医療法人聖光会 鷹の子病院
(愛媛県 松山市)
東 太地 院長
最終更新日:2022/07/05
頭頸部領域を中心に全身の診療で地域に貢献
内科のほか、耳鼻咽喉科、脳神経外科、眼科を有し、頭頸部領域の診療で街のクリニックと高次医療機関の「中間の医療」を担ってきた「鷹の子病院」。開院当初から約40年の歴史がある耳鼻咽喉科では悪性腫瘍以外の手術や人工内耳リハビリテーションなどを行い、鷹ノ子駅周辺の住民のみならず愛媛県内から多くの患者が訪れている。また内科では生活習慣病など「一生付き合う病気」に寄り添うほか、在宅医療で患者の生活面を含めた総合的なサポートに注力。さらに地域の中核病院として各医療機関と病病・病診連携の体制を強固に築いており、クリニックで診断が難しい症状の精密検査を行うほか、大学病院での手術前後の中継地となるなど、双方向に適切な医療機関への紹介も行う。「地域の方のかかりつけ医でもあり、専門性の高い治療を提供する病院でもある。そして大学病院とクリニックの橋渡しもする。病状に合わせてさまざまな役割を担い、患者さんを支えることが使命です」と話す東太地院長に、これまでの病院の歩みや、地域医療に対する考えなどについて詳しく話を聞いた。
(取材日2021年10月29日)
病院の成り立ちと歴史、地域における役割を教えてください。
1982年6月に耳鼻咽喉科と内科の2科で開院したのが当院の始まりです。開院当初、入院病床は40床でしたが翌年4月には72床に増床し、脳神経外科と眼科が加わりました。その頃から現在まで、耳鼻咽喉科、脳神経外科、眼科という頭頸部領域の3科を中心に、内科と合わせて全身疾患を診る総合的な医療を提供しています。頭頸部領域の詳細な検査のため、1984年7月にはCTを、1986年3月にはMRIを導入するなど、当時の四国では早くから高水準を追求した画像診断を始めており、今日までに数多くの症例と経験が蓄積され、診療に生かされています。地域では街のクリニックと大学病院など先端の治療を行う高次医療機関をつなぐ中核病院として関連の医療機関と相互に連携し、クリニックでは判断が難しいケースの検査・診断、悪性腫瘍以外の入院手術・治療、高次医療機関での治療を終えた患者さんの在宅療養支援などを担っています。
耳鼻咽喉科、脳神経外科、眼科ではどんな診療をしていますか?
耳鼻咽喉科では悪性腫瘍以外の病気をほとんどカバーしていて、「中耳手術センター」では慢性中耳炎、真珠腫などの中耳の炎症と、難聴やめまい、顔面神経麻痺を起こす耳の難治性疾患の手術による治療・研究に取り組んでいます。耳鼻咽喉科の外来ではアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法やCPAPという機械を使った睡眠時無呼吸症候群の治療のニーズも高いですね。眼科は結膜炎のような日常疾患から手術まで幅広く診療していますが、特徴的なのは子どもの斜視の手術をしていること。また白内障の手術では、ご高齢で複数疾患を抱える方や一人暮らしで日帰りが不安な方も安心して手術を受けられるよう、内科との連携体制、入院設備を整えています。脳神経外科では急性期や急性期を脱する患者さんのフォローを中心に、併せて原因不明の頭痛の診療も行っております。強い頭痛は生活に支障を来す場合があるので「まず頭痛を止めること」を優先する診療を心がけています。
内科を含め幅広く診療する強みはどのような点にあるでしょうか。
患者さんの通院負担が少なく済むよう、院内紹介を行いスピーディーな診察を行えるところです。例えば、糖尿病と、目が霞む・視力が落ちるといった合併症のどちらにも対応できます。また、めまいや睡眠時無呼吸症候群など、原因が耳鼻科系にあるのか、中枢神経にあるのかによってかかるべき診療科が変わるような症状に対しても検査を院内で完結できるので、基本的には新たに別のクリニックに通い直す必要がありません。当院の内科には複数の医師が在籍しており、それぞれに循環器内科、呼吸器内科、糖尿病内科と専門分野を持っているので、一般内科として患者さんの全身を診ることに加えて、専門的な治療についても広く相談に乗っています。高齢の方は、糖尿病、高血圧症、高脂血症などの生活習慣病を抱えながら手術になる方も多いので、持病の管理で内科が関わることもありますね。
リハビリテーションや在宅医療にも力を入れているそうですね。
高次医療機関で手術・治療をして退院した患者さんを受け入れ、在宅生活移行に向けたサポートを行っています。手術後患者さんに介護が必要になった場合、すぐにはご家族の心の準備やご自宅の環境が整えられないケースがほとんどですから、当院への転院を挟み、入院中に介護体制を整えてもらいます。入院中は患者さんには体力づくりを含めたリハビリと術後治療を、ご家族には介護保険申請やデイサービス利用検討の相談をお受けするなど、病状を踏まえて今後どのように在宅医療を頼るか一緒に考えます。リハビリは理学療法士や作業療法士による運動器、呼吸器、脳血管疾患の各種リハビリに加え心臓リハビリなども実施。また全国でも取り組む病院が少ない人工内耳埋め込み手術後の人工内耳リハビリにも言語聴覚士とともに取り組んでいます。これを親しみやすいよう「でんでんむし教室」と名づけ、愛媛県内に「聞こえ」の大切さが根づく手助けになればと奮闘中です。
今後、病院で取り組んでいきたいことは何ですか?
身近な病院として地域のために何ができるかを真剣に考え、当院の体制をさらに強化していきたいです。これまで耳鼻咽喉科や脳神経外科、眼科という頭頸部領域を中心に診療してきましたが、今後さらに高齢化が加速するといわれる中で求められるのは総合的な内科診療だと思っています。「住み慣れた地域で最後までその人らしく過ごすこと」は、地域の方にとって人生の大きな願いの一つでしょう。その願いをかなえるため、すでに32床の地域包括ケア病床を設け、関連施設と連携しつつ在宅医療にも力を入れています。「その人らしく」という意味では、もちろんご高齢の方には限りません。患者さんの中には一生付き合っていく病気を持つ方もいれば、症状の原因を特定できず不安を抱える方もいます。ですから、地域でお体のことにお悩みの皆さんにとっていざという時の心のよりどころでいたい。そのために医師をはじめ関係者全員で一丸となり、努力していく所存です。
東 太地 院長
1994年愛媛大学医学部医学科卒業後、愛媛大学医学部第一内科に入局。愛媛県立中央病院内科、町立吉田総合病院内科、愛媛大学医学部附属病院を経て2018年鷹の子病院に勤務開始。2020年より現職。血液内科、リウマチ科が専門で愛媛大学医学部附属病院では造血細胞移植センターのセンター長として白血病治療や骨髄移植に携わる。現職では高齢化が進む地域で「最期まで寄り添い治療できること」にやりがいを感じている。