社団法人 今治市医師会市民病院
(愛媛県 今治市)
石井 榮一 院長
最終更新日:2024/12/05
今治地区の土日の救急医療を担う市民病院
今治地区で救急医療とプライマリケアを提供する「今治市医師会市民病院」。2018年から愛媛大学病院の支援のもと、週末の救急医療を担い、2020年からは週末の小児救急診療も開始。今治地区における医療インフラとして市民の健康を支えている。新型コロナウイルスによるパンデミック時は第二種感染症指定医療機関として患者の受け入れにあたってきた。「市民の病院」として、平日の外来診療にも力を入れる同院では、小児科、外科、内科、胃腸内科、胃腸外科、循環器内科、循環器外科、放射線科、リハビリテーション科を設置し、2019年より院長を務める日本小児科学会小児科専門医の石井榮一先生をはじめ、循環器や消化器、感染症など、高い専門性を持つ医師が診療に取り組んでいる。「患者ファースト」の理念を掲げ、救急患者のフォロー、外来患者への丁寧な対応を重視する石井院長に、同院の特徴や地域での役割、今後の展望について話を聞いた。(取材日2024年11月11日)
御院の特徴、地域における役割を教えてください。
今治市医師会市民病院は、今治地区の救急医療を担う病院として、市民の皆さんに救急医療とプライマリケアを提供しています。特徴的なのは土日の救急医療です。愛媛大学病院から内科、外科の医師それぞれ1人ずつと看護師2人に来ていただき、当院の医師と看護師は、そのバックアップにあたっています。救急で治療を受けた患者さんの入院中と入院後のケア、あるいは転院に対応する体制を整えています。当院は今治市の週末の救急医療に対応し、土日に多くの患者さんを受け入れています。また、土日の準夜間と輪番制に伴い月に2回の日曜の日勤帯は小児救急診療を行っており、感染症やアレルギー、脱水など、小児科の一般的な救急疾患はすべて診ています。今治市医師会が運営し、地域の救急医療、中でも週末の救急医療を支える病院として貢献しています。
一般診療についてはいかがでしょう?
平日の外来は小児科、内科、外科を設けています。私は小児科の診療、外科は消化器が専門の医師、内科は循環器疾患を専門とする医師が担当しています。また、毎週金曜に膠原病と感染症が専門の内科医師、月に2回外来を担当する小児外科の医師という布陣で診療にあたっています。基本的に主治医制を敷いており、それぞれの担当医師が診療するというかたちです。週末に救急で入院した患者さんは、引き続き当院で診療しケアします。小児科も含め、患者さんのフォローアップは非常に大切です。診て終わりというわけにはいきませんし、子どもに限らずいつ病気になるかわかりませんからね。ただ、週末の救急を維持するため月曜と木曜の午後は休診というかたちを取っており、患者さんにはご不便をおかけすることもあると思いますが、十分な説明と丁寧な診療できちんとフォローしご理解が得られるよう努めています。
先生は小児科の中でも血液腫瘍学がご専門と伺っています。
専門は血液のがんです。子どもの血液のがんの症例は少ないのですが、そのような疾患を抱えている患者さんがいらっしゃれば診療させていただいています。どの分野においても言えることですが、特に小児がん分野の治療は非常に進歩が早いため、勉強会などに参加して新しい情報のキャッチアップも心がけています。愛媛県でも年に何人か脳腫瘍を発症する方がいますし、当院にも脳腫瘍を主訴に相談に来られる患者さんがいらっしゃいます。ご存じのように、がんは免疫と関連しています。免疫はすべての病気に絡んでいるため、感染症やアレルギーといった病気の成り立ちや病態について、免疫を絡めて患者さんにご説明すると理解していただけることが多いと思います。病気の中身をきちんと説明することも病院の外来の使命だと考えています。子どもが病気になれば家族全体が大変ですから、その背景も含めて診療することを大切にしています。
先生が病院運営で大事にされていることは何でしょう?
救急医療だけでなく、平日の一般診療にも力を入れ、地域の皆さんに利用していただける「市民の病院」でありたいと考えています。診療においては、丁寧にきちんと患者さんをフォローすることがモットーで、それが何よりも重要なことだと思います。また健診センターでは、一般健診や特定健診などの健診業務にも対応しています。そして、患者さんからの質問や疑問に対して、真摯に対応することを大切にしています。患者さんに寄り添った医療を理念として心に刻み、医療の原点である「患者ファースト」の診療を提供してきたいですね。また、各部門の人員の確保は、当院の目標の一つです。近くには医師会が運営する看護の専門学校があります。看護師不足は、当院だけでなく愛媛県全体の課題でもあるため、卒業生の皆さんにはぜひ当院で働いていただきたいですし、今治市に残り看護師として活躍してくださる人材の育成にも注力していきたいです。
今後の展望と読者へのメッセージをお聞かせください。
新型コロナウイルスの流行以降、当院は新型コロナウイルスの病院という認識が市民の皆さんの間に定着してしまったように感じています。確かにパンデミック時には、第二種感染症指定医療機関として役割を果たしてきましたが、現在は感染状況も落ち着き、救急だけでなく平日の外来診療にも力を入れています。週末に救急で運ばれた後、翌日もきちんと患者さんをバックアップし、フォローしていることは、地域の皆さんにお伝えしたいところですね。継続的な診療ができる状況を理解していただき、われわれも患者さんにそれを伝える体制づくりをめざさなくてはなりません。昨年は電子カルテシステムを導入しましたが、今後はリハビリテーション室の整備や看護体制の拡充など、できる範囲でハードとソフト両面を整備しながら、患者さんに適切な医療を提供していきたいと考えています。今後も市民に愛され、市民の健康を守る砦となれるよう、力を尽くしてまいります。
石井 榮一 院長
1979年九州大学医学部を卒業後、九州大学、唐津赤十字病院、佐賀県医療センター好生館、浜の町病院、佐賀大学、愛媛大学にて、主に小児科学・小児血液腫瘍の臨床と研究に従事。2007年より愛媛大学小児科教授として医学部の学生・新人医師の教育を行うと同時に、小児保健、地域小児医療を専門に愛媛県の小児医療の活性化に貢献。2019年4月より現職。日本小児科学会小児科専門医。