医療法人 豊仁会 三井病院
(埼玉県 川越市)
秦 怜志 病院長
最終更新日:2024/12/09
めざすのは、地域で最も信頼される病院
西武新宿線・本川越駅をはじめ、東武東上線・川越市駅、JR川越線・川越駅からアクセスできる「三井病院」。観光客でにぎわう通りから少し中に入った住宅街の一角で、長く地域住民に親しまれてきた病院だ。2022年には、地域包括ケア病棟を備えた南館が完成し、手術室も集約。動線が改善され、医療者にとっても患者にとっても利便性が高まった。地域住民の高齢化を見据え、複合的な疾患を持つ人も1ヵ所で予防・診断・治療を完結できるようにと、診療科やドクターの充実をけん引してきたのが秦怜志(はた・さとし)病院長だ。「地域にとって何が必要か」「自分たちに求められている役割は何か」という課題感と真摯に向き合ってきた秦病院長に、同院の特徴や、今後の展望を聞いた。(取材日2024年10月24日)
まずは、病院の歴史からお聞かせください。
病院の設立は1961年ですから、60年を超える歴史があります。当初は外科の病院でしたが、1988年に総合的に急性期医療を行う病院となり、現名称に改称しています。私が病院長に就任したのは、免震構造の病院へのリニューアルを終えた2000年のことです。日本大学医学部附属板橋病院の外科にいた頃から週に1日ほどこちらで診療を担当していましたから、親しみがある場所で新たなスタートを切ったことになります。当時は周辺に病院が少なく、県内を見ても総合病院は限られていましたから、東武東上線沿線を中心に比較的広い範囲から患者さんがいらしていました。医療機関が増え、機能分化が進んだ現在は、病院の近くにお住まいの方に絞られてきた感じがします。
就任されてから、どのような点に注力されてきましたか?
機能面とホスピタリティーの強化です。機能面は診療の質に直結するため、少しずつ拡充を図ってきました。具体的には、もともとあった本館に東館を加えて外来を拡張し、総合健診センターを設置したことが一つです。東館3階には超音波室と内視鏡センターをつくって健診における検査への動線を短くするとともに、予防医療に関わる領域を東館に集約したかたちです。また、2022年には南館が完成しました。南館には、本館にあった手術室を移動した中央手術センター、地域包括ケア病棟のほか、ずっと取り組みたいと思っていた血液浄化センターを開設しています。周辺の医療施設や院内の関連部署と連携し、腎臓の状態の悪化や透析以外での入院が必要になった際には当院に入院していただけるようになりました。2023年から本格的に稼働し始めたので、これからできるだけ多くの方のお役に立ちたいと思っています。
診療科も充実していますね。
チーム医療で、大学病院と遜色ない医療を提供することができています。例えば、私が担当する乳腺外科では、乳腺腫瘍内科、形成外科などと連携し、検査から診断、手術治療、薬物療法、リハビリテーション、乳房再建まで一貫して行うことが可能です。同様に、消化器外科でも内科と連携し、患者さんの状況に応じて内科の内視鏡下手術、腹腔鏡を中心とした外科的手術を使い分け、肝胆膵の悪性疾患から良性疾患の胆石、胆嚢炎まで対応しています。整形外科も守備範囲が広く、脊椎のほか肩関節にもエキスパートがいるのが特徴ですね。人工股関節置換術も数多く対応してきており、手や肘については手肘の外科を専門に診る外来を設けています。地域のクリニックから難症例を受け入れるほか、手術の合併症を防ぐための周術期口腔機能管理に取り組む歯科口腔外科がある点も、安心して手術を受けていただけている要因の一つではないでしょうか。
ホスピタリティーについてもお考えをお聞きしたいです。
機能面だけ強化しても、「地域で最も信頼される病院をめざす」という理念を体現することはできません。シンプルな言葉ですが、スタッフが親切であるということは信頼される病院になる上で非常に大切な要素です。つらさや不安を抱えて受診される患者さんも、対応するスタッフの対応が温かければ少し救われる気持ちになるでしょう。急性期医療に対応する病院は得てして慌ただしく、目の前のことで手いっぱいになりがちだからこそ、機能とホスピタリティーを両立できる病院でありたいと思います。このことは、就任してから折にふれて職員に話をしてきました。地道に伝え続けた結果、最近になってみんなの意識に根づいてきたと感じます。
最後に、読者へのメッセージと今後の展望をお願いいたします。
これまでお話しした分野に加え、眼科、泌尿器科、形成外科も積極的に手術を行い、遠方の病院へ行かずとも地域で高度な治療を完結できるようにしています。白内障、前立腺肥大、身体表面の病気や傷などでお困りの方は、ぜひご相談ください。形成外科のほかにも美容皮膚科も標榜しています。また、私は内分泌も診ますので、甲状腺などホルモン異常についてもお気軽にご相談いただければと思います。今後も引き続き、時代のニーズに沿った医療で地域の皆さんの健康に貢献していきたいですね。急性期と地域包括ケアの両輪に注力することによって、職員一人ひとりの理想とする働き方に沿ったキャリアパスを提供していくことも、病院長としての役割だと思っています。働きがいのある職場をつくることで、自然とホスピタリティーが生まれる好循環につなげていきたいですね。
秦 怜志 病院長
1985年日本大学医学部卒業。日本大学医学部附属板橋病院外科病棟医長・医局長、外科外来医長、外科講師を歴任後、2000年より三井病院病院長就任。専門分野は、乳腺腫瘍、食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓がんなどを扱う乳腺消化器外科。日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。