一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院
(福岡県 北九州市小倉北区)
腰地 孝昭 院長
最終更新日:2023/07/11
循環器疾患を中心に先端医療を提供する
1916年に京都大学助教授を退官した副島豫四郎氏が、小倉市宝町にあった外科病院を母体として創立。内科や外科など5つの診療科を備えた病院としてその歴史をスタートさせた「小倉記念病院」は、100余年にわたり地域住民に限らず広く医療を提供してきた。現在は心臓血管病センター、脳卒中センターを中心に全24科を標榜し、北部九州エリアにおける急性期医療の一翼を担っている。特に1970年代からは循環器診療に特化した病院として知られ、心臓だけではなく血管、脳を含めたさまざまな病気の診療に対応。また前立腺がんをはじめ、肺がんや肝臓がん、心臓の手術の一部で手術支援ロボットを活用しているほか、ハイブリッド手術室を複数備えるなど新しい医療を積極的に導入している。2023年4月には心臓血管外科医として福井大学医学部教授などを務めた腰地孝昭先生が院長に就任。「これからも循環器系の診療を中心とした先進の医療で、地域の皆さんに貢献していきたい」と意気込む腰地先生に、地域で果たすべき役割や特徴的な診療、今後の展望などについて詳しく話を聞いた。(取材日2023年5月24日)
貴院が地域に求められている役割についてお聞かせください。
当院は約100年前に設立され、現在の浅野地区に新築移転をしてから十数年がたちました。1970年代頃からは循環器系の疾患に強い病院として知られ、九州だけではなく中国・四国など遠方からも患者さんがいらっしゃっていたと聞いています。そこには心臓カテーテル治療で知られる延吉正清先生、私の恩師でもある伴敏彦先生という2人の偉大な先達がいらっしゃったことが大きく影響しており、循環器疾患の超高度急性期医療を担うという当院の役割は現在にまで脈々と受け継がれています。また当院は産科や小児科を備えていないことから総合病院という枠組みにはあてはまりません。しかしながら外科や消化器内科などの診療科においてはたくさんの患者さんに来ていただいていますし、今後は循環器医療を中心に据えながらも、第2、第3の柱をつくり時代の要請に応えていく必要があると感じています。
診療の柱となっている循環器医療の特徴を教えてください。
循環器医療では内科と外科両面の特徴があります。まず循環器内科としてはカテーテル治療が中心で、狭心症や急性心筋梗塞による冠状動脈の狭窄を拡張するPCI(経皮的冠動脈インターベンション)はもちろん、不整脈に対するアブレーション治療、人工心臓弁を留置するTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)など、先進的な治療を行うことが可能です。実際の診療以外にも、カテーテル治療を導入する全国の病院に対して当院の医師を指導者として派遣するケースが多々ありますし、1984年からは小倉ライブと称してカテーテル治療の動画をさまざまな病院に共有し知識と技術の普及にも努めています。双璧をなす心臓外科では幅広い心臓・大血管手術に対応しているほか、手術支援ロボットを活用した低侵襲な小切開手術など取り組んでおり、先駆的で高度な医療を安全に提供できるよう研鑽を重ねています。
ほかにも注力されている診療科についてお話を聞かせてください。
循環器は狭義では心臓というイメージですが、脳血管の手術を行う脳神経外科も一部は循環器に含まれます。当院は九州でも早くに脳神経外科を開設した歴史もありますから、そういった意味においても脳神経外科は当院の特徴の一つと言えるでしょう。患者さんが最初に訪れる診療科である内科についても、今後強化していきたいところです。また消化器内科、呼吸器内科などの部門が強化されることによって、手術が必要な患者さんを早期に見つけやすくなります。そのほか特殊な部門として腎センターが挙げられます。腎臓病治療において大きな役割を果たすのが、透析による治療です。腎センターでは一般的な血管透析と比べて負担の少ない腹膜透析にも対応しているため、多くの患者さんの治療にあたっています。ここは当院の一つのボリュームゾーンとなっていますので、今後の大きな柱になってくるのではないかと思います。
手術支援ロボットの追加導入などを検討されていると伺いました。
手術支援ロボットを活用した小切開手術は泌尿器科の前立腺がん手術から始まり、現在では全国各地で行われるようになりました。当院でも手術支援ロボットを導入していますが、泌尿器科のみならず、呼吸器、消化器、循環器と適用する領域も広がっています。さらに患者さんのニーズに応える、より多くの患者さんに低侵襲な治療を提供するという目的から、ロボットの追加導入を計画しています。大学病院をはじめ、さまざまな病院でロボット部門が立ち上げられており、これから先、この動きはさらに加速していくのではないかと感じています。ですから地域の急性期医療を担う当院においても、安全性を保ちながら症例数を増やし、設備投資を行うとともに使用する医師の技術をアップさせていくことが重要です。そのサポートを行うのは病院長である私の使命。もちろん時間も費用もかかりますが、新しい医療を多くの患者さんに享受してもらうためには必要不可欠です。
最後に今後の展望と読者の皆さんにメッセージをお願いします。
病院はすべてが同じ医療を提供するものではなく、それぞれの特徴があって良いというのが私の考えです。どのような病気であっても満遍なく一定のレベルで治療することができる総合病院であったり、急性期医療に特化した病院であったり、あるいは療養型の病院など、地域の医療基盤を維持するためにはさまざまな力が必要です。そうした中、やはり当院は今後も循環器疾患の治療を中心とした先進的な医療で、皆さんに貢献していくべき病院だと思います。病院自体は2つのビルから成り立ちますが、一つは総合病棟、そしてもう一つは心臓血管専用の病棟になっているので、循環器を軸とした病院であるということは事実です。ですからニーズに応えるために内科や外科など各診療科を強化することはもちろんではありますが、循環器領域に強いという個性的な尖った病院として皆さんの期待に応えられるよう努力していきたいと思います。
腰地 孝昭 院長
1984年に京都大学医学部を卒業後、心臓血管外科に入局。松江赤十字病院、熊本中央病院などを経て、福井大学医学部教授、同大学医学部附属病院院長を務める。同院長時代には新型コロナウイルス感染症対策に奔走。2023年4月から小倉記念病院院長。