社会医療法人 中部国際医療センター
(岐阜県 美濃加茂市)
山田 實紘 理事長
最終更新日:2024/03/14
地域の、日本の、世界の医療拠点へ
美濃太田駅から車で約5分に位置する10階建て・病床数502床の「中部国際医療センター」。同院の歴史は古く、1913年開業の「回生院」に始まり、近年は「木沢記念病院」の名で100年以上、地域医療に貢献してきた。「世界に通用する医療を提供」「がん治療のメッカをめざす」という目標を掲げ、2022年に新築移転し、現在の名称に変更。先進的な医療設備を積極的に導入し、一般診療に加えて、がんや脳卒中など、高い専門性が必要とされる医療を提供してきた病院である。この春から陽子線がん治療センターで陽子線治療を開始。地域から日本全国へ、さらには世界の医療拠点をめざしている。また、美濃加茂市が進めるメディカルシティー構想の実現をめざし、院内や敷地内には「美濃加茂市保健センター」「救急ワークステーション」も設置。院長就任から20年以上にわたって、患者本位の病院づくりを推進してきたのが山田實紘理事長。専門医療から地域の救急・福祉・ウェルネスケアにまで注力し、国際貢献や地域貢献にも尽力してきた山田理事長に、同院の特徴や医療への想いなどについて語ってもらった。(取材日2024年02月05日)
病院の歴史をお聞かせください。
僕は地元・美濃加茂市の生まれで、約40年前から叔父が院長を務める「木沢記念病院」の脳神経外科に勤務しています。当時から日本の医療の在り方にいろいろ疑問を感じていたので、1997年に院長に就任したのを機に、「自分の納得のいく病院をつくろう」と病院改革に着手しました。まず病院の機能に関して見直しを図り、職員の意識改革にも取り組みました。その後も「病める人の立場に立った医療、地域から求められる新しい医療サービスの提供」という基本理念のもと、医師本位ではなく、患者本位の医療の実現をめざし、がん治療から福祉の領域までをカバーする地域医療の基盤を支える存在として認知いただくまでになりました。このように20年以上にわたり挑戦してきた、自分の理想とする病院づくりの次のステージとして、2022年に「中部国際医療センター」へ名称変更をして、先進的な医療を担う病院を開業しました。
がんゲノム医療連携病院でもありますね。
先進的な医療機器や治療法の導入、スタッフの知識と技術の充実を積極的に進めてきました。2001年には核医学検査のPETを導入し、以降もPET-CT、SPECT-CT、320列CT、短時間で精密な放射線治療を行う「強度変調放射線治療(IMRT)装置」、乳房を挟まずに検査できる乳房専用PET装置などを取り入れました。さらに世界の医療現場を巡った経験から、2017年にがんのゲノム(遺伝子情報)を活用した医療を開始し、厚生労働省が推進する「がんゲノム医療連携病院」となり、慶應義塾大学病院と連携して診療しています。近年は第5のがん治療といわれる光免疫治療のような、全国的にも対応する医療機関が数少ない治療に取り組むことで、病態や部位に合わせた治療の選択肢を増やしています。今春からは陽子線がん治療センターも稼働します。1つでも多くの選択肢を用意して、1人でも多くのがん患者さんを救いたいです。
陽子線がん治療センターについてお聞かせください。
従来の放射線治療は、がん細胞の手前や奥にある、正常な細胞も攻撃していました。しかし陽子線はがん細胞到達時に、最大エネルギーを放出して停止するという特性があります。つまり、がん細胞のみ狙い撃ちすることが望め、体への負担が少ない治療なんです。さらに今回導入した装置は、変形しているがん細胞にも対応しますので、周りの正常細胞へのダメージを大きく軽減することが期待できます。また、施設長の不破信和先生は南東北がん陽子線治療センター長などを歴任し、10年以上の経験を持つ陽子線治療の専門家。先進的な設備と、それを生かす技術によって、精度と安全性の両立を追求した治療が提供できると思います。 治療は毎回10~15分程度ですので、お仕事を辞めたり、休んだりせずに治療を受けていただくこともできます。患者さん一人ひとりに適した治療法をご提案でき、通院もしやすい、がん治療のメッカをめざしています。
病院の概要とほかの設備について教えてください。
幅広い診療科が垣根を越えて連携しているのが当院の特徴。診療科に加え、がん専門部門、救急医療や循環器・脳卒中などの専門医療部門を設けています。病床数はHCU10・ICU10・一般436・回復期46の計502床。心臓・血管エックス線撮影装置を組み合わせたハイブリッド手術室を含めた11の手術室と2台の内視鏡手術支援ロボットも有しています。敷地内には救急ワークステーションを併設し、美濃加茂市の保健センターやカフェ、当法人が運営する健康増進施設もあり、住所表記が「美濃加茂市健康のまち一丁目1番地」とあるように、まさにメディカルシティーの様相となっています。また地域の安心を支える救急医療にも力を入れ、救急専用のCTやMRIの検査機器を設置し、24時間365日体制で臨んでいます。初期治療の早期開始による救命率の向上を目的にドクターカーも導入。引き続き、地域に貢献していきたいと思っています。
今後の展望と読者へのメッセージをお聞かせください。
僕は世界規模で活動する奉仕団体の国際会長を過去に務めました。その経験もあり、命の尊厳を重んじる「医療格差なき世界」をつくりたい。地域医療はもちろん、地球規模の医療も考えなければならない時代だと思います。例えば、病気で困っている開発途上国の患者さんは当院で治療できるかもしれない。「余裕のある者が、余裕のない者を助ける」というのが僕の医師としての哲学。今後も世界的な視点で、医療の可能性にチャレンジしていきます。また、当院には先進的な設備があり、約150人の専門性を備えた医師がいますが、結局は心が大切。一般的には初診の医師が主治医になるケースも多いと思いますが、相性が合わないと感じたら変えたほうがいい。心が通わない限り、良い治療はできないと考えるからです。良い医師の1つの目安は、目を見て話すか否か。患者さんには医師を選ぶ権利がありますので、ご自身に合う医師を選んでください。
山田 實紘 理事長
岐阜県美濃加茂市出身。1968年日本大学医学部を卒業し、脳神経外科学教室に入局。1982年より木沢記念病院の脳神経外科部長に。1997年に院長、2000年より理事長に就任。医学博士。岐阜大学医学部客員臨床系医学教授。「患者本位」の病院改革を進める一方で、自ら社会福祉法人を設立し、医療と福祉の連携にも尽力する信念と行動の人。