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独立行政法人国立病院機構 米子医療センター

(鳥取県 米子市)

久留 一郎 病院長

最終更新日:2024/07/22

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病院全体で協働し、安全で質の高い医療を

「地域の命を支える」を基本理念に掲げる「米子医療センター」。鳥取県西部地域の基幹病院として、良質な医療を患者に提供し続けられる体制を維持し、さらに発展させることをめざす。その実現のために、「強くて暖かくて優しい病院を目指します」を行動規範に置き、専門的医療機能の充実、地域医療への貢献、業務運営の効率化、教育・研修・研究機能の強化、の4つの基本方針を推進している。「患者さんに良くなってほしい、医療や看護に満足してほしいという思いで病院を運営しています」 と語るのは久留(ひさとめ)一郎病院長。その実現のため、毎週病棟を回って職員の声に耳を傾け、地域のクリニックにも年2回訪問して要望を聞くなど、現場のニーズをくみ取る努力を欠かさない。26の診療科、病床数270床を擁する病院全体でチームワークを発揮し、患者中心の質の高い医療を充実させたいとの思いを持つ久留病院長に、具体的にどのような取り組みで地域医療を担っているのか、詳しく話を聞いた。(取材日2024年6月3日)

まず、こちらの病院の特徴を教えてください。

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急性期医療を中心に、鳥取県西部地域を支える基幹病院です。かかりつけ医からの紹介で受診いただく「紹介受診重点医療機関」であり、特に「都道府県が策定する医療計画」に基づいて、がんをはじめ、心筋梗塞などの心血管疾患、糖尿病といった疾病と、救急医療、災害時医療、新興感染症発生・まん延時の医療、小児医療の事業を軸に置いています。例えば救急医療では、現在、県西部で夜間・休日に小児科救急に対応できる病院は3つという状況の中、そのうちの1病院として、成人のみならず小児の二次救急も担っています。また、がんや腎疾患、血液疾患などを診る各診療科で、チームによる高い質と安全性を兼ね備えた専門的な治療に努めていることも特徴でしょう。地域の医療を守るため、「地域医療支援病院」の役目を果たす他、鳥取大学医学部と連携しながら学生の受け入れや卒前・卒後教育研修病院としての機能も発揮しています。

注力されている分野の一つ、がん医療について教えてください。

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専門性の高いがん診療を提供できる病院として、地域にがん難民をつくらないことがミッションです。肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん、膵臓がんといった悪性疾患に標準的治療を提供するとともに、手術や化学療法、放射線治療などの治療を組み合わせた「集学的医療」を推進しています。中でも、乳がんや膵臓がんは手術を得意とする専門の医師が在籍し、外科的治療を積極的に行えることは強みですね。また年々、高度専門化が進む化学療法や造血幹細胞移植療法では専門部門を擁し、薬剤師が常駐する体制も整えました。さらに、県内でも少ない緩和ケア病棟があることも特徴です。緩和ケアはがんによる身体的・精神的苦痛を和らげるために行うものですから、治療と並行して早期から考えることが大切でしょう。当院では大学病院などからも患者さんを受け入れると同時に、地域のかかりつけ医と連携し、在宅での緩和ケアや最期は病院でというご要望にも応えています。

他に力を入れているのはどんな分野ですか?

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一つは腎疾患医療です。腎疾患治療部門を核として、「血液透析医療」「透析と腎臓の専門の医師の養成」「腎疾患に対する相談・支援」の3本柱で取り組んでいます。腎移植の相談に対応する移植情報部門も設けるなど、多角的な面から体制を充実させているところです。また、血液疾患医療も注力する分野ですね。先ほどもふれた造血幹細胞移植に関しては、骨髄、末梢血、臍帯血から採取した造血幹細胞の移植を毎年実施しております。院内に無菌室を備え、24床を無菌ユニット化するなど移植後に必要な設備・体制を整えており、鳥取県西部のみならず県全体の造血幹細胞移植の一翼を当院が担っていると自負するところです。それから、整形外科では骨折を中心に多くの外傷患者さんを救急で受け入れています。特に手外科に専門的に対応できるのは当院と大学病院だけではないでしょうか。緊急の縫合が求められるケースにも手の外傷が専門の医師による対応が可能です。

基幹病院の院長として、地域医療への思いをお聞かせください。

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地域医療を支えることは私たちの使命です。高齢化により、先述した整形外科の骨折に加え、泌尿器科の尿路感染症、呼吸器科の誤嚥性肺炎、循環器科の心不全という4領域の疾患の高齢患者さんがとりわけ多い状況ですが、入院中は介護的なケアまで目配りした看護に取り組み、フレイルに配慮しながら患者さんを地域にお返しできたらと思っています。患者さんが自宅や施設に戻られる際は、当院の地域医療連携室を軸に高次医療機関やクリニック、介護施設とも連携し、住み慣れた場所で暮らし続けられるようにサポートしています。鳥取県西部医師会や行政機関との連携も取り、多様な連携先とともに地域医療を支えていきたいですね。また、当院ではできる限り救急を受け入れるよう日々努力を重ねています。簡単なことではありませんが、地域医療の最後の砦となるべく現場は本当に頑張っておりますので、地域の皆さまにも知っていただけたらうれしいですね。

最後に今後の展望をお伺いできますでしょうか。

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地域を支える基幹病院としてさらなる進化をめざします。その際、一つの指標となるのが日本医療機能評価機構による病院機能評価でしょう。当院は本年、「一般病院」と「緩和ケア病院」の認定を受けました。病院の運営管理や提供する医療に関する客観的な指標だと思いますので、今後もそこをベースに病院機能を改善していきたいです。加えて、医療水準の向上も欠かせません。そこで、新しい医療技術を安全に提供するためのシステムを構築しました。例えば新しい手術を導入する場合、担当医師は技術指導の先生によるトレーニングを受け、さらに院内の委員会の審査を受ける決まりになっています。他にも、看護師などスタッフの研修も積極的に行っており、引き続き、教育・研修・研究には注力していきます。病院は「人がすべて」です。これからも職員同士がしっかり結びつき、安心・安全性に配慮し、患者さん中心の質の高い医療を提供していけたらと願っています。

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久留 一郎 病院長

専門は循環器内科、特に生活習慣病と高尿酸血症・痛風の合併、再生医療。1981年鳥取大学医学部卒業。同大学院を経て、尿酸代謝の研究のため、ノースウェスタン大学やペンシルバニア大学に留学。鳥取大学大学院医学系研究科再生医療学部門教授などを歴任し、2022年米子医療センター病院長に就任。患者中心の医療を重視し、医療従事者の声を聞き取ることを通じて、提供する医療がニーズと乖離(かいり)しないように努める。

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