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地方独立行政法人奈良県立病院機構 奈良県総合医療センター

(奈良県 奈良市)

松山 武 院長

最終更新日:2024/08/06

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県北部の高度急性期医療を一手に担う

2018年に奈良市七条西町へと新築移転した「奈良県総合医療センター」。緑豊かな丘陵地に広がる病棟の上階からは、生駒山や奈良盆地を一望できる。奈良県北部の医療において「最後の砦」を担う同院は496床、30を超える診療科、さらに各分野の専門診療部門等を擁し、幅広い領域で高度急性期を中心に専門性の高い治療を提供。中でも救急医療に関しては奈良県の三次救急指定病院であり、救急・集中治療センターが多数の救急搬送に24時間365日体制で対応する。またがんや心臓血管外科、さらに消化器疾患や小児分野を中心に診療体制の拡充を進め、県民の期待に応える。そんな同院で2022年から院長を務める松山武先生は長らく同院で勤務し、救急診療体制の整備にも携わってきた。現在は近隣医療機関との病診連携や病病連携、また若手医師の育成などを通じて、より地域に根づき地域とともに歩む病院づくりに注力する。「エクセレントホスピタルをめざして頑張っています」と親しみやすい笑顔で語る松山院長に、近年のトピックスや今後の取り組みをじっくりと語ってもらった。(取材日2024年6月13日)

新築移転から6年、この間の歩みや変化をご紹介ください。

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当院は1964年に奈良県立医科大学附属奈良病院として診療を開始。その後、奈良県立奈良病院となり、1977年からはここよりやや北で診療を続けてきました。2014年には地方独立行政法人奈良県立病院機構の一病院として現在の名称になり、その頃から本格的に移転準備を進め、2018年に新築移転して今年でちょうど6年目になります。移転前には、診療は基本的に各科で独立して行っていましたし、病院と救命救急センターが個々に救急搬送を受け入れるといった状況もありました。ですが移転前後には診療科の改編や新設を進め、いくつかの領域では複数の科が連携しながら診療に取り組めるように部門への集約を実施。医師も、病院全体で100人程度は増えています。救急医療については組織を大幅に見直し、救急・集中治療センターとして1つに集約。医師の育成にも力を入れ、初期臨床研修には新プログラムを作成し、意欲的に取り組んでいます。

救急・集中治療センターの特徴を教えてください。

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わが国の多くの病院では、救急科は緊急救命室(ER)のみを担当し、集中治療室(ICU)では各科の医師が治療にあたる、オープンICUという形式をとっています。しかし当院の救急・集中治療センターはER、ICU、HCU(高度治療室)を救急科と集中治療を行う医師が連携して担当する、クローズドICUになっています。例えば救急搬送された患者さんはまずERで治療を受け、必要に応じてICUへ移動しますし、がんなどで入院し各科の医師が手術を行った患者さんも、術後はICUやHCUで集中的な管理や看護を受けます。ICUでは幅広い領域の患者さんを受け入れて全身管理を行うため、ICU14床に対して非常に多数の医師や看護師が専従し、多職種のスタッフと協力しながら治療にあたります。クローズドICUで術後ケアの質が高まりましたし、ERや各科では急性期治療や高度手術に集中でき、より多くの患者さんを受け入れやすくなっています。

がんや消化器疾患などでも、集約して診療を行っています。

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現在のがん治療では手術、化学療法、放射線治療、ゲノム医療、緩和ケアなどが並行して進みますし、患者さんの年齢や社会的背景に応じた、幅広い支援が欠かせません。このため集学的がん治療センターでは院内の診療科や職種をつなげ、各患者さんにより適した医療や支援を構築していきます。また、2024年には消化器センターを新設。当院でも消化器疾患の患者さんは非常に多く、がんをはじめ、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や肝臓・胆道・膵臓疾患など多岐にわたっています。そこで集約することで消化器内科、消化器外科、放射線科などが連携し、内視鏡などでの迅速な検査から診断、ロボット支援下手術も含めた適切な治療の提供をめざします。他にも、心臓血管センターでは医師を2チーム制にして治療効率を高めていますし、治験や学術研究を支援する臨床研究センターも開設。人材と情報の集約で、高度急性期医療の質はいっそう高まっています。

小児では、治療できる病気が大幅に増えたそうですね。

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以前から小児科では一般的な病気や発達・心に関する治療には力を入れてきましたが、小児外科の発足に相次いで小児脳神経外科や小児泌尿器科を開設。現在では小児領域全体で20人ほどの医師が診療に携わり、強力な布陣になっています。小児外科では腹部や胸部の手術のほか、血管腫などの良性腫瘍の治療も行っていて、胸腔鏡や腹腔鏡など内視鏡手術を活用し、一部ではロボット支援下手術も導入。また小児がんの治療や小児救急にも注力しています。小児泌尿器科でも尿路系・外陰部疾患では腹腔鏡やロボット支援下手術を積極的に行い、成人泌尿器科と連携して術後の患者さんを長くサポートできることも強みになっています。小児に関してこれほど広範囲かつ専門的に診療できる病院は珍しいのではないでしょうか。県外からの受診も増えつつあります。将来的にはセンター化も視野に入れ、いっそうの充実を図りたいと考えています。

地域との連携や今後の病院像についてお聞かせください。

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当院の患者さんは増え続けていますが再診の割合が高まり、初診の予約が取りにくかったり、高度急性期医療に十分なパワーを割けないといった課題も生じています。このため現在は、開業医の先生方や近隣病院と密につながり、外来患者さんにはかかりつけ医と当院を併用してもらう、入院患者さんでは症状に応じてスムーズに転院できる、などの仕組みづくりを進めています。同時に、当院や医療のことをより知ってもらえるよう、公開講座や病院祭りのようなイベントも積極的に実施して、地域のコミュニティーセンターのような役割も担いたいです。また、教育の面では当院で指導を受けた先生方がそのまま勤務し、専門的な資格もここで取得できるように仕組みを強化し、当院や地域に愛着をもつ医師を増やせればと願っています。法人の理念でもありますが「医の心と技」を磨き、地域の「エクセレントホスピタル」として信頼と安心感のある病院をめざしていきます。

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松山 武 院長

奈良県立医科大学卒業。脳神経外科の道へ進み、1997年にはカナダのトロント大学脳神経外科に留学。奈良県内や大阪府下の脳神経外科関連病院で脳卒中や頭部外傷などの急性期診療に携わる。その後、当時の奈良県立奈良病院脳神経外科へ入職、同院の救急医療体制の拡充に注力。奈良県総合医療センター副院長、救急・集中治療センター長を兼務し、2022年より現職。日本救急医学会救急科専門医。

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