学校法人 愛知学院大学歯学部附属病院
(愛知県 名古屋市千種区)
三谷 章雄 病院長
最終更新日:2024/02/28
医科歯科連携で高齢の有病者にも対応
名古屋市営地下鉄東山線・覚王山駅からほど近い立地に建つ「愛知学院大学歯学部附属病院」。診療棟1階には内科や外科など主だった医科が入り、主に2~5階では小児から成人までの幅広い歯科医療を行っている。全部で15の専門の診療部と9の特殊な診療部、17の特殊な外来があり、中部地区における歯科医療「最後の砦」として、一般歯科診療はもとより、どこにかかればよいかわからない症例や難症例も愛知県内外から受け入れている。適切な診断のために先進の設備を備え、ユニット数は162、手術室は3室を有する。高度で専門的な治療を支えるベースとなっているのは、緊密な医科歯科連携だ。「患者さんは高齢で体に持病のある方が多いのですが、コール一つで医師が駆けつけてくれるという安心の体制ができています」と三谷章雄病院長。糖尿病や骨粗しょう症など歯周病との関連のある症例には医科歯科が協力しての治療が重要となる。一方、大学病院といえども敷居は低く、「市民に近い存在でありたい」と穏やかに話す三谷病院長。同院の医科歯科連携の強みや特徴、めざすところなどについて話を聞いた。(取材日2023年9月13日)
地域での役割、位置づけについて教えてください。
当院は歯科の病院として中部圏の中核的な存在と自負しており、果たすべき役割、責任は大きいと考えています。歯科の中には専門分野として歯科保存科、歯周病科、歯内治療科、補綴科、口腔外科、矯正歯科、小児歯科、口腔衛生などがあり、さらに障害者に対応する歯科や、外傷、顎欠損などに対する顎顔面補綴、インプラント治療、口臭治療、顎変形治療などのほか、全国的に早い時期から取り組んできた口唇口蓋裂の専門部門もあります。またマグネットデンチャー、口腔金属アレルギー、言語・口腔機能発達、顎関節、口腔粘膜疾患・腫瘍、難抜歯、摂食嚥下、口腔ケアなどについては専門の外来も開設しています。幅広く、かつ専門・先進的な治療が可能で、どのような症例の方も受け入れる歯科病院であり、それが誇りでもありますね。一方、大学病院ですので、教育機関として人材育成、新しい治療の研究・開発、発信も大きな役割の一つです。
こちらの特徴を教えてください。
超高齢社会において、歯科治療に来られる患者さんの多くが有病者であり、歯だけでなく全身の健康に配慮することが重要です。当院の大きな特徴は、歯科に関する多くの専門の診療部、特殊な診療部、特殊な外来と内科、外科、小児科、耳鼻咽喉科、糖尿病内科などの主だった医科との連携です。歯科の治療中、気分が悪くなった方がいた時もコールをすれば医科の先生が駆けつけて救急対応できる体制があり、必要に応じて専門医療機関へ迅速に送ることができます。これは患者さんにも歯科医師にも安心で、だからこそ高度な歯科医療が行えると考えています。また、歯科手術の術前検査で高血圧、心疾患、糖尿病、ウイルス性肝炎や消化器系の疾患・不調が見つかった場合には、安全に手術を行えるよう必要に応じて内科、外科で治療が可能です。さらに、医科歯科連携は非常に緊密で、患者さんに対し適切な治療を医科、歯科ともに並行して行えるメリットは大きいと思います。
医科診療部門との連携についてはいかがですか?
内科には糖尿病の患者さんも多く、医師、看護師、管理栄養士らとチーム医療を行っています。腎症、網膜症、動脈硬化性疾患のほか、実は歯周病も糖尿病合併症の一つです。糖尿病内科では糖尿病治療とともに歯周病の精密検査も行い、自覚症状のないうちから歯周病治療ができます。また、骨量、骨の質が精密に検査できる先進機器を用いてインプラント手術前の顎の骨の精密検査や骨粗しょう症の予防、早期発見・治療に努めています。外科では日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医・日本肝臓学会肝臓専門医の2人の医師が胃カメラ、腹部エコー・CT検査による診断のもと、食道・胃、大腸、肝胆膵の診療を実施。外科では鼠経ヘルニアや痔核の手術、外傷、皮膚の腫瘤等、紹介状なしでも受診できます。歯科の患者さんで病院受診の敷居が高かった方も気軽に診察を受けられます。
患者に対して真摯に向き合っておられると感じます。
当院は、カンファレンスをしっかりやっていることも特徴です。例えばインプラント治療は1本でも2本でも複数科で意見交換しています。私は歯周病が専門ですが、歯周病は糖尿病だけでなく心疾患や脳血管疾患にも関わっておりその治療は重要になりますので、患者さんには現状の問題点や歯磨きの大切さについて丁寧にお話しています。説明に時間をかけることができるのも大学病院の良いところですね。歯磨きの説明にこんなに時間を使ってと思われるかもしれませんが、その患者さんがその先の人生を健康に過ごされるための大事なことなのです。患者さんには、歯周病と体の病気との関連について理解し、ご自身できちんとお口の管理をしていただきたい。そうすれば長く自分の歯で食事を楽しめる可能性が高まるでしょう。歯科には治療ではなく予防やメンテナンスに通う、それが普通になれば、患者さんにとっても歯科医師にとってもハッピーなことですね。
今後の展望についてお考えをお聞かせください。
当院は半世紀以上の伝統と歴史がありますが、今後はそれらを重んじつつ、時代に合わせて新しいことを取り入れアップデートしていくことも大事だと考えています。若い人たちの意見を聞き、患者さんの声もくみ取り、柔軟な体制にしていきたいです。新しく建てた臨床教育研究棟では一般の方向けの公開講演会も予定していますのでぜひご参加いただければうれしいですね。月見坂テラスにあるカフェもお気軽にご利用ください。われわれが医科と連携し歯科医療に力を尽くせば、一般の方々の歯に対する健康意識が高まり、ひいては体の有病率を減らすことに貢献できるかもしれません。できれば20代から歯周病をはじめとする歯科検診を受けてご自身でお口の管理をすることが理想です。そのために歯科検診にも力を入れており、今後は若い人が相談しやすい公開相談会を設けるなどの活動もしていきたいですね。
三谷 章雄 病院長
2000年愛知学院大学大学院歯学研究科修了、歯科保存学専攻。同大学歯学部助手、歯周病学講座講師を経て2007年より1年間同大学在外研究員としてグラスゴー大学医学部免疫研究所に研究留学。2012年同大学歯学部准教授、2014年同大学歯学部主任教授。2023年4月より現職。日本歯周病学会歯周病専門医。
自由診療費用の目安
自由診療とは矯正治療/66万円〜、歯周組織再生療法/11万円〜、インプラント治療(手術、型取り、上部構造含む)/55万円〜、セラミッククラウン/11万円〜、マグネットデンチャー1歯(義歯は別途)/8万4700円~、顕微鏡下での神経・歯根の精密治療(根管充填含む)/7万7000円〜、口臭相談+検査/5000円〜