早川 知宏 理事長

1979年に開業し、40年以上の長い歴史をもつ「東筑病院」。今もなお医師として第一線で外来診療も行っている早川知宏理事長がめざすのは、すべてのスタッフが安心して働け、そしてそれが患者の居心地の良さにつながる環境づくりだ。「40年の長きにわたり勤め続けられたのは、前理事長である小野亨雄先生が他の病院にはない“自由”を提供してくださったからです」と早川理事長は笑顔を見せる。海外の大使館でも医師として勤めていた小野前理事長は、仕事とプライベートを分け、スタッフにはメリハリのある生活を送ってほしいというスタンスだった。その想いを継いだ早川理事長は「1に職員満足、2に患者さま満足、3に地域満足と考えています。職員が笑顔で働ける環境でないと結果的に質の良い医療は提供できません。今も臨床に出ている私自身が働きやすいと感じるのだから、きっと皆もそう思っていることでしょう」と心からの笑顔を見せる。職員、患者、地域住民と、周辺地域に暮らすすべての人が医療、そして災害時の備えを十分に受け取れるよう体制づくりを継続している同院の魅力について、早川理事長に詳しく話を聞いた。（取材日2023年6月8日）

当院の開業は1979年。前理事長であり名誉理事長である小野亨雄先生と、この地域の開業医3人が立ち上げました。当時は重篤な患者を中心に診る三次救急病院しか入院施設がなく、かかりつけの患者さまの入院が可能な病院の必要性を強く感じたことが創立のきっかけであったそうです。それから約40年の時を経た現在の当院の立ち位置は、リハビリテーションを含めた回復期の治療をメインに据えたケアミックス病院（一つの病院の中に急性期医療と慢性期医療機能が並立している病院のこと）。主な患者さまは当然ながら地域の方で、風邪をはじめとした日々起こり得る体調不良に加え、急な症状がある場合も必ず対応します。一方で三次救急病院で手術を受け、その後自宅に帰るまでの間の入院や生活動作を取り戻すためのリハビリテーションにも注力しており、さらに当院の敷地内にはすぐに当院のスタッフが駆けつけられる住宅型有料老人ホームもあります。

血液検査、エックス線、エコー検査、内視鏡検査、MRI、CTはいずれも予約なしで即日検査可能で、さらに検査結果をお伝えするまでには約1時間というスピード感を基本としています。通常MRIやCTを受ける場合は数日から数週間待ち、結果が出るのにもまた1週間ほどがかかる。しかしその間、患者さまやそのご家族は不安を抱えたまま毎日を過ごされます。それがどんなに苦しくつらいことか、医師であるからこそ十分に理解できます。画像診断においては外部の画像センターと連携しているため、迅速な検査結果の返送が実現できています。そこに主治医の診断も加わるため、検査結果はダブルチェックになっています。これは医師・患者さま、双方にとって非常に安心なことです。その検査結果をもとに帰宅が可能なのか、当院で対応するのか、三次医療機関に即刻紹介すべきなのかを判断し、患者さまの道筋を示すのが当院の大きな役割なのです。

MRIを活用した人間ドック・脳ドックにも力を入れています。MRIであれば放射線による被ばくの心配もないですし、価格にも配慮しています。院内の検査技師や神経内科専門の医師もかなり優秀です。ありがたいことにこちらの予約にはかなり待ち時間が生じているため、一日の検査人数が増やせるよう、今年の夏に予約体制のバージョンアップを予定しています。

2018年の新築移転の際には、災害に強い設計で、地域の皆さまを十分サポートできる施設に、そして患者さまが過ごしやすい明るい院内にすることを念頭に置いて設計や設備を整えました。ここ北九州市にも小倉東断層があり、いつ地震の被害に見舞われるかわかりません。そのため非常時にすぐに水が使えるよう以前から敷地内にあった井戸を再活用し、さらに水のくみ上げなどにも必要な電力確保のためにガスを整備しました。非常時に当院を使うのは患者さまだけではなく地域の皆さまも含まれます。例えばスマートフォンなど充電のための電力、飲料水の提供、そして避難所としての機能。これらの構築には災害対策に詳しい施設管理課のスタッフの意見を取り入れています。また病室にはキャスターつきのタンスを導入。患者さまの荷物が一箇所にまとまるようになり、患者さまご本人、そしてスタッフも介助・看護がしやすい環境になっていると好評をいただいています。

リハビリテーションでは優秀なリハビリテーション専門の医師のもと、理学療法士等が患者さまに応じたメニューを組んで対応しています。当院では心臓カテーテル手術などはできませんが、適切な診断と、その診断結果に沿った適切な治療方針を迅速に立案・提案するという最大の強みがあります。患者さまのニーズに応じ、入院や住宅型有料老人ホームに加え、地域の開業医の先生方や訪問看護ステーションとも連携しながら、訪問診療のサポートにも今後さらに注力していくつもりです。患者さまやそのご家族にお伝えしたいのは「気軽に来て、私たちを頼ってほしい」、これに尽きます。そうすれば適切な検査と診断で、適切な治療方針を提案いたします。これからも産業医科大学病院をはじめとした各病院との連携、病診連携などを強固にしつつ、患者さまが利用しやすい病院であるよう工夫を重ねていくつもりです。