咳・息苦しいときは何科に
呼吸器内科と呼吸器外科による先進治療
独立行政法人国立病院機構 長良医療センター
(岐阜県 岐阜市)
最終更新日:2024/12/03
- 保険診療
- 気胸
- 肺がん
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 間質性肺炎
COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんなどの呼吸器疾患が年々増加傾向にあると同時に、息切れや息苦しい、咳が長引くなど慢性的な症状に悩む人も増えている。呼吸器疾患の中でも罹患率が高いCOPD患者は、肺がんのリスクが高く、早期発見と治療が大事だ。そんな呼吸器疾患に開業当初から注力してきた「長良医療センター」では、呼吸器内科と呼吸器外科が連携して先進の治療を提供している。「2つの診療科が連携するだけでなく、それぞれが多職種のチーム医療で個々の病気に関わっています」と話すのは、呼吸器内科で診療を行う加藤達雄院長と呼吸器外科の小松輝也統括診療部長。日本呼吸器学会呼吸器専門医である加藤院長と、日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医の小松先生に、両科の取り組みについて話を聞いた。(取材日2024年11月5日)
目次
呼吸器内科で精密な検査と診断を行い、スピーディーに呼吸器外科での手術につなげ、早期回復をめざす
- Q呼吸器疾患にはどのようなものがありますか?
- A
【加藤院長】肺がんや気管支喘息をはじめ、肺の組織が線維化して動きが悪くなり、酸素を取り込むことが難しくなる「間質性肺炎」や、近年、中高年の女性を中心に増加している「非結核性抗酸菌症(肺MAC症)」、タバコの煙や大気汚染によって起こる「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」、肺に穴が開いて空気が漏れ、肺がしぼんでしまう「気胸」などが挙げられます。呼吸器疾患は慢性的な疾患や難治性の疾患が多く、かかりつけ医からの紹介がほとんどである当院の患者さんは、「治療を受けているが咳や息切れがなかなか治らない」、「検診で再検査になった」などの理由で受診されています。
- Q呼吸器内科の特徴を教えてください。
- A
【加藤院長】呼吸器の検査は、CT、肺機能検査、気管支ファイバー検査などがあります。気管支というのは小さなご飯粒が入っただけでも苦しいですから、気管支ファイバーは眠った状態で検査が受けられる静脈麻酔による鎮静を用いて検査をしています。もう一つの特徴は、5人の日本呼吸器学会呼吸器専門医が在籍し、専門知識を持って診断と治療にあたっていること。気管支ファイバー検査においては、肺がんや間質性肺炎の診断に役立つクライオバイオプシー(凍結生体組織検体採取)を導入し、正確な診断が得られるように努めています。
- Q呼吸器外科の特徴を教えてください。
- A
【小松先生】まず呼吸器内科で検査や治療内容を精査し、手術が必要な場合に呼吸器外科が担当します。肺がんや気胸などが主な病気で、当院では9割が胸腔鏡手術、胸腔鏡で対応できない1割を開胸手術で行っています。最も注力しているのは在院日数の短縮です。従来、外科には慣習的なものが多く、医学的に必要のないプロセスまで含まれていることがありましたが、そういった不必要なものを見直した術後早期回復プログラムを導入しました。気胸の患者さんなどは術後1時間で歩行や食事を開始しています。また、当院では国内でも早くから多関節鉗子を導入し、低侵襲な手術に努めています。
- Q多関節鉗子を使った手術とはどのようなものですか?
- A
【小松先生】多関節鉗子は、ロボット支援手術で用いる鉗子と同じ動きが可能であり、ロボット支援手術では懸念事項である術者の手の感覚が生かせない、という欠点を克服した器具です。ロボット支援手術のような大がかりな準備は必要なく、従来の胸腔鏡手術の一環として利用できる手術器具です。医療コストの面からも経済的です。現在、まだ導入して間もないのですべての症例に対応できるわけではありませんが、国内国外の先生と連携を取りさらに臨床成績の向上に努めます。
- Q呼吸器内科と呼吸器外科の連携ではどんな利点がありますか?
- A
【加藤院長】早期手術は早期回復につながるため、手術が必要な場合は数日以内に行える体制になっています。両科は、気楽に話せるような関係性になっていますから、気になることがあれば気軽に相談ができるのも利点ですね。また、手術後に内科的なトラブルがあれば早急に呼吸器内科が対処します。どちらの診療科でも多職種のチーム医療を行い、連携を重視しています。
【小松先生】肺がん手術では、その前後に免疫療法などを行うことも増えてきましたが、呼吸器内科が盤石な体制で検査・診断を行っているからこそ、良好な結果が期待できると考えています。この両科の協力体制で、肺がんの再発防止をより強固なものにしていきたいです。