社会医療法人共愛会 戸畑共立病院
(福岡県 北九州市戸畑区)
今村 鉄男 院長
最終更新日:2024/09/13
救急医療とがん診療を柱に地域医療へ貢献
明治時代末期に開院し100年以上にわたって地域医療に寄与してきた「戸畑共立病院」。住民のかかりつけ内科の役割を経て、現在は内科や外科の外来に加え、救急医療とがん診療を柱にした特徴ある病院となっている。特にがんの診療においては地域がん診療連携拠点病院に指定され、手術、抗がん剤、放射線治療を組み合わせた集学的治療が可能。温熱療法や高気圧酸素治療にも取り組んでいるほか、2024年秋には手術支援ロボットを導入し低侵襲手術にも注力するなど、さまざまなニーズに対応している。そのため、戸畑医療圏だけではなく、他県からの患者も少なくないという。病院を率いるのは、外科医としてキャリアを重ねてきた今村鉄男院長。「北九州エリアは高度急性期病院のすみ分けができている地域。そういった面から見れば、非常に病院同士、病院とクリニックの連携がとれている。だからこそ高齢者の救急医療やがん診療といった私たちの役割をしっかりと担っていくことが重要」と話す今村院長に、病院の理念や診療の特徴などについてじっくりと話してもらった。(取材日2024年7月17日)
歴史ある病院ですが、どのような想いで運営されていますか?
私自身が入職したのが昭和の終わりの頃。当時は内科中心の病院で医師も4、5人ほどしかいない状態でした。そこから核となる診療を確立させるため、救急医療に本腰を入れたと記憶しています。また病院の移転に合わせてがん治療センターを併設し、がん診療にも注力できる環境を整えました。そして近年では新型コロナウイルス感染症との戦いを乗り越え、改めて地域住民のためにどんなことができているのか振り返るようになりました。当院の医療圏は戸畑区は当然のことながら、加えて若松区の東側、八幡東区の南側、小倉北区の南側にあたります。北九州の医療情勢から見ると周囲に大きな病院がありますから、いま一度、地域住民のために私たちができることを考え、充実させていきたいという想いがあります。当院の救急医療、がん診療といった特徴を大いに生かしながら、パラメディカルスタッフも含めた全スタッフで地域医療に貢献していきたいと考えています。
地域医療への貢献は病院の理念でもありますね。
当院では「地域の声に応える医療・共に創る、挑む、動く」という基本理念を掲げています。これは私が院長になってから2020 年に刷新したものですが、もとの理念にもあった地域医療への貢献については大切にしているところです。良い治療を行うためには、私たち医療スタッフだけではなく、患者さん、そしてそのご家族すべてが、ともに医療を創り、挑み、動かなければならないと感じています。また地域住民のニーズに応えることで、病院としてのレベルを高めることにつながるのではないかと期待しています。地域から選ばれる病院であるためには、患者さんと家族が中心となる医療でなければなりませんし、また断らない救急医療、がん診療、高度医療などの実績を積み重ねることも必要でしょう。そのためにも多職種、多施設間の連携を強化し、地域医療支援病院として一丸となって動いていく必要性があると感じています。
地域医療支援病院としての大切な役割とは何でしょうか。
北九州市の高齢化率は2022年の時点では31.2%と政令指定都市の中でも高く、戸畑区は31.8%と非常に高い数値となっています。また高台に住宅地があるという特性から、整形外科疾患などの患者さんでは在宅復帰が困難な地域もあり、早期のリハビリテーションや環境整備を欠かすことができません。そういった意味からも救急医療、地域連携へのニーズは高まっているでしょう。そうした中、当院では365日24時間切れ目のない救急医療を展開し、外科と内科の医師が常駐しています。ご高齢の方が多く外傷や感染症による救急搬送が中心となっていますが、早期の帰宅ができるよう尽力しているところです。救急医療体制の整備だけではなく、地域のクリニックとの連携を強固にすることで、しっかりと自宅に帰るためのサポートに取り組んでいます。特に地域の皆さんがお困りの際には「365日断らない病院」として、その役割を果たしていきたいと思います。
がん診療については県外からの患者さんも少なくないそうですが。
当院は2019年に地域がん診療連携拠点病院に指定され、手術、抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせた集学的な治療が提供できるよう、がん治療センターが中心となった診療に取り組んでいます。さまざまな放射線治療装置やAIを搭載したMRI装置、低線量の検査機器をそろえているほか、PET-CT検査が行えるようハード面を充実させていますが、2024年秋には手術支援ロボットを導入し消化器がんの手術から使用していきます。地域のニーズに応えるというのが私たちの理念ですから、手術支援ロボットを活用した低侵襲な手術も今後充実させていく必要があると考えています。そのほか温熱療法のハイパーサーミア、高気圧酸素治療にも広く対応していることから、地域住民だけではなく、県外からも診療を希望する方がいらっしゃいます。当院のがん診療が必要とされているのだなと実感しています。
最後に今後の展望を含め皆さんにメッセージをお願いします。
私自身、外科医として多くの手術に携わってきました。当時はまだまだ胃がんが多く、消化器がんの治療に注力してきましたが、何より患者さんが元気になって帰っていただくことが医師としての喜びです。院長となった現在でも患者さんを守るという気持ちが強く、スタッフ全員が優しさを持って診療に向き合っていければうれしいですね。今後も救急医療とがん診療という2つの柱を中心に、少しずつ若い世代にバトンタッチしていけるよう将来を見据えることも院長としての務めの一つ。当院には開院当初は内科の病院として診療に取り組み、専門性の高い医療で地域の皆さんから認められてきた歴史があります。積み重ねてきた信頼を裏切ることがないよう、当院だけではなく地域のクリニック、基幹病院など医療関係者とともに良い環境をつくっていけるよう尽力していきます。
今村 鉄男 院長
1977年久留米大学医学部卒業。久留米大学病院の外科に入職し、一般外科の領域で活躍。胃がんや大腸がんなど消化器がんの治療にも尽力し、1989年に戸畑共立病院へ。外科領域の発展に貢献し、2018年より現職。