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学校法人産業医科大学 産業医科大学病院

(福岡県 北九州市八幡西区)

田中 文啓 病院長

最終更新日:2025/10/10

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高度急性期医療と地域医療を担う基幹病院

労働者の心身の健康管理と職場環境の改善、予防医学の発展を目的に、1979年に開院した「産業医科大学病院」。北九州の大学病院として、産業医養成に係る臨床教育に尽力する総合医療機関であるとともに、高度医療の提供・研修などを担う特定機能病院だ。2023年8月には高機能の医療を実現するハイブリッド手術室を備えた急性期診療棟を開設し、循環器内科のカテーテル治療や心臓血管外科のステントグラフト治療への対応が可能になった。また、産業医科大学病院の「働く人を守る病院」という使命から、治療だけでなく仕事復帰へのサポートにも注力。治療と就労の両立のための相談に応じていることも、同院の大きな特徴の一つだ。がん診療連携拠点病院としてがん診療の分野で多くの治療を行う中、低侵襲のロボット支援手術の導入により、手術後の早い復帰をめざす。2020年から同院をけん引する田中文啓病院長は、「全診療科で対応する高度急性期医療の役割を担うとともに、地域医療の面でも基幹病院としての機能を発揮できる体制の充実を図っています」と話す。明快なビジョンと確かな実行力で歩みを進める田中病院長に話を聞いた。(取材日2025年9月9日)

貴院の成り立ちと特徴について教えてください。

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産業医科大学は1978年に設立され、1979年に病院を開設して診療を開始しています。産業医科大学病院は、「働く人を守る」病院ですので、治療と併せて仕事復帰へのサポートも大切な使命です。開院から40年以上がたち手術室の老朽化が進んだため、2023年8月に高度な急性期医療を担う新しい病棟として、急性期診療棟を開設。新しい手術室は、ロボット支援手術に対応できる広さと設備を備えています。また、近年は高度な心臓血管治療が進歩し、例えば動脈瘤のように以前は手術が必要だった病気でも、カテーテルによる内科的治療で対応できるようになりました。新しい手術室は、カテーテル治療に十分対応できる設計です。また、最近のがん治療は非常に進歩し、副作用が少なくなっているため、仕事を続けながらがん治療に取り組めるようになりました。当院では、患者さんが治療と仕事を両立できるようサポートにも力を入れています。

どのように就労支援に取り組まれているのですか?

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当院では2018年に、治療と就労の両立を支援するための窓口を設けました。従来のがん手術は大きく切開する必要があり、職場復帰が難しいこともありました。しかし近年は内視鏡などを用いた低侵襲手術で、小さな傷で治療できるため、場合によっては1週間程度の休養で職場復帰も見込めます。以前は、がんとわかると治療に専念するために退職を選ばれる方も少なくありませんでしたが、今は治療と仕事の両立も十分に可能です。高度医療には費用もかかるため、患者さんは経済面で不安を抱えることがあります。その中で、働きながら治療を受けられることは精神面でも大きな支えとなり得ます。当院に多く在籍する産業医科大学の卒業生は、基本的に産業医学に精通しているので、その立場で患者さんに寄り添い、治療と就労の支援が可能です。希望される方には、必要に応じてお勤め先の産業医と連携し、患者さんの健康状態に対する問い合わせなどにも対応しています。

現在、特に注力している診療は何でしょう?

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急性期診療棟には17の手術室があり、そのうちの2室がハイブリッド手術室です。ハイブリッド手術室は、手術だけでなくCT検査や血管造影といった検査も同時に行える特別な手術室です。これによって循環器、心臓血管系の診療実績が急激に伸びています。循環器内科は、この10年で「構造的心疾患に対するカテーテル治療」が大きく進化し、各種の大動脈瘤や心臓弁膜症に対するカテーテル治療が普及してきています。手術中に血管造影が行えるようになったことで、当院でもこの手術に取り組めるようになり、地域医療への貢献がさらに広がりました。緊急手術においても、検査室から手術室への移動という時間的ロスがありません。また、内科では循環器と臨床遺伝を専門とする片岡雅晴先生が、心ファブリー病、心筋症を来す全⾝性アミロイドーシス、肺動脈性肺高血圧症などの指定難病の診療に取り組み、北九州医療圏の中で希少難病を診療する拠点となっています。

他の診療科についてはいかがでしょう。

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心臓血管外科は、産業医科大学病院の中でも比較的新しく設立された診療科です。全国的に心臓血管外科の医師が不足する中、産業医科大学の卒業生がこの分野に興味を持つきっかけとなったのがハイブリッド手術室です。ハイブリッド手術室の導入により、従来の開胸・開腹手術に比べて体への負担が小さいステントグラフト手術を行えるようになりました。心臓血管外科では西村陽介先生を中心に、虚血性心疾患、狭心症、心臓弁膜症、大動脈疾患に対する開胸、開腹手術やステントグラフト手術を行っています。大動脈疾患手術には大動脈瘤破裂や、急性大動脈解離などの救急疾患が一定数ありますが、当院は大動脈緊急症に対応する病院として、他の医療機関からの手術要請を受け入れています。また、CTを備えたハイブリッド手術室では、ミリ単位の小さながんや脳の動脈瘤などをCT画像で確認しながら手術を進めることができ、より精密な切除を可能にしています。

最後に今後の展望についてお聞かせください。

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急性期診療棟の完成により、これまで以上に高度な医療を提供できるようになりました。今後は、急性期以外の診療、例えば大量の抗がん剤を使った白血病治療のための無菌室など、施設全体をリニューアルしたいと考えています。また、当院はリウマチ内科や膠原病内科の患者さんが多く、リウマチに関する分子標的療法の領域にも精通しています。今、医療のレベルはゲノム医療や人工知能の導入、がん領域では免疫療法など、日進月歩で進化しています。当院は産業医学に貢献しながら、このような先端の医療にもしっかりと取り組んでいきたいと考えます。そして、最も重要なことは「自分や家族が病気になったときに受けたい医療」の実現と後進への継承です。これは私が医師になって入局した京都大学の呼吸器外科の理念であり、当院においても受け継いでいきたい考えです。今後も、自分の家族が受けたいと思える医療の提供に努めていきたいです。

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田中 文啓 病院長

1986年京都大学医学部卒業後、同大学呼吸器外科教室入局。天理よろづ相談所病院や松江赤十字病院をはじめ、複数の医療機関で研鑽。その後、京都大学呼吸器外科助手や講師を務め、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターに留学。2005年兵庫医科大学呼吸器外科助教授を経て、2010年に産業医科大学第2外科学教授に就任し、2020年4月より現職。医学博士。

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