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市立恵那病院

(岐阜県 恵那市)

浅野 雅嘉 病院長

最終更新日:2023/05/19

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傾聴の姿勢を忘れず、質の高い医療を追求

恵那市中心部から車で5分の「市立恵那病院」。その広大な敷地に立てば、恵那山を中心とした愛知県境にそびえる山並みが眼前に広がる。ヘリポートは屋上ではなく地面に設置。エレベーターを使うことなく迅速に救急搬送される。救急病院として、また市内でも貴重な分娩施設を持つ病院として市民の健康を守っている同院。院内は2016年に全面リニューアルされ、恵那市の木材を随所に使用した温かみのある造り。2006年より院長を務める浅野雅嘉先生が大事にしている診療ポリシーは、傾聴姿勢。「院長ともなれば、ポジション的にも意見を言いにくくさせているだろうと思いますから、本当にこれで大丈夫かと自分に問い直し、常に傾聴を忘れないようにしています」と話す。自分の弱さも包み隠さず話す浅野院長のオープンな人柄もあってか、医局は診療科の垣根を超えて自由闊達な雰囲気だ。専門は外科でありながら、近年増え続けている乳がん患者に対応しようと、若い医師らとともに53歳で日本乳癌学会乳腺専門医の資格試験に挑み、資格取得を果たしたという浅野院長に、病院の理念や医療への思いをじっくりと語ってもらった。(取材日2023年2月20日)

病院の歩みと、病院の理念について教えてください。

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2003年12月国立療養所恵那病院の国から恵那市への経営移譲に伴い、公益社団法人地域医療振興協会が運営する市立恵那病院が発足しました。2016年には建て替えを行い、健康管理部門や透析部門、化学療法部門に加え、市民から強い要望があった産婦人科も新たに開設しました。免震構造、救護活動スペース、設備インフラも整備された機能的で温かみのある病院が完成し、「地域住民のために、質の高い、思いやりあふれる地域包括医療を展開する」という理念のもと、全職員が一丸となって診療に励んでいます。中でも注力すべきは救急医療ですね。夜間・休日は当直医の能力に応じて医療が制限を受けがちですが、救急医療は診療科にこだわっていては成立しません。私を含めて当院の医師は半分以上が自治医科大学の出身で、へき地医療を主として経験を積んだ医師がほとんどですから、総合診療的なマインドを持って救急医療にあたっています。

地域のニーズで新設された産婦人科なのですね。

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「人口5万人弱の地方都市で産科事業を立ち上げるのは無謀だ」という意見が多い中、産婦人科部長と私は、産婦人科の新設・分娩開始の理解を得るため、行政と岐阜県医師会産婦人科部会、近隣の医療機関にかけ合い、なんとか開設にこぎつけることができました。開設前には、危険の伴う周産期救急の現場で迅速なチーム医療ができるよう産科実技講習会も開催し、当院の助産師はもちろん、内科・外科の医師も受講して必要時にはお手伝いできる体制を整えました。もちろん私も受講し、緊急帝王切開手術のお手伝いもさせていただきました。新生児医療を専門とする小児科医も加わり、産婦人科の医師と助産師は、日本では導入が少ないシミュレーション機器を使い救急の事態に備えた訓練を適宜行っています。おかげさまで2017年11月に初めての産声を聞いてから5年後の2022年(2022年1月~12月)には年間305人の出産を数えました。

そのほか地域にとってどのような役割を担っていますか?

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地域包括医療に取り組む病院として往診や看取り、へき地医療への医師派遣も行っていますし、病診連携を密にして開かれた地域医療を展開することも役割だと思っています。連携医療機関については、書式をそろえた独自のパンフレットを制作して院内でご案内させていただいています。オープンにするという意味では、患者さんやご家族からいただいた投書に対する返答を、「みなさまのこえ」という掲示板に出しています。良い意見はもちろん耳の痛い批判も含め、すべての意見に対し幹部が協議します。耳を傾けなくなってしまえば患者さんも意見すらしてくれなくなりますし、諦めて離れていくでしょう。批判の中には、病院側の思いと患者さんの受けとめ方が違っていることがありますが、それは私たちの伝え方にも問題があると捉え、改善すべき点は改善するよう努めています。いろいろなことが変わりましたし、ATMもそういったご意見から設置することになりました。

患者さんの意見を聞くことを大切にされているのですね。

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患者さんの声もそうですし、どんな立場になっても「傾聴の姿勢」を忘れないでほしいと職員や新人の医師たちにも伝えています。新人のうちは自然にできるかもしれませんが、慣れてくると、「そんなのわかってる」になりがちです。組織としても、傾聴ができる人が集まっていれば、コミュニケーションも円滑ですし変化にも柔軟でいられます。現在私は乳腺外科の診療を担当していますが、もともとは外科医師でした。外科の医師は、先輩から教えられた従来のやり方を遵守しようとする保守的なところがあります。しかし、診療ガイドラインが何回も改訂されるように、私たち医師も自分の知識・技術をブラッシュアップしなければいけないと思っています。年齢を重ねると「昔はこうだった。今までこうしていた」という気持ちが強く、人の意見が聞こえなくなりがちです。周囲の方々の意見をまず受け入れることを常に自分にも言い聞かせています。

めざす医療への取り組みと、これからの展望をお願します。

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患者さんに質の高い医療を提供するため、継続している2つの取り組みがあります。1つは、品質の向上を目的とするQI(Quality Improvement)運動。各部署で決めた目標に1年間取り組み、毎年発表しています。2つ目は、各部署の代表が集まる診療運営会議。病院収益などの情報を開示しつつ、自分たちがどんなことで悩んでいるか、そしてほかの部署の人たちがどんな考えでいるのかをオープンにしています。また、NDC登録や診断書などの書類作成を手伝う医療クラークが8人いますから、医師は医療に専念できる体制を整えました。当院は、体全体を広い視野で総合的に診る総合的な診療を行う医師の育成にも病院を挙げて取り組んでいます。これからも総合診療のできる医師を多く育て、合併症のある高齢者にも対応していきたいと思います。

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浅野 雅嘉 病院長

1980年自治医科大学卒業後、岐阜県立岐阜病院を経て、1982年より国保東白川病院、岐阜県立岐阜病院の外科で研鑽を積む。国保東白川病院院長、上之保村国保診療所所長、岐阜市民病院外科医長・内視鏡外科部長、友仁山崎病院外科部長、揖斐厚生病院中央手術部長などを経て2006年より現職。医学博士、日本外科学会外科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医。現在の楽しみは孫の成長。

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