医療法人あかつき会 はとがや病院
(埼玉県 川口市)
東 真樹 院長
最終更新日:2024/05/01
在宅から療養まで途切れのない医療を提供
国道122号線沿いに立つ「医療法人あかつき会 はとがや病院」は、1964年から地域の医療を支えてきた病院だ。急性期治療が終わった患者の在宅復帰支援、在宅療養に必要な在宅医療、自宅に帰るのが難しい長期療養患者のケアの3つを柱としている。病棟は、自宅復帰を目標としたリハビリテーションを行う「地域包括ケア病棟」のほか、長期療養に対応した「医療療養病棟」、病院併設の「介護医療院」を配置し、幅広いケースに対応。同じ法人内の、介護老人保健施設、特別養護老人ホームとも連携することで、患者がどのような状態でも途切れなく医療を受けることを可能にしている。スタッフも法人内施設で異動するため、患者が施設を移ったとしても、顔見知りの医師や看護師に出会える安心感もある。「大事にしているのは、患者さん本位の医療であることと、従業員本位の職場であること。第一に、地域に愛される院でありたい」と話す東真樹院長に、同院の体制や診療の特徴を聞いた。
(取材日2019年5月17日)
まず、貴院の歴史からお話いただけますか?
当院は1964年、先代院長のお父さまが創設したものです。私は先代の血縁というわけではなく、もともとは総合病院や大学病院に勤め、泌尿器科を専門としていました。2012年に開業し訪問診療専門のクリニックを運営していたところ、縁あってお声がけいただき、2016年にこちらの院長を引き継ぐことになりました。そういった経緯もあり、通常の入院、外来診療以外に在宅医療にも力を入れて取り組んでいます。入院設備としては、自宅復帰支援のための「地域包括ケア病棟」が40床、継続的な療養が必要な患者さんのための「医療療養病棟」が60床、併設の「介護医療院」が158床で、急性期後の療養・リハビリが中心。法人グループ内には自宅復帰に向けたリハビリを行う介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどもあり、急性期以外は在宅療養からリハビリ、長期療養まで、患者さんがどんな状態でも見ていける体制になっています。
病院が直接在宅医療を行うのは、珍しいのではないでしょうか?
多くはないと思います。病院ならではの在宅医療の良さは、やはりすぐに入院措置が取れるところではないでしょうか。急な体調悪化などで入院が必要になることはありますし、そんな時にすぐにベッドを確保できるのは大きいですね。当院では、急性期病院からの転院や在宅から入院が必要になった患者さんは、まず地域包括ケア病棟で受け入れています。症状は、肺炎や骨折から、がんの末期の方、術後の後遺症や体力の低下ですぐには在宅復帰が難しい方とさまざまです。そこから、リハビリを経て自宅復帰ができる人は自宅へ、自宅復帰が難しい人で、医療面のサポートが必要な方は医療療養病棟、軽微の方なら介護医療院へ移っていただきます。状態によっては法人内で連携を取り、当法人内の介護老人保健施設や特別養護老人ホームをご紹介することもあります。
在宅医療では、どんなことを大切にされていますか?
患者さんが在宅療養を望む理由は、慣れ親しんだ家で過ごしたいから、経済的な不安があるから、最期までたばこが吸いたいから、ペットの猫と一緒にいたいから……と人それぞれ。そんな一人ひとりの事情をできる限りくみ上げて、患者さんがご自宅で安心して過ごせるようサポートするのが在宅医療です。そこでは、医師の言葉は非常に大事だと思っています。たとえ病状が同じでも、最期を迎えられた時に、「ご家族さんも頑張りましたね」「幸せな最期でしたね」というだけでも、全然違うと思いますし、言葉一つで患者さんとご家族が幸せに感じたり、不幸に感じたりすることは間違いなくあるからです。たとえ短い期間だとしても、患者さんが「この選択をしてよかったな、幸せだったな」と思えるようには常に意識していますし、その思いは私たち医療者が絶対に失ってはいけないものだと思います。患者さんの幸せに少しでも貢献できれば、との思いで診療しています。
病棟でのリハビリや外来についても教えてください。
リハビリは一人ひとりの状態に合わせ、自宅に戻ってもご自身が生活に困らない、ご家族が困らないまでの回復を目標としています。専門職を中心とするリハビリチームを組み、何が必要かを総合的に考え、実践しているのが特徴です。地域包括ケア病棟でのリハビリを終えても自宅復帰が難しい方は、症状に応じて医療療養病棟、介護医療院へと移っていただき、「入院期間を終えた患者さんの行き場所がない」ということがないようにしています。病棟でのケアとしては、誤嚥性肺炎を防ぐため、定期的に歯科医師に診療に来てもらい、口腔ケアをしてもらっています。外来診療は内科のほか、曜日により整形外科や皮膚科も診療しています。大学病院などから専門の医師に診療に来ていただき、必要に応じて近隣の急性期病院と連携しながら、治療やフォローアップを実施しています。健診なども行っており、地域住民の健康管理に寄与したいと考えています。
最後に、今後の展望について一言お願いします。
まずは、引き続き在宅医療に力を入れていきたいと考えています。地域のご高齢の方は向こう何十年かは増えていくと予想されており、在宅医療の受け皿は不足している状態です。病院という箱の大きさは決まっていますが、在宅医療は箱の外で行えるものなので、しっかりとニーズに応えていきたいと思います。当院の役割は、まずは地域に必要な在宅医療を充実させるとともに、急性期治療を終えた患者さんに切れ目のない医療を提供すること。ただそこに留まらず、親しみやすい病院でありたいと思っており、看護学生の実習の受け入れや病院の駐車場での盆踊りなど、地域の行事にも力を入れています。地域に愛される病院であることは一番大事なところで、そこがずれると私も不幸ですし、従業員も患者さんも不幸になってしまいますからね。安心して利用できる場所、働ける場所であり続けるために、これからも力を尽くしていきます。
東 真樹 院長
1998年、大阪大学卒業。2006年、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。専門は泌尿器科。国立国際医療センター、亀田総合病院、東京大学医学部附属病院で診療経験を積んだ後、2012年に訪問診療クリニックを開業。医療法人あかつき会前理事長の退職に伴い、2016年から同会理事長、はとがや病院院長を務める。