岐阜市民病院
(岐阜県 岐阜市)
山田 誠 病院長
最終更新日:2024/05/23
患者を支え地域を守る地域医療の要
岐阜市鹿島町にある「岐阜市民病院」は、岐阜市内の大学病院や地域の基幹病院と互いに連携し、救急医療や高度急性期医療を担う重要な役割を果たしてきた。地域がん診療連携拠点病院として、がん診療においては手術支援ロボットを導入した手術はもちろん、外来での化学療法や放射線療法も専門の医師のもと安全性に配慮しながら積極的に取り組み、患者が社会生活を続けながら治療が継続できるよう支援している。がんの中でも血液腫瘍については高度無菌病室を備え、造血幹細胞移植を積極的に実施。高度な医療を追求する一方、市民のための公立病院という側面から市民目線も大事にする同院。院内ではスタッフ皆が丁寧な接遇を心がけ、2023年からは入院から退院後の生活までのサポート体制も強化した。さらに院外では市の中心部で公開講座を開催し、地域住民の健康増進に寄与している。「時代の要請に合わせて病院の役割も変わります。常に10年先20年先を見据え、病気を治すだけでなく『癒やし』も提供できる病院にしていきたい」と語る山田誠病院長に、同院の特色やめざす医療のかたちについて話を聞いた。(取材日2024年2月9日/情報更新日2024年4月15日)
こちらの病院の特徴を教えてください。
当院は、診療内容や医療技術などにおいて大学病院と同等の機能を有する病院としてDPC特定病院群に指定されています。その意味で、地域においては救急医療をはじめとする高度急性期医療を担う病院としての役割がまず大きいと思っています。救急医療では「断らない救急」をモットーに市内でも数多くの救急搬送を受け入れており、脳卒中、心筋梗塞・狭心症・心不全などの心疾患、骨折などの外傷、急性腹症などそれぞれの専門チームで手術・カテーテル治療などに対応しています。そして、高度急性期医療に対応するため各種検査・治療機器は随時、先進のものに更新しています。また、地域医療支援病院として承認されており、高度急性期の治療を行う一方、岐阜市街にある市民の病院として地に足をつけた医療を提供していくという視点も忘れてはなりません。患者さん目線を大切にした、親しみやすい病院であることが当院のもう一つの特徴だと思っています。
特に強みといえるのはどんなことでしょうか?
まず一つは、地域がん診療連携拠点病院、がんゲノム医療連携病院に指定されているように、がん診療が大きな強みであるといえます。2017年よりロボット支援手術を導入し、前立腺がんはじめ腎臓がん、胃がん、直腸がん、肺がんなどを中心に実施してきました。高精度放射線治療装置による放射線治療、外来化学療法も積極的に行っており、特に、外来で化学療法を受けられる患者さんの数は2023年度(2023年4月~2024年3月)で約7000人という実績を残しています。また、血液腫瘍専門の医師がそろっていることも強みですね。成人の血液腫瘍、小児の血液腫瘍、それぞれに専用の病棟があり、造血幹細胞移植を行うクリーンルームも備えています。岐阜市内には大学病院はじめ高度な医療を提供する病院が複数あり、連携する中でそれぞれの得意分野を生かしていますが、血液腫瘍領域においては当院が中心的な役割を担っていると思います。
先生のご専門についても教えてください。
私の専門は消化器外科で、これまで特に上部、つまり胃がんや食道がんの手術や化学療法を中心に携わってきました。当院においては以前から、患者さんのご協力を得つつ、多施設共同研究グループに参加して研究に取り組み、胃がんの治療法の開発やエビデンスのデータ構築にも積極的に関わってきました。また、一般外科では特にヘルニア治療も専門としていますので、その分野では常に新しい知識、情報を得て最新の治療を積極的に導入するよう心がけてきました。患者さんが多いのは鼠経ヘルニアですが、患者さんの状態やご希望に応じて腹腔鏡手術を提供し、患者さんの負担軽減や、入院期間、社会復帰までの期間の短縮化につながっています。
市民のための病院としての取り組みを教えてください。
2023年4月に、かねてより準備していた患者総合支援センターを立ち上げました。従来の入退院支援センター、地域連携部、医療相談係を統合、再編したもので、開業医の先生方からご紹介を受けた患者さんの入院や治療、ご紹介いただいた開業医さんへの退院後の逆紹介、あるいは他の適した病院へ紹介するといった一連のサポートが、別々の部署ではなく同じ部署でシームレスにできるようになりました。職員同士の情報交換やコミュニケーションがスムーズになり、より患者さん一人ひとりに適した支援ができるようになったと考えています。また市民の皆さん向けに、健康や病気、予防などをテーマとした市民公開講座を数年ぶりに再開しました。場所は、従来の院内ホールに加え、市の中心部にある複合施設でも開催するようになりました。病院で行うより立ち寄りやすいと思いますので、多くの方に気軽にご参加いただきたいですね。
あらためて病院の理念と展望についてお聞かせください。
理念として「心にひびく医療の実践」を掲げ、患者さんの心に響く医療を届けることはもちろん、職員一人ひとりが自分の心に響くような仕事ができる環境づくりに力を入れています。ここ数年、新型コロナウイルス感染症の流行もあり、職員にとって過酷な状況が続きました。負担を軽減し、「働き方改革」を進めるためにワーキングチームを立ち上げ、外部コンサルタントの助けも得て業務の見直しを図りました。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)も進めて業務を効率化することにより、医療スタッフがより患者さんに向き合えるように努めています。職員が生き生きと輝いて働くことで、その効果を患者さんに還元できると考えています。今後は高齢化もさらに進み、病院には「病気を治す」だけではなく「癒やし」も求められると思います。10年後20年後を見据え、時代に応じて求められる機能を拡充し、市民の皆さんに貢献できるよう努めてまいります。
山田 誠 病院長
岐阜市出身。1989年岐阜大学医学部卒業後、同大医学部附属病院、金山町国民健康保険病院などに勤務し1995年岐阜大学大学院医学研究科修了。米国留学、岐阜大学医学部附属病院、甲賀病院勤務を経て、2004年岐阜市民病院に着任。消化器外科部長、外科部長、副院長などを歴任し、2023年4月より現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。