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医療法人聖愛会 松山ベテル病院

(愛媛県 松山市)

中橋 恒 院長

最終更新日:2021/12/28

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ホスピス精神に基づく安心・安全な医療を

1980年に設立された老人ホームの医療のバックアップとして、故・森健一名誉理事長が松山市祝谷に1982年に開設した「松山ベテル病院」。以来、地域のかかりつけ病院として地域医療に貢献し、心身ともに病んでいる患者を全人的にケアするホスピス精神を基本理念として歩んできた。愛媛県下でも早期に特殊疾患療養病床とホスピス病床を導入し、近年は在宅での医療、看護、介護を継続的にサポートできる体制を整備。2005年より院長を務める中橋恒先生は、地域のコミュニティーづくりをさらに強化し、松山ベテル病院と関連施設、および病病連携と病診連携で患者と家族に寄り添うかたちをつくり、地域ぐるみで支える体制をめざす。「ホスピス精神に基づく安心・安全な医療を地域に届けたい」と、緩和ケアに心血を注ぐ中橋先生に、病院の理念や取り組み、緩和ケアにかける想いを聞いた。(取材日2021年11月2日)

こちらの病院の成り立ちについてお聞かせください。

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1980年に、現理事長の父である森健一先生が松山市祝谷に「エデンの園」という老人ホーム設立に尽力し、その医療的なバックアップとして、1982年にエデンの園の隣に82床を有する病院を建てたのが当院の始まりです。『ホスピス精神に基づいた全人的ケア』を設立理念に掲げ、身体から病を取り去ることに努めるだけでなく心身ともに病んでいる患者さまへの全人的ケアと、病院は病を癒す所であると同時に人々が死を迎える場所でもあるという考えから臨死患者さまへの心身のケアの実践に取り組んできました。「ホスピスケア」という考え方がまだ浸透してなかった時代に、このような理念の病院を創った初代理事長の先見性にたいへんな驚きと感動を覚えました。その後、理念の実現のために2000年にホスピス病棟を開設し、高齢の方、末期がん、神経難病の患者さまの心身の苦しみを和らげるための場所として、医療・看護・介護でケアを提供しています。

基本理念をお聞かせいただけますか?

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キリスト教の「愛の精神」を基本理念に、全人的医療と心のこもった看護で、最後まで人間らしく、尊厳をもって、その人らしく生き抜くことができるような援助をすることです。一人ひとりの意思、生活を尊重し、その人らしさを大切にしたケアを行います。通常、病院の機能は病気を治療することですが、ホスピス・緩和ケアは違います。私は20年前に当院に就任する前も「人」を看ていたつもりでしたが、医療だけを行っているということは結局、「病気」しか診ていなかったんだとこちらに来て気づかされました。すべての人に等しく訪れる人生の終わりを当たり前の事として受け止め、生き終え方への意識を持つことの大切さを患者さまやご家族の皆さまと一緒に考えていくケアを行っています。また、一般の病院では裏口から亡くなった方をお送りすることが普通ですが、当院では尊厳を持った「人」として、表玄関からお見送りをすることも大切にしています。

地域における病院の役割についてお聞かせください。

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当院は、先進の医療機械を導入し、専門的なドクターを集め、高度な治療を行うことを目的としている病院ではありません。現在、日本が抱えている大きな社会問題の一つとして高齢・多死が挙げられますが、その人らしさを大切にした「生活支援」と「看取り支援」が当院の大切な役割であると考えています。当院では「入院」「通院」「在宅」の3分野での連続的なケアの提供のために、いつでも入院できる155の病床環境、通院のための外来環境、ご自宅での療養を支える訪問診療・訪問看護・訪問介護の環境を整えています。そして、もう一つの大切な役割である「看取り支援」では、患者さまが身体的にも精神的にも穏やかな療養環境の中で旅立たれることを援助し、大切な人を失うご家族への悲嘆のケアにも積極的に取り組んでいます。地域の医療機関とも、専門的な看取り支援のための入院の受け入れや、在宅ケアの提供など病病連携・病診連携を積極的に進めています。

診療スタンスや緩和ケアにかける想いをお聞かせいただけますか?

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入院・通院・在宅医療について、患者さまが人生の流れの中で一番望まれる療養場所でお世話ができることが一番だと思っています。私たちが関わる緩和ケアは人の死と向き合う場面が多く、紹介元の病院で積極的な治療が難しい状況になり、当院を紹介された患者さまやご家族の皆さまは「見捨てられた」と当院をネガティブな場所として感じておられる言葉をよく耳にします。最初はとてもショックでしたが、誰しも死と向き合うことを避けたいと思う気持ちは実に当たり前だと、当院へ来たくない思いを素直に受け止められるようになりました。であればこそ、来たくない気持ちで来られたとしても、結果的に当院で療養された日々が意味あるものになるようなお世話をしたいと努めています。大切な方を看取られたご家族からの「今度私がお世話になるような時はベテルでお願いします。それまで先生元気で頑張ってくださいね」との言葉は、私たちにとって最高の褒め言葉です。

特に力を入れている診療分野などはありますか?

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私はがんの患者さまの緩和ケアを専門に関わりを持っていますが、がんという疾患に関わらずすべての患者さまに全人的医療と心のこもった看護で、最後まで人間らしく、尊厳をもって、有意義に生き抜くことができるようなケアの在り方を深めていきたいと思っています。そのためには、医師、看護師、薬剤師、介護士、栄養士、理学・作業・言語療法士、ソーシャルワーカー、事務など、それぞれの専門分野からの視点を大切にした多職種チームで関わることがとても大切であると考えています。特に当院はキリスト教を土台とした病院であり、院内にチャプレンという病棟牧師がいることが大きな特徴です。死と向き合う人にとって、信仰のあるなしにかかわらず宗教的な働きは大きな癒しとなっています。また、入院療養という社会と隔離された日常性の希薄さの中、ボランティアの皆さんが日常的なものや社会の風を運んでくださり、その人らしさの回復の力になっています。

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中橋 恒 院長

金沢大学医学部卒業後、名古屋大学の医局に入局。3年間勤務した後、九州大学第2外科へ。1992年より松山赤十字病院の呼吸器外科で10年間勤務の後、2002年より松山ベテル病院で勤務。2005年に院長就任。医師になった時からの「がんの患者さんを診たい」という想いを胸に、肺がんを主軸に外科・呼吸器外科で研鑽を積んだ。松山ベテル病院では、高齢者や難治性の慢性疾患、末期がんの患者の緩和ケアに力を尽くす。

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