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独立行政法人 労働者健康安全機構 九州労災病院

(福岡県 北九州市小倉南区)

三浦 裕正 院長

最終更新日:2022/06/28

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現代の疾病構造に対応し患者本位の医療を

北九州および京築医療圏の急性期医療を担う「九州労災病院」は1949年に設立された労災病院だ。約70年にわたって被災労働者への医療提供を行い、1961年からはリハビリテーション専門の部門を設置して患者の早期職場復帰に向けた支援に尽力してきた。2020年に地域がん診療連携拠点病院に指定。労働者のメンタルヘルスケア、石綿(アスベスト)による疾病、治療就労両立支援事業など労災病院としての機能を持ちながら、骨折をはじめとした外傷、骨・関節疾患、がんや脳血管障害、生活習慣病など一般的な診療にも広く対応し、地域の総合病院として存在感を強めている。2022年4月に院長に就任した三浦裕正院長は「国の対策強化に加え、職場環境や労働者の意識の向上によって年々労働災害は減っている。今後は時代とともに変化する疾病構造に対応しながら、より患者に寄り添った医療を提供していきたい」と話している。ドローンを使った空撮を用いるなどして病院のPRにも取り組みたいと意気込む三浦院長に、病院の歴史や特徴、今後の課題などについて詳しく話を聞いた。(取材日2022年5月25日)

労災病院が担う役割や病院の歴史について教えてください。

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当院は北九州医療圏の南東に位置する急性期病院です。労働災害によるケガや疾患の治療を目的として1949年に設立され、医療を提供してきました。設立当時から社会構造が変わり、労働環境の改善や労働者自身の意識の高まりもあって、労働災害自体は減少しています。そのため時代とともに変化する疾病構造に応じて幅広く対応できるよう体制を整備してきましたので、現在は労働災害だけに特化した病院ではなく、幅広い医療を提供する総合病院として認知していただきたいと思っています。とはいえ労災が皆無というわけではありません。増加傾向にあるメンタルヘルスケアには当然取り組んでいかなければなりませんし、アスベストによる疾患の治療のほか、円滑な職場復帰に向けての支援や治療を受けながらの就労を支援する治療就労両立支援などを継続し、労災病院としての役割もしっかり果たしていかなければならないと考えています。

こちらでは整形外科の診療が中心だそうですね。

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労働災害においては切断や骨折が多かったという背景から、整形外科中心の病院となっています。現在は整形外科の医師が25人在籍しています。手術の大部分も整形外科関連が占めており、中でも股関節や膝関節の人工関節置換術については特に多く行っています。私自身も整形外科医ですので、病院経営だけではなく研鑽を重ねてきた人工関節の手術にも関わっていきたいと思っています。そういった当院の特徴でもある整形外科中心の医療に伴い、1961年にリハビリテーション専門の部門を設立し機能回復の面も充実させてきました。人工関節の治療については術後2、3日後から歩行訓練を始めています。今では理学療法、作業療法はもちろんのこと、義肢装具の製作に至る部門まで広く設備を整え、整形外科疾患をはじめ、中枢系神経疾患や循環器系の術後リハビリテーション、在宅リハビリテーションなど、さまざまなリハビリのニーズに対応しています。

脳卒中やがん治療など急性期医療にも注力されていますね。

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脳神経部門としては、脳神経外科、脳血管内科、脳神経内科、放射線診断科、リハビリテーション科と脳疾患に関する専門家から構成される勤労者脳神経センターを設置しています。脳卒中をはじめ難治性神経疾患まで専門的治療が可能です。また急性期医療を担う病院として、がん治療は私たちの使命でもあります。そのため従来の内科的治療や外科的治療に加えて、放射線治療機器を導入している他、外来化学療法室を充実させるなど診療体制を拡充しています。2020年には地域がん診療連携拠点病院となり、乳がん治療においては女性医師も増えましたし、今後はスタッフの拡充にも努めていきます。ちなみに当院の一つのユニークな点として、高圧酸素治療部門が挙げられます。同時に8人の治療が可能な大型の高圧酸素患者治療装置を備えています。

地域医療への関わり方についてお聞かせください。

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地域の医療を担うにあたっては、慢性疾患である生活習慣病治療には注力していきたいと考えています。それに当院は整形外科中心の病院ですから、私たちはロコモティブシンドロームにも着目しなければなりません。初期段階の予防活動に積極的に介入するわけではありませんが、ロコモや骨粗しょう症などの延長線上に変形性の関節症や大腿骨近位部骨折などがあると考えています。そこは整形外科の得意分野。特に大腿骨骨折に関しては、手術までに1週間以上経過してしまうと合併症が起きるリスクも高まりますし、寝たきりや血栓症のリスクも考えられます。当院では48時間以内の手術を推奨しているのですが、積極的に早期に介入すれば術後の経過も良くなります。ただし高齢であれば心臓病などほかの疾患があるケースが多いので、内科と連携し迅速に評価をしていく必要があります。そのため当院では内科疾患にも幅広く対応できるように体制を組んでいます。

最後に今後の展望やめざす医療についてお話しください。

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これまでの歴史に満足することなく、さらに患者さんへのサービスを充実させ、患者さんに寄り添った医療を提供していくことが目標です。労災病院というとどうしても受診のハードルが高いので、より地域に開かれた病院になるためには情報発信が欠かせませんし、私も趣味のドローンによる空撮や天体写真を通じて広報活動に協力していきたいですね。一方で当院は臨床研修指定病院でもありますので、人材の交流・人材の育成という面で大学病院などとの連携は力を入れたいポイントの一つ。それに地域の急性期医療を担う病院としては、クリニックとの連携も不可欠です。患者さんは、地域のかかりつけの先生方の手術を当院で受けていただくことも可能になっていますが、まだまだ件数は少なく真の意味での連携は今後の課題ですね。そうした病病・病診連携を強めて、労働者だけではなく広く地域の皆さんに親しまれるような病院にしていきたいと思います。

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三浦 裕正 院長

1982年に九州大学医学部を卒業後、九州大学整形外科に入局。アメリカのデポールバイオメカニクス研究所への留学を経て、九州大学大学院医学研究院整形外科准教授、愛媛大学医学系研究科整形外科教授、同大医学部附属病院長、同大副学長などを歴任し、2022年4月から九州労災病院で院長を務める。愛媛大学時代にはラジオ番組での広報活動にも精力的に取り組んだ。

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