医療法人社団登豊会 近石病院
(岐阜県 岐阜市)
近石 登喜雄 理事長
最終更新日:2025/04/07


中規模でありながらも多機能な病院を
長良川の北岸に位置する「近石病院」。かつて路面電車が走っていた早田大通沿いに立ち、1963年の設立以来、長く地域に根づいてきた病院だ。2014年には広くゆとりのある新病院が完成。地域のコミュニティスペースとしての役割も担っていきたいと、2022年には病院隣にコミュニケーションスペースも開設。入院棟の院内には木材がふんだんに使われ、吹き抜けの空間に天窓からのやわらかな日差しが差し込む。「無機質な病院ではなく、気軽な気持ちで相談に来られるような病院をめざしました」と近石登喜雄理事長が話すとおり、温かみのある空間になっている。地域の高齢化に伴い、高齢者医療を中心に急性期から慢性期まで対応する同院の診療内容について話を聞いた。(取材日2025年2月5日)
病院の歴史について教えてください。

当院は、私の父が1963年に外科と内科の59床の病院として設立しました。当初は急性期疾患を中心に胃がんなどの外科手術も行っていましたが、現在は慢性期医療が中心となっています。周囲に急性期の大きな病院が充実してきたことや、高齢化社会に伴って1995年頃に特別許可老人病棟という現在の療養病棟のような区分制度ができたことで、地域で当院が担うべき医療が変化していきました。病床の内訳も現在では一般病棟39床に加えて回復期リハビリテーション病棟が44床、地域包括ケア病棟が42床。回復療養のための病棟が多くを占め、大きな病院で手術した後の高次機能障害などによるリハビリ入院のほか、高齢で在宅復帰に至るまで回復していない方などにもご利用いただけます。2014年の病院建て替えでは、病室、廊下、リハビリ室などすべてゆとりある広さに拡張し、医療機器も新設。環境的にも安心して療養できる体制づくりを意識しました。
地域の中で、急性期病院の後方支援の役割を担っているのですね。

慢性期医療だけでなく二次救急医療として、高度医療を必要としないような急性期疾患も診ています。例えば、肺炎や尿路感染症、骨折、外傷などです。鼠径ヘルニアや肛門疾患などは大手術ではないものの、手術や入院が必要な病気。そういった病気も、紹介状を必要とする大きな病院に比べたらスムーズに受診、手術ができるでしょう。地域医療の中の役割を周囲の病院と連携しながら担っています。それと同時に、地域に必要な医療の提供も大きな役割の一つ。この地域は、かつて忠節駅という路面電車の駅があって商店も多かったのですが、路面電車が廃線となってにぎわいも減りました。地域に密着した病院として、地域活性化という面でも何か協力できないかと考え、当院の隣にコミュニティスペースを開設しました。食を通じて医療と地域をつなぐことが目的です。
コミュニティスペース開設への思いをお聞かせください。

地域の皆さんが気軽に立ち寄り、食の知識を学びながら食べる楽しみを共有できる場をつくりたいと考えたことが、コミュニティスペース開設のきっかけです。気軽に栄養相談をいただいたり、介護予防についての知識を地域の皆さんに共有したりできる場をつくりたいと考えています。また、管理栄養士をはじめ、歯科医師やリハビリ職と連携し、予防医学の観点から、食の大切さを伝え、地域住民が安心して過ごせる憩いの場をめざしていきたいという思いもあり、開設に至りました。
歯科にも注力されているそうですね。

当院の歯科口腔外科は、歯科訪問や摂食嚥下を中心に診療しています。高齢になると嚥下機能が低下し、サルコペニアにもつながりやすいですから、嚥下機能の回復、強化をめざすというのは高齢者医療では大切な要素なのです。嚥下とサルコペニアを専門とする外来を行い、摂食嚥下リハビリを専門とする歯科医師が嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査も行っています。また、在宅療養者と入院患者さんの歯科治療や口腔ケアも積極的に行っています。入院中は、週に1、2回の頻度で歯科衛生士が口腔チェックをしていますから、誤嚥性肺炎や感染症の予防にもなっています。各病棟での問題や改善点があれば、毎月開催している口腔衛生管理委員会で情報共有し、病院全体の口腔衛生意識を高めています。入院中から退院後まで一貫して口腔管理ができることが強みです。
最後に、地域の方へメッセージをお願いします。

スタッフ全員が「和顔愛語」という法人理念に基づいて、優しく思いやりのある言葉で接しながら心の通った温かい医療に取り組んでいます。リハビリでは、理学療法士、言語聴覚士、作業療法士が連携し、日常生活動作練習エリアで入浴や調理、畳生活などを想定したリハビリも行っています。また、外来棟と入院棟を結ぶ庭園やリハビリ室から続くデッキでも屋外リハビリを行い、在宅復帰のお手伝いをしています。今後のさらなる高齢化に向けては、訪問診療のスタッフを増員し、在宅医療にも力を入れていきたいです。現在、在宅診療部門では訪問診療を専門に行う医師が3名おり、床擦れの処置や胃ろうの交換をはじめ、終末期の緩和ケアなどに必要な外科的処置も可能となっています。医療だけでなく、食や介護、福祉なども気軽に相談できる場としてご利用ください。

近石 登喜雄 理事長
1983年金沢医科大学卒業後、岐阜大学医学部第二外科に入局。関ケ原病院(現・国保関ケ原診療所)、揖斐病院(現・揖斐厚生病院)、県立岐阜病院(現・岐阜県総合医療センター)、など岐阜県内の病院で外科手術を数多くこなし研鑽を積む。初代院長である父の病気のため、1993年より近石病院に勤務。1995年より現職。休日には、音楽を聞き、ゴルフを楽しむ。