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独立行政法人国立病院機構 下総精神医療センター

(千葉県 千葉市緑区)

女屋 光基 病院長

最終更新日:2023/03/06

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患者の人権を尊重し適切な治療を提供

緑区辺田町、自然豊かな一角にあるのが「下総精神医療センター」。ここでは精神科の一般診療に加えて、精神科救急、薬物依存症、精神疾患と結核の合併症など民間病院の精神科では対応が難しい患者の治療も行っている。 心神喪失や心神耗弱状態で重大な問題行為を起こした人を治療する心神喪失者等医療観察法に基づく病棟があるのも特徴。2015年から病院長として同院を率いているのが女屋光基(おなや・みつもと)先生だ。女屋院長は「さまざまな状況で当院に来た患者さんが、再び社会の安全を脅かすことのないよう、患者さん自身の人権も考えつつ、社会の流れなども考慮しながら適切な医療の提供に努めたいですね」と話す。2017年に完成した新病棟の個室には、球形のドアノブやドアと壁との隙間がないちょうつがいなどさまざまな細かい工夫がなされ、患者の安全を守れるよう配慮されている。女屋院長に診療の特徴などについて話を聞いた。(取材日2023年2月9日)

病院の成り立ちについて教えてください。

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当院は1941年に陸軍の病院として頭部に外傷を受けた軍人の治療を目的に開設されたのが始まりです。戦時中、同様に軍の病院であった国府台病院は精神科が中心でしたが、患者が増えたため当院でもまもなく精神科中心病院になりました。戦後は厚生省に移管されて国立下総療養所となりました。当時、関東にある国立の精神科の3大病院として当院と国府台病院、武蔵療養所がありましたが、国立病院の独立行政法人化に伴い、国府台と武蔵は統合や組織移管、再編などを経てそれぞれ国立国際医療研究センター国府台病院、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターとなっています。当院は2004年から国立病院機構下総精神医療センターとして発足し現在に至ります。ここは千葉市内でありながら自然が豊かで敷地も東京ドーム約4個分と広大です。夏場にはヤギが雑草を食む姿も見られ、ストレスの多い社会から離れて療養するのには適した環境だと思います。

どのような患者さんや疾患を診ているのでしょうか。

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当院は千葉県の精神科救急医療の基幹病院となっていますので、精神疾患の救急患者さんを数多く診ています。救急で来られた方の中には措置入院の患者さんも多いですね。また、結核合併症用の陰圧された個室があり、現在は新型コロナウイルス感染者用として中等症以上の精神疾患患者さんを受け入れています。認知症の患者さん、暴力など攻撃的な言動が前景に出る患者さんなどは当院で対応しています。アルツハイマー型認知症に限らずレビー小体型認知症も攻撃的な行動が出る場合が多く一般内科では対応が難しいので当院で診ることが多いです。薬物依存症や賭博、窃盗などを繰り返す患者さんも診療をしています。最近では虐待を受けた患者さんの需要も多く、増えてきました。小児科は15歳頃までの子どもの診療を行うことが一般的で、思春期の子どもを診られる専門機関は少ないのです。最近は児童相談所からの相談も多いですね。

こちらの病院ならではの診療があるそうですね。

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心神喪失者等医療観察法に基づいた病棟を開設しています。医療観察法というのは、精神疾患の患者さんが殺人や放火、強制性交、傷害などを犯した時に精神鑑定を受けて責任能力がないと判断された場合、精神科の専門病院で治療を受けて社会復帰をめざそうというものです。当院には34床あり、約40人以上の看護師が手厚い看護をしています。医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士など多職種チームが患者さん個別の治療計画を作り、連携を図りながら再犯防止と社会復帰に努めています。薬物やギャンブル、万引きなどの患者さんに対しては、特に専門性の高い医療の提供に努めています。 また、訪問看護ステーションも新たに設置して、訪問看護のみならず訪問診療、さらにデイケア、作業療法などによって地域に暮らす患者さんをサポートしています。

脳の研究も行っていると伺いました。

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はい。当院には私を含めて解剖を行える者が3人在籍しています。最近では統合失調症や双極性障害は機能性の脳の病気と考えられていますが、脳にどのような変化が起きていたか、それを解明するために亡くなった患者さんの脳の中を直接調べることはとても重要です。またアルツハイマー型認知症についても、本当に脳の中にアミロイドβが蓄積しているかどうかはやはり顕微鏡で直接見る必要があります。認知症やアミロイドβに関してはQST病院(旧・放射線医学総合研究所病院)とも共同研究しています。脳を病理解剖して研究することで診療における精度が向上しますし、新薬開発の一助にもなります。精神科専門病院として脳研究の一翼を担うことも当院の大きな役目だと思います。

今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。

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引き続き国立病院機構の精神科専門病院として高規格の治療を行いながら民間をリードしていくことが大切だと思っています。当院に来られた患者さんが再び社会の安全を脅かすことのないよう患者さん自身の人権も考え、社会の流れも配慮しながら適切な医療の提供に努めていきたいですね。これまでお話ししたように、当院の主な役割は他の医療機関とは少し異なるかもしれません。民間でできないこと、一般的な精神科では難しいことに対応するのが公的病院の役目であると思います。ただ、当院では一般的な精神疾患も診ていますし、外来診療では予約制をとっているわけではありません。最近は地域のメンタルクリニックの予約が数ヵ月先になるという話も聞き及びます。すべてのことにお応えできるとは限りませんが、もし、必要な時には気軽に受診していただきたいと考えています。

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女屋 光基 病院長

1987年産業医科大学卒業。国立病院機構 東京医療センターで研修後、慶應義塾大学医学部精神・神経科学で臨床・研究に携わる。フランス留学を経て2001年に下総精神医療センター勤務。診療部長などを経て2015年病院長就任。日本精神神経学会精神科専門医。専門は神経病理。脳の器質的な変化と精神疾患との関連について研究。

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