一般社団法人巨樹の会 宇都宮リハビリテーション病院
(栃木県 宇都宮市)
三澤 吉雄 院長
最終更新日:2018/05/29
幅広い疾患に対応するリハビリ
宇都宮駅から車で約15分、大型スーパーに近い宇都宮環状線から一歩入った閑静な住宅街の中にあるのが「宇都宮リハビリテーション病院」だ。メインエントランスにはグランドピアノが置かれ優雅な雰囲気だが、少し足を踏み入れると広く明るいリハビリテーションスペースが現れる。急性期医療を担う病院から紹介された高齢の患者が大半を占めるが、リハビリへの患者自身のモチベーションを上げることにも配慮しているので、そのリハビリ風景は活気に満ち溢れている。理学療法士をはじめとするリハビリスタッフの平均年齢が若いのも特徴。スタッフも患者も生き生きと働きリハビリに取り組む姿を見せている。そんな宇都宮リハビリテーション病院の院長に就任したばかりの三澤吉雄院長に、意気込みや今後の動向などさまざまな話を聞いた。(取材日2018年5月1日)
病院の役割についてお聞かせください。
脳卒中の患者数が全国的にも多いと言われる栃木県ですが、宇都宮市部では、かつて当院のような回復期リハビリテーションを担う医療施設が不足しており、この課題への対応が急がれていました。そんな中で地域の期待に応える存在として「宇都宮リハビリテーション病院」が開設されました。当初より疾患の種類や重症度にこだわらず急性期を担当する医療施設からリハビリを必要とする患者さんを幅広く受け入れています。リハビリというのは患者さんご自身のやる気が大切です。そのために当院では患者さんごとに個性や希望に応じたオーダーメイド感覚のリハビリプログラムを作成。趣味やご家族の成長など身近な目標を設定したり、季節やお誕生日などを考慮したお食事を提供するなど、患者さんのモチベーションを高めるための工夫をし、土日祝や年末年始関係なく365日継続して集中してリハビリを受けられる体制を整えています。
院長としてスタッフの皆さんに話されていることはありますか?
昨今、医療の現場では「チーム医療」という考えが浸透しています。それは急性期医療の現場だけではなく、われわれのような回復期医療の現場でも必要なことだと考えています。患者さんから見れば、毎日のケアを親身に行ってくれるケアワーカーさんも、一生懸命訓練を一緒に頑張ってくれる各療法士も、看護師も医師も、等しく自分のために力を尽くしてくれる存在なんですね。ですからわれわれも「患者さんを良くしよう」という気持ちを共有してチームとして患者さんに真摯に向き合うべきではないでしょうか。そんな姿勢が患者さんのより良い回復へとつながり、結果として「宇都宮リハビリテーション病院でリハビリすれば大丈夫」と県内の方々に認知されるようになれればうれしいですし、そうならなければ、とも思っています。
とても活気あふれるリハビリの現場ですね。
当院には理学療法士をはじめ、作業療法士、言語聴覚士などたくさんのスタッフがいますが、その多くが20代の若いスタッフです。高齢の患者さんの中には、ご自分のお孫さんくらいのスタッフが生き生きと働く姿に触発される方も多いようですよ。私が今後注力していきたいと考えるリハビリに嚥下に関するものがあります。食べ物を飲み込むことがうまくできなくなると誤嚥性肺炎の原因になりますし、なにより自分できちんと食事を取れるようになるとリハビリの効果も上昇します。また認知機能にも良い影響を及ぼしますので、できるだけ早い段階からの嚥下トレーニングの必要性を感じています。幸い当院には10名以上もの言語聴覚士がおりますので、患者さんへのリハビリはもちろん、客観的な嚥下機能の評価や、退院後も家庭でできる嚥下トレーニングの開発などにも取り組んでいきたいと考えています。
院長として心がけていることはありますか?
これまで私は長年急性期医療の先端の現場にいました。日々運ばれてくる患者さんは一刻を争う状態の方が多く、正直目の前の命を助けることに必死ですから回復期医療のことまで気が回りませんでした。今、回復期医療に携わるようになり、急性期医療と回復期医療の双方の相互理解の大切さを痛感しています。急性期医療の現場で回復期医療のことまで見据えた対応ができれば、より効果的なリハビリに結びつけることも可能になります。これまでの人脈なども生かして、相互の現場を理解できるように取り組みたいですね。また患者さんご自身の不安が大きくてリハビリが進まないことがあります。病気の正しい知識を持っていただき、これだけ動いても大丈夫、こんなに動ける、という自信をつけていただけるように、患者さんご自身にご自分の現状をきちんと把握していただけるようにもしたいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
私は長く僻地での地域医療にも取り組ませていただきました。ご高齢の方でご家族と疎遠になったりした方が、家族に見放されたと感じ一気にお元気をなくし弱くなられていく様子をたくさん見てきました。家族から期待されている、見守られていると思うことも大切なことです。ご家族の方もお忙しくご事情もあるとは思いますが、短時間でもお顔を見に来ていただいて、患者さんを励ましていただけるとありがたいです。回復期リハビリは、患者さんのこれからの生活の質を大きく左右する重要なものです。栃木県の県庁所在地・宇都宮にある回復期リハビリテーション病院として、「回復期リハビリといえば宇都宮リハビリテーション病院」「ここに任せておけば大丈夫」と広く県内外の方々に思っていただけるような存在になるべく、今後も精進してまいります。
三澤 吉雄 院長
自治医科大学一期生として長野県で地域医療に10年間貢献後、自治医科大学胸部外科助教、講師、准教授を経て心臓血管外科教授。2006年より自治医科大学附属病院循環器センター長を務めた。2018年4月宇都宮リハビリテーション病院院長に就任。趣味は去年からプロに師事している声楽で、モーツァルトのオペラを習得すべく通勤の車内で手本のCDを聞きながら歌う毎日。健康法は早足で歩くこと。