医療法人社団 裕敬会 江村精神科内科病院
(北海道 根室市)
江村 康 病院長
最終更新日:2025/03/25


内科・精神科を軸に市の医療ニーズに応える
日本最東端に位置する根室市で、およそ50年前から診療を続ける「江村精神科内科病院」。医療資源が限られ、医療機関までの移送難度が高い地域も含むこの街で、広範囲の医療需要をカバーする貴重な存在だ。外国人看護師・介護福祉士を受け入れるEPA(経済連携協定)や特定技能制度を採用し、優れた外国人スタッフを受け入れ、さまざまな国籍の優秀なスタッフがチームワーク良く働き、診療体制を支えている。生活習慣病や呼吸器疾患、循環器疾患のプライマリケアに加え、健康診断や各種予防接種など幅広く対応する内科外来には、10代から100歳まで多様な年齢層の患者が訪れる。道東エリアでは一次医療に対応する精神科の医療機関が限られているため、精神科外来には釧路や羅臼など遠方からも患者が訪れるそうだ。同院の院長を務めるのは、都内の大学病院や大規模病院で臨床経験を積んで根室に戻り、同院を継承した江村康先生。地元・北海道の広大な土地を思わせる、包み込むような穏やかさが印象的なドクターだ。同院の特徴や強みについて、じっくり話を聞いた。(取材日2025年1月21日)
根室市で長く診療している病院なのですね。

前身は私の祖父が設立した「保全病院」で、およそ50年ほど当地で地域医療を提供しています。根室は日本で一番早く日の出が見られる地域であり、自然風景が豊かで年によっては流氷も観測でき観光客にも人気の街。また、海の幸も豊富で、日本一の水揚げ量を誇るサンマや花咲ガニといった海産物も有名です。北海道三大祭りの1つである根室金刀比羅神社例大祭をはじめとした祭りも盛んで、時期になると地元住民と観光客でとてもにぎわうんですよ。一方、地域に暮らしている人は約2万2000人で、平時の人口密度は低いです。高齢化が進む中にあって、医療資源も豊富とはいえません。私は都内の大学病院や大規模病院で研鑽を積み、生まれ育った地域の皆さんの日々の健康を守ることが使命と考えて、根室に戻ってきました。現在は、精神科と内科の外来、および101床の病床を生かした入院加療、精神科のデイケアを軸に診療をしています。
まずは、内科外来の特徴からお聞かせください。
内科の外来は、日常的な症状全般に対応しています。下は10代から上は100歳まで、受診する患者さんの年齢層も主訴もさまざまですね。多くを占めるのは風邪のほか生活習慣病の検査・治療、呼吸器や循環器の慢性疾患の継続治療、予防接種などです。睡眠時無呼吸症候群のCPAP療法も行っています。また、CT・レントゲン検査、脳波検査、白癬症の検査などができる設備をそろえ、健康診断もお受けしています。船員の健康診断も可能ですから、ご希望の方はお問い合わせください。他の病院まで距離があって気軽に受診できない方の事情も踏まえて柔軟に対応するのが基本的な方針です。同時に、高度で専門的な治療が必要なケースについては、速やかに適切な医療につなぐことも当院の役割にほかなりません。連携している市立根室病院を中心にご紹介していますので、安心して受診なさってください。
精神科についてはいかがですか。
精神科の外来も、非常に幅広く、認知症から統合失調症までさまざまな患者さんがいらっしゃいます。内科と違うのは、釧路や羅臼など、道東の各地から数時間かけて通院する方がいらっしゃることですね。道東エリアでは、総合病院の精神科の休止や縮小が相次いで精神科医療がひっ迫したため、行き場を失った患者さんが多くいらっしゃるんです。できる限りお受けしていますが、受診を希望されている患者さんがとても多く、診察のご案内までにお時間がかかることをご理解いただけるとうれしいです。なお、精神科では、デイケアも実施しています。平日の午前10時から午後16時まで、仕事や学校生活に不安がある、引きこもりがちで生活リズムが乱れてしまう、人付き合いに自信がないといった悩みを抱えた患者さんが対象ですね。看護師や作業療法士、ソーシャルワーカーなどとともに、さまざまなプログラムを通じて社会復帰や自立をめざします。
入院についても教えてください。
入院患者さんの7割から8割は認知症の方で、認知症以外の2割から3割は統合失調症、うつ病、躁うつ病などの患者さんです。初期の認知症や、症状が落ち着いていて自宅や施設で介護できる場合は外来診療で済みますが、認知症に伴う徘徊や攻撃的な行動、妄想、食べ物ではないものを口に入れてしまう異食行為などが起こるようになると、家族だけでは介護しきれません。当院では、認知症に伴う精神症状が重いこうした患者さんに入院していただき、精神科による適切な診断と入院加療を行います。内科があり、身体疾患の管理も並行して行えるのが強みですね。入院患者さんの身体症状や精神症状が安定していれば、外来患者さんのデイケアのように機能回復や生活動作を目的とした作業療法やレクリエーションも行います。
最後に、患者さんにメッセージをお願いします。
当院は、日本最東端のエリアにおける精神科医療、内科医療を担う病院です。地域の皆さんお一人お一人の生活がより良いものとなるよう、心身の健康をサポートしたいという思いで、医療を行っています。病院ではさまざまな職種のスタッフが全員で、地域に根差した診療を行ってまいります。現代社会では、身体の不調はもちろん、変化の激しい社会の中で心の不調を来す方も少なくありません。心や身体の状態に不安を感じる時には、どうぞお気軽に当院にご相談ください。皆さんのこれからの人生がより良きものとなる一助となれましたら幸いです。

江村 康 病院長
帝京大学医学部附属病院初期研修を経て同大学病院メンタルヘルス科、医療法人社団碧水会長谷川病院、東京都立松沢病院にて勤務。2021年より地元・根室に戻り、江村精神科内科病院を継承し現職。精神科、一般内科診療を主に行う。学校医のほか、根室海上保安部健康管理医、北海道警察検案嘱託医も務める。精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医。