社会医療法人 愛仁会 植村病院
(鹿児島県 鹿児島市)
川名 英世 病院長
最終更新日:2024/12/25
ハートフルな診療で地域を支える病院
終戦間もない1945年頃、軍医であった植村茂先生が創設し1960年5月に医療法人として開業した「植村病院」。2011年10月には社会医療法人に移行。創設以来、「24時間、365日診療」という基本理念を掲げ、公益性の高い医療の担い手として地域に貢献し続ける病院だ。「新型コロナウイルス感染症の流行下において1度だけ外来を閉じた以外は、基本理念を79年間守り続けています」と話すのは、2021年から同院を統括する川名英世病院長。救急科をはじめ、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、心臓血管外科、整形外科を標榜し、97床の病床を有する同院を支える原動力は、コメディカルの優秀さだと川名病院長は力を込める。救急告示医療機関、在宅療養支援病院としての役割を担うほか、関連施設の特別養護老人ホーム泰山荘と通所授産施設との連携にも取り組む同院。ハートフル医療をコンセプトに、医療を通じた社会貢献、心のこもった医療、介護、看護、福祉を提供する同院の特徴や診療方針、地域における在り方について、気さくな人柄が印象的な川名病院長に話を聞いた。(取材日2024年10月22日)
病院の成り立ちや理念について教えてください。
軍医であり当院の創設者である植村茂先生は、終戦を熊本で迎えられ、奥さまと一緒に故郷の鹿児島に戻られて「植村医院」を開院されました。開院当初から「患者さんはいつ病気になるかわからない、病院はずっと開けておかなければならない」という考えのもと、24時間365日診療を掲げ、現在もその基本理念が受け継がれています。1960年5月には医療法人となり、その後、2011年10月には社会医療法人へ移行しました。2代目理事長である創始者の奥さまが助産師であったことから、来院される方の中にはこの病院で生まれたという人もいらっしゃいます。そういう古い歴史を持つ病院です。私は1993年に大学より派遣され一度勤めていた経験があり、そのご縁もあって1999年に当院に着任しました。新型コロナウイルス感染症に対応する病棟と発熱の外来チームに参加し、翌年の2021年から病院長を務めています。
どのような特徴を持つ病院なのですか?
先ほどもお話ししたように24時間365日休まず診るということが、当院の診療の柱になっており、それは開院以来まったく変わっていません。理事長は日本呼吸器学会呼吸器専門医であることから、毎週水曜日の18時から21時は夜間の呼吸器の外来を設けており、薬が必要な喘息や肺気腫の患者さんの「昼間に受診できない」「専門家に診てもらいたい」というニーズに対応しています。また、在宅医療には以前から取り組んでおり、山奥で一人暮らしをされている方や病院から10キロ以上離れたところで寝たきりになられた方などに対し、訪問診療のほか、最近では訪問リハビリテーションもスタートしました。私は呼吸器外科を専門に心臓と肺の疾患を診させていただいており、整形外科は2024年の8月から内村暢幸先生に来ていただき、充実した診療体制を整えています。そんな当院を支えているのは、何よりもコメディカルの能力の高さだと思っています。
コメディカルの方々の力が大きいのですね。
僕はさまざまな病院で診療に携わってきましたが、当院の看護師や理学療法士などコメディカルの能力は素晴らしいです。例えば、必要としていることは、こちらが言う前に準備されていて、まるで予知能力があるのではないかと思うほど(笑)。先代理事長の教育が行き届いていたことが実を結んでおり、整形外科の手術にもすぐに順応してサポートしてくれています。新型コロナウイルス感染症の流行下においては、発熱の外来の設置や動線の確保、必要になる防護服などの情報を自分たちで収集し、1週間で対応可能な状態にしてくれました。また、診療放射線技師もエックス線検査で「おかしい」と感じたら医師に伝えるようにしているなど、皆、優秀です。それによって医師も安心して診療に取り組めます。当院には勉強したいという志の高い人が多く、別の職種から准看護師、看護師へとステップアップした人もいて、彼らが中心となり当院の大きな力になってくれています。
地域にとってどのような病院でありたいとお考えですか?
地域の方々には、当院を便利に使ってほしいと考えています。小規模な病院ではありますが、24時間365日体制で診療していますし、医師も複数在籍しています。待ち時間が1時間を超えることはほとんどありませんし、診療をする、お薬を処方する、おかしいと思うところがあれば採血やエックス線、CT検査、MRI検査も可能です。近隣のクリニックの先生方の中には、例えば、認知症の高齢者が肺炎や間質性肺炎、心不全を患っているが、診てくれる病院がないという状況もあると思います。当院では、そのような患者さんも受け入れ、元気になられたら、またクリニックの先生にお願いする病診連携にも注力しています。クリニックの先生方とは、医師会などで「顔の見えるお付き合い」をさせていただき、信頼関係を構築しています。患者さんやクリニックの先生方が困っておられること、ある意味ニッチな状況で、当院を便利に使っていただけたらありがたいですね。
今後の展望についてお聞かせください。
機器や体制を整えていますから医師に限らず看護師、事務員などの人員を増やしていく予定です。今後も救急や発熱医療のスペシャリストとして救急医療に取り組んでいきたいです。また、当院のスタッフはホスピタリティーが高く、非常に優秀な対応をしてくれているので、患者さんには今後も安心して受診していただきたいと思います。これからも先代理事長がつくり上げてくれた当院の伝統を守っていきたいです。患者さんに対してだけでなく、先代、先々代の理事長は、当院の医療を支えてくれている業者の方々にも手厚い対応をされていました。また、当院は特別養護老人ホームと通所授産施設という2つの関連施設を有していることから、知的障害や身体的障害のある患者さんや高齢者への対応についても深く理解しています。これからも患者さんをはじめ、医療に関わる業者の方々など、当院を訪れるすべての方に笑顔で帰っていただけるよう尽力していきたいと思います。
川名 英世 病院長
1985年旭川大学卒業後、東京女子医科大学病院胸部外科に入局。その後、福島県、栃木県、長野県、千葉県、東京都内などの関連病院、医療施設で研鑽。1999年まで医局員を務め同年当院に着任し2021年より病院長に就任。鹿児島女子高等学校の校医を務める。日本呼吸器学会呼吸器専門医。