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社会医療法人厚生会 多治見市民病院

(岐阜県 多治見市)

今井 裕一 病院長

最終更新日:2022/11/18

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人材育成と意識の統一により、病院を活性化

多治見駅から徒歩10分の場所にある「多治見市民病院」は、市中心を流れる土岐川を背にして立つ。今から11年前に多治見市から社会医療法人厚生会が指定管理を受け、2012年には建物も新しく建て替えられた。病院長に就任して5年目となる今井裕一病院長によれば、「指定管理を受けた当初は、職員も患者も減ってしまったどん底ともいえるような時代でした」。現在は、患者数も増え、市民病院の名にふさわしい市民から頼りにされる病院に生まれ変わったと自負する。患者数が激減していた頃から、どんな改革を積み重ね、どんな意識を持って医療を進めてきたのか、そして現在は地域でどんな役割を果たしているのかなどについて今井病院長に詳しく聞いた。(取材日2021年10月21日)

まずは、病院の歴史について教えてください。

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1947年に開院した多治見診療所を前身として、1974年に市立病院である「多治見市民病院」が設立されました。その後、経営の事情により市から指定管理を受けた2010年。市から社会医療法人に運営が委託されるのは全国でも珍しい例でしたが、当時はそのための整備も整っていない状況でした。そんな事情もあり、職員が激減し、当初30人ほどいた医師が12人まで減った時期もありました。午後などは外来の患者さんがほとんどいないようなどん底ともいえる状態からのスタートでしたが、2年目に病院の建て替えをしたことで、少しずつ医師や患者さんが増え始めました。私が就任したのはその5年後の2017年ですが、立て直しの一手として病院全体のマインド改革に取り組みました。「そこそこの医療をすればよいとか、赤字になっても市から補填してもらえるだろう」というような意識では、良い医療が提供できるはずがありません。

具体的にはどんな点を改革されたのですか?

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現在の社会全体が病院に要求するのは、最適な医療とより良いサービスだと思います。「先生の言うとおりにしていればいい」という受け身の患者さんが多かった時代とは違います。医療の質や環境、接遇などを患者さんがシビアに評価して病院選びをされているのではないでしょうか。社会の要求に合った病院にするために、職員の教育と意識の統一を徹底しました。私自身は、長年、大学で教育者の立場だったこともあり、まずはこの病院を良い医師を育てられる場にしたいと考えました。研修医が多く集まれば、教えるための中堅医師も集まります。通常、2年間の研修終了後は大学に戻ることが多いのですが、当院では教育制度に合わせたプログラムを組み、専門の医師を育て、当院で専門性が発揮できるような仕組みに変更しました。それと並行して各部署の問題点の解決も図りました。病院全体がレベルアップし患者さんにとって頼りになる病院に成長していると思います。

病院全体の意識改革から患者さんの増加につなげたのですね。

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病院の職員全員が同じ意識で働いているため、患者さんもその雰囲気を感じ取っているのでしょう。会社でも同じだと思いますが、縦割りの仕事の進め方では、各部署が閉鎖的になってしまいやすいデメリットがあります。各職員が自分の部署の仕事しかできないという働き方では、横のつながりがなくなり、結果的に連携して仕事を進めることができなくなると思います。自分の仕事だけをしていればいいという縦割り感覚をなくし、事務では受付も会計も手が空いている者が補い合い、医師も他科と情報を共有して進めるようにしました。その結果、病院全体の意識が、患者さんが求めるサービスへと向くようになり、またワークシェアもできるようになりました。新型コロナウイルス感染症の流行に際しても、職員が自発的にアイデアを出して取り組んだことにより、スムーズに対処することができました。

二次救急病院として地域の中でどんな役割を担っていますか?

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多治見市の医療の課題の一つに、人口11万人中3割強を占める高齢者の医療があります。当院が医師不足で行うべき医療が行えなかった時代には、近隣の三次救急病院である県立病院がほとんどの医療を担っていた事情があり、地域医療から考えれば効率が悪い状態でした。本来なら、緊急の大手術や高度医療は県立病院で行い、高齢者医療は当院が担うというかたちが望ましい姿です。三次救急病院では肺炎であれば呼吸器内科、心不全であれば循環器内科、尿路感染症であれば腎臓内科と専門診療科へ振り分けられますが、いくつかの合併症のある高齢者だと、入院病棟が定まらないことも多く、入院できずに戻されてしまうことも。当院の基本的な役割は、高齢者を受け入れること。そのために、例えば内科の医師であれば、どの診療科に属していても、肺炎や尿路感染症の治療ができる体制にし、その上でさらにそれぞれの診療科の専門医療も実践できるスタイルにしています。

診療科・部門の特徴と今後の展望について教えてください。

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当院では内科、外科、整形外科、婦人科を柱に多数の領域に対応しています。特に13人の医師が在籍する内科では、近隣には少ない腎臓・リウマチ膠原病内科を展開し入院も可能です。循環器内科は、他院とも連携し3人の常勤医が心筋梗塞などの虚血性心疾患をはじめ、不整脈に対するペースメーカー治療、カテーテルアブレーション治療の実績を重ねています。消化器内科では内視鏡的手術を多数行い、内分泌・糖尿病を専門とする医師も活躍しています。小児科では、小児科に加え今年から専門の医師による腎臓病診療が開始しました。また地域の高齢者医療を担うという意味では、市内5軒の施設へ週1回看護師を派遣し、入所者の急変時に迅速に対処できるようにしました。人手不足の施設で病院受診の付き添いで職員が割かれることも解消されます。今は地域のモデルとして行っていますが、今後の高齢者医療のためにもこのスタイルが全国に定着する可能性もあります。

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今井 裕一 病院長

1977年秋田大学医学部卒業後、東京・虎の門病院にて研修。1979年より秋田大学医学部第三内科に22年間勤務。米国テキサス州立大学ヒューストン校2年間留学、2003年から愛知医科大学病院腎臓・リウマチ膠原病内科教授を経て2017年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。愛知医科大学名誉教授。専門は腎臓内科、リウマチを含む膠原病内科。

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