研究員に。2016年神戸朝日病院に副院長として入職、2019年4月より現職。日本肝臓学会肝臓専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本内科学会総合内科専門医。京都大学医学博士。