独立行政法人地域医療機能推進機構 久留米総合病院
(福岡県 久留米市)
牛嶋 公生 病院長
最終更新日:2025/05/12


多様なニーズに応える総合病院
1946年に発足し78年の歴史の中で変遷しながら、長らく「久留米第一病院」として地域住民に親しまれてきた「久留米総合病院」。久留米市の市街地に位置する同院は、開設当初から現在の場所で住民の健康を守る要の存在として、安心・安全に配慮した心の通う診療を追究し続けている。2014年から地域医療機能推進機構JCHOの一施設として豊富な診療科を開設。健康管理センター、介護老人福祉施設を有し、予防、治療、福祉の三位一体の医療を提供する点も同院の強みだ。2024年に就任した牛嶋公生病院長は、久留米大学病院の婦人科科長を務め、婦人科腫瘍を専門とするスペシャリスト。同院の婦人科で診療を続けながら、病院運営にも尽力し、質の高い医療の提供に注力している。症例数の多い乳腺外科、女性の受診しやすさを考慮した女性総合診療部門、足のスポーツ外傷に特化した外来を含めた整形外科、良性腫瘍の低侵襲手術で多くの実績を誇る産婦人科など、特色ある診療科を備え、多職種で取り組むチーム医療にも力を注ぐ。同院の特徴や地域での役割について、穏やかな口調で親しみやすい人柄の牛嶋病院長に話を聞いた。(取材日2025年3月7日)
御院の特徴、地域における役割を教えてください。

当院は1946年に「福岡県健康保険第一病院」の名称で開設され、時代とともに変遷を重ねながら、長らく「久留米第一病院」の名前で親しまれてきました。2014年にJCHOの一施設となり「久留米総合病院」に名称を変更し現在に至ります。多彩な診療科と175床を有する総合病院ですが、町の中心地にあり、スムーズな院内紹介や同日に複数の診療科の受診が可能な小回りの利く病院です。近隣には久留米大学病院と聖マリア病院など大規模病院と3つの中規模病院があり、それらの病院との病病連携を確立し、二次救急医療の受け入れをはじめ市民のニーズに応える医療を提供しています。また、当院の常勤医は久留米大学医局の出身者や医局からの派遣であるため、大学との連携は非常にスムーズです。78年の歴史ある病院ですので、病院に勤務したOBの先生方が市内で開業されており病診連携が良好な点も当院の強みの一つです。
特徴のある診療科や力を入れている分野を教えてください。

乳腺外科は、前院長の田中眞紀医師の時代から数多くの症例数を扱ってきました。形成外科との連携による乳房再建や外来化学療法を中心とした化学療法の提供、治験コーディネーター(CRC)とともに新薬の開発にも取り組むなど、乳腺外科は非常に充実していますね。私の専門である産婦人科は、良性疾患の手術数の多さが特徴です。腫瘍の診断までは当院で行い、良性は当院で、悪性は久留米大学病院や聖マリア病院にお願いする形で住み分けができています。また、大きな子宮筋腫には開腹手術で対応しますが、低侵襲の腹腔鏡手術にも注力しているほか、高齢者に多い骨盤臓器脱は毎週手術を行っています。派遣で来られた先生方は、当院で骨盤臓器脱手術の研鑽を積まれているといっても過言ではないですね。女性医師によるマイクロ波子宮内膜アブレーションを積極的に行っているほか、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療にも力を入れています。
そのほかの診療科はいかがでしょう?

女性の受診に対するハードルを下げる目的で女性総合診療部門を設置しています。初診では女性医師が対応し、専門的な治療が必要となれば適切な診療科に院内紹介します。慢性疾患のケースでは、漢方に詳しい医師が保存的な内科的治療を継続していくこともあります。すべてのケースが女性総合診療部門で完結するわけではありませんが、女性が受診する窓口的役割として機能しています。そのほか、特徴的な診療科としては、整形外科が挙げられます。足部・足関節疾患、スポーツ医学を専門とする医師が担当する足のスポーツ外傷に特化した外来では、一般の方からアスリートまで幅広く診療し専門的な治療を提供しています。また、当院には各領域において専門知識を持つ看護師が多く、病院としてもコメディカルの方々のスキルアップを積極的に推進。こうしたスタッフたちによる多職種連携を進め、チームで診療に取り組んでいます。
先生が病院運営で大事にされていることは何でしょう?

2024年の病院長就任以来、病院全体の把握に努めています。積極的に各セクションに顔を出してスタッフとコミュニケーションを取り、全職員が同じ方向を向いて地域医療に貢献できる環境づくりが目標です。病院全体を把握し知識を得なければ、何かを打ち出してもうまくいかないと考えているので、話し合いながら進めることを重視し、当院の理念である「地域住民の多様なニーズに応え、安心・安全で心の通う医療を提供する」をめざしていきたいですね。私は今も一医師として診療を続けていますが、診療の際は患者さんとの信頼関係が成立するような対応や説明を心がけています。同じ診断名でも、患者さんの状況や背景、社会的な環境によって治療の選択肢は異なります。ただ「手術です」と伝えるのではなく、その方法や時期なども相談しながら決めていく。面談の中で信頼関係を築くことが大事だという考えは、病院運営においても日々の診療においても同じですね。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお聞かせください。

当院はクリニックと大学病院の中間的立ち位置の医療施設で、二次救急医療機関として年間数多くの救急搬送を受け入れ、久留米市の地域医療を担っています。介護老人福祉施設、健康診断を請け負う健康管理センターを有し、切れ目のない地域のトータルサポートを提供。CTやMRIなどの画像診断は、院内だけでなく、外部からも非常に多くのオーダーを受け入れています。読影を得意とする医師が複数人在籍しており、早くスムーズに手術を決めることができる体制は当院の強みの一つです。また、病院の取り組みとして2ヵ月に1度のペースで開催している市民公開講座では、子宮頸がんワクチンの話など身近なテーマでお話ししています。当院がJCHOの一施設となり、変革や進化を遂げた点や取り組みを知っていただくため、地域の祭りやイベントにも積極的に参加しながら、これからも地域に密着した質の高い医療を皆さんに提供し続けていきたいと思います。

牛嶋 公生 病院長
1983年久留米大学医学部卒業後、久留米大学産婦人科に入局。婦人科腫瘍を専門に、久留米大学病院や関連病院で研鑽を積む。1990年から米国・テキサス大学に留学。帰国後、久留米大学医学部講師、准教授、主任教授を歴任し久留米大学病院で婦人科疾患の診療に従事。2023年にJCHO久留米総合病院の病院長補佐、2024年より現職。学生時代からサッカーと野球を愛するスポーツマンでもある。趣味は城郭巡り。