膝の痛みを放置しないことが大切
変形性膝関節症の治療
医療法人親仁会 佐藤病院
(栃木県 宇都宮市)
最終更新日:2025/04/25


- 保険診療
加齢とともに膝の軟骨がすり減ることで発症するのが、「変形性膝関節症」。膝の痛みや腫れなどが生じるだけでなく、正座やしゃがみこみといった動作が困難になり、進行すると歩行も難しくなるなど、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあるので注意が必要だ。そんな変形性膝関節症に対し、専門的な治療に取り組んでいるのが、「佐藤病院」の佐藤泰介院長だ。同院では、レントゲンだけでなく、MRI等の精査で患者さま一人ひとりの病期に応じて、鎮痛剤の処方や装具作成、運動療法などの保存加療から、人工関節置換術や骨切り術といった手術まで幅広く実施。つらい症状を軽減し、快適な生活を取り戻せるようサポートすることをめざしている。そこで佐藤院長に、変形性膝関節症やその治療について、詳しく教えてもらった。(取材日2025年3月5日)
目次
膝の痛みを我慢したり放置したりせず、客観的に評価しておくことが大切
- Q膝関節の疾患にはどのようなものがありますか?
- A
変形性膝関節症の専門的な治療に取り組む佐藤院長
さまざまな種類がありますが、若年層では、前十字靱帯損傷や半月板損傷、膝蓋靱帯炎など、スポーツ外傷が多く見られます。成長期の子どもの運動による膝の痛みには、練習のしすぎによるオーバーユースで生じることも多く注意が必要です。中高年層で最も多いのは変形性膝関節症です。加齢とともに半月板や膝の軟骨がすり減り、痛みや可動域の制限が生じます。50代から発症しやすく、年齢が進むにつれて増加します。軽症なら内服薬や湿布で回復が見込めますが、2週間以上痛みが続く腫れや可動域の制限がある場合には、早めに医療機関を受診することが重要です。症状の悪化を防ぐためにも、適切な診断のもと治療を開始しましょう。
- Q変形性膝関節症に多い症状を教えてください。
- A
変形性膝関節症は、加齢とともに膝の軟骨がすり減り、関節の内側を覆う滑膜の炎症を引き起こします。その結果、関節に水がたまり、痛みが発生したり、膝の伸びや曲がりに影響を及ぼしたりする疾患です。50歳以降に発症しやすく、進行するとO脚が目立ち、歩行や階段昇降が困難になることも。症状としては、階段昇降時の痛み、正座ができない、膝の腫れなどが挙げられます。特に階段を下る際には膝にかかる負担が大きく、痛みを感じやすくなります。悪化すると日常生活にも支障を来し、高齢者では転倒による大腿骨骨折等のリスクも高まります。生活の質が低下する一因に直結するので、膝の痛みが続く場合には早めに医療機関を受診しましょう。
- Q変形性膝関節症の治療方法にはどのような選択肢がありますか?
- A
運動療法も行える広々としたリハビリテーション室
病期にもよりますが、変形性膝関節症治療の第一選択は保存療法です。保存療法には、痛み止めの飲み薬や湿布、注射などの薬物療法、運動療法によるリハビリテーション、足底板(インソール)を用いて膝にかかる荷重を調整する方法などがあります。中でも重要なのが運動療法です。電気治療やマッサージだけをリハビリテーションだと誤って認識している人もいますが、運動療法によるリハビリテーションでは、膝のストレッチや可動域訓練、大腿四頭筋の強化を行い、それによって痛みの改善を図り日常生活に支障がない状態をめざします。保存療法では症状の改善が不十分で日常生活に影響がある場合には、手術を検討することになります。
- Qどのような手術方法があるのでしょうか。
- A
手術の前後にも気を配り、安全で満足度の高い手術をめざしている
膝関節の半月板のみが傷んでいる場合には関節鏡手術で処置できることもありますが、軟骨が傷み、変形が進んでいる場合は、変形した膝関節を人工のものに置き替える人工関節置換術と、脛骨の骨を切り荷重を矯正する高位脛骨骨切り術があります。骨切り術は自分の関節を温存できることから、比較的若いスポーツをする人などには適している一方で、変形の進んだ高齢者では適応外になることも多いです。また、骨切り術に比べ人工関節置換術は早期に痛みの軽減が期待できるため、高齢者に向いています。人工関節の耐用年数についても、近年では素材の品質や耐久性の向上から15〜25年と長くなっており、再手術のリスクも少なくなってきています。
- Qこちらの病院ならではの治療の特徴はありますか?
- A
保存療法から手術、リハビリテーションまでを一貫して提供
大きな病院などでは、手術後のリハビリテーションを退院して他の医療機関で行うことも多いですが、当院では、保存療法から手術、手術後のリハビリテーションまでを同じスタッフが一貫して提供しています。患者さまが高齢で一人暮らしなどの場合には、日常生活に影響がなくなるまで入院してもらいます。更に、在宅復帰をした後も継続して外来でリハビリテーションを行い、下肢機能の改善を図っていきます。また、手術ではすべての方に手術後の痛みの軽減につながる処置を行い、合併症予防のため手術の前後に血栓のチェックや骨粗しょう症の検査や治療も行うなど、全体的なマネジメントに重点を置き、安全で満足度の高い手術をめざしています。