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公益社団法人いちょうの樹 メンタルホスピタル鹿児島

(鹿児島県 鹿児島市)

新里 研吾 院長

最終更新日:2026/01/19

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多職種連携で社会復帰まで患者と家族を支援

鹿児島市の文教地区。アリーナを備えた広い公園の向かいに立つ「メンタルホスピタル鹿児島」。昭和の時代から90年以上の歴史を持つ精神科の病院で、思春期から老年期まで幅広い年齢層を対象に、うつ病や統合失調症、認知症などの診療とケアを行い、社会復帰までを支援している。一方で、心神喪失者等医療観察法での入院治療が終了した後や通院処遇と判断されたケースの通院治療を行う指定通院医療機関としての役割も担う。新里研吾院長は、「患者さんの社会復帰のためには医師だけでなく、看護師やリハビリテーション・事務部門スタッフら院内スタッフに加え、訪問看護師、保健師など地域の方々との協力が必要不可欠です」とチーム医療の大切さを語る。精神科単科の病院は近寄り難いといったイメージが先行しがちだが、地域からのニーズも高く、親しまれる存在だ。「開かれた病院」をめざし、地域のコミュニティー活動にも積極的に参加している。そんな同院の特徴や役割についてわかりやすく教えてもらった。(取材日2025年11月20日)

病院の成り立ちや役割について教えてください。

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当院は1930年に鹿児島脳病院として発足しました。地域に根差した歴史と伝統のある精神科病院で、今も「脳病院さん」と呼ばれることもありますね。2014年公益社団法人となり、新病棟を建設、急性期治療病棟、認知症治療病棟をスタートさせてきました。現在はデイケア、デイナイトケア、グループホーム、就労支援など社会復帰に向けた包括的な支援を行っています。2026年には新病棟が開棟する予定で、既存の病棟と渡り廊下でつながります。敷地内に道路があり、雨の日には傘を差して移動していますが、新病棟ができて動線が改善されれば、職員同士の情報交換、患者さんと過ごす時間がより増えると思います。当院は鹿児島中央駅から車で10分ほど、バス停も目の前で、市内各地から患者さんが来られています。皆さんのニーズに応え、思春期の方から老年期の方まで幅広く、さまざまな疾患に対応することが当院の役割と考えています。

他にも地域における役割があれば教えてください。

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2013年10月より毎月、離島である下甑島に診療のお手伝いに行き、へき地医療のお手伝いをさせていただいています。また身体疾患と精神疾患が併存するコンサルテーションリエゾン精神医学のため、米盛病院への対診も行っています。ニュースなどで他害行為を起こした人の責任能力の有無が問われるという話を耳にしたことがありますか。裁判で責任能力が喪失していると判断された人は自宅で過ごすわけではなく、心神喪失者等医療観察法により、まずは社会復帰をめざして指定入院医療機関に入院します。そこで手厚いマンパワーによる治療を受け、退院が可能と裁判所が判断した場合は社会復帰調整官のフォローを受けつつ通院治療を続けることとなります。その通院治療に対応する指定通院医療機関の一つに当院が指定されています。当院は公益社団法人ですので、患者さんのためであることはもちろん、社会のため、地域のための役割も担っています。

患者さんについて教えてください。

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思春期の方は不登校、家庭内暴力、希死念慮など、成人の方はうつ病や統合失調症、睡眠障害などさまざまで、高齢の方は認知機能障害で来院されることが多いです。また精神症状が急激に悪化し、警察や救急隊が介入して入院に至るケースも多くあります。急激に悪化した方を受け入れる精神科の急性期病棟がある施設は県内でも多くありません。当院ではそういった方も受け入れ、専従医師による治療を行っています。一方で、統合失調症が長期、慢性化した場合には、治療抵抗性統合失調症という判断になることがあります。治療抵抗性統合失調症では、クロザピンという薬剤による治療も行っています。この治療は対応できる施設が限られていますので、他の病院から依頼を受けているのも当院の特徴の一つといえます。クロザピンの治療は投与スケジュールや副作用を調べるための採血スケジュールが決められているため、ご家族とよく話し合い、了解を得てから行います。

地域やご家族、さまざまな連携が大切なのですね。

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精神科では医療保護入院という、本人ではなくご家族等の同意で入院する場合もあるため、ご家族との緊密な連携は欠かせません。入院中は定期的に話し合いの場を持ちます。また患者さんの治療後、退院後の在宅生活や就労までの道筋など社会復帰をめざすために大切になるのは、多職種の連携です。医師だけですべてできるものではありません。精神保健福祉士、リハビリスタッフ、看護師、訪問看護スタッフ、デイケアスタッフ、事務スタッフだけでなく、地域の保健師、他院のスタッフなど、院内外の多職種で協力するチーム医療が非常に重要になるのです。当院でのカンファレンスでは医師から一方的に意見を言うのではなく、看護師やリハビリスタッフからの意見を尊重しています。それぞれの意見を取り入れ、治療方針や目標を決めていきます。当院ではすぐに意見交換できるよう、医師もリハビリスタッフも、事務、経理も同じフロアに机を並べて働いています。

今後についてお聞かせください。

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これからも社会貢献、地域医療貢献のため、近隣の医療機関や地域の皆さんとのつながりを大切にしていく所存です。当院では定期的に無料の相談会を開催していますし、毎月第1金曜日には有志のスタッフが病院周辺を掃除しています。地域にある足を運びやすい病院として認知していただき、今後20年30年先にもっと当院が地域に溶け込み、地域から求められるように力を尽くしていきます。少しでも「つらい」「眠れない」など感じたら受診していただければと思います。また離島である下甑島の診療も、地域医療の支援のために続けていきたいです。さらには人材育成にも注力しています。精神科には強制入院に関わる国家資格「精神保健指定医」があります。当院にも若手医師が在籍していて、資格取得をめざす医師の教育、支援もわれわれの使命だと考えています。医師だけでなく、看護スタッフをはじめとした医療スタッフの資格取得のサポートも行っていきたいです。

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新里 研吾 院長

1994年鹿児島大学医学部卒業、同大学第2外科入局。外科にて6年間の研鑽を積んだ後、自身の父が精神科医であったことから精神科医療への関心を深め、2000年鹿児島大学精神神経科に入局。鹿児島大学病院や鹿児島県立姶良病院にて一般精神科に加え、精神科救急、司法精神医学、災害精神医学などを学ぶ。2021年メンタルホスピタル鹿児島着任、2024年7月より現職。

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