医療法人聖仁会西部総合病院

- 埼玉県さいたま市桜区大字上大久保884
- 内科
- 呼吸器内科
- 循環器内科
- 神経内科
- 消化器内科
- 内分泌・糖尿病内科
- 外科
- 消化器外科
- 乳腺外科 すべて見る
二次救急に対応する一方で、回復期や慢性期までをサポートするケアミックス型の病院として地域医療を支える『西部総合病院』。急性期治療では脳卒中や骨折、肺炎など高齢者に多い疾患に対応しており、入院では急性期・地域包括ケア・回復期リハビリテーション・医療療養と4種類の病棟機能を生かしたシームレスな治療を提供。在宅復帰後の患者には、訪問診療も行っている。
「地域に根差した病院として、病病連携、病診連携の重要性を実感しています。これまで以上に、緊密なネットワークを築いていきたいですね」と犬飼敏彦院長。
同院では新型コロナウイルス感染症の流行を受け、早期に感染対策チームを発足させたほか、予約制の発熱の外来を開設。専属の医師と看護師が発熱症状のある患者の診療にあたっている。また平成31年4月には院長の専門分野でもある甲状腺疾患の外来を開設し、地域のクリニックからの紹介患者を積極的に受け入れるなど、医療ニーズに応える診療で力を発揮している。
犬飼 敏彦院長
1978年に群馬大学医学部卒業。米国・カナダへの3年間の留学を経て、1994年より獨協医科大学越谷病院(現・獨協医科大学埼玉医療センター)に勤務。一般内科教授、内分泌代謝・血液・神経内科教授、糖尿病内分泌・血液内科教授を歴任し、2019年から現職。糖尿病治療を専門とし、埼玉県糖尿病協会の会長を務める。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。
多職種チームによるカンファレンス。職種ごとの専門性を発揮しながら、協力して治療にあたる
教育入院のプログラムは、糖尿病の知識を身につけてもらい、生活習慣の改善につなげるのが目的
埼玉県糖尿病協会の会長でもある犬飼院長が、同院で実践するのが糖尿病のチーム医療。多職種チームがそれぞれの専門分野から治療に関わり、連携を取りながら患者一人ひとりに寄り添う医療を提供する。きめ細かいサポート体制が強みだ。
糖尿病は「サイレントキラー」とも呼ばれ、初期症状ではわかりにくい疾患。三大症状である喉が渇く、全身の倦怠感、多飲多尿の症状が出たときには、すでに進行している状態とされ、症状が出る前に健康診断で早期に発見することが重要である。同院では健診部門で糖尿病をはじめとした生活習慣病の早期発見・早期治療に取り組んでいるほか、糖尿病の治療でチーム医療を実践しているのが特徴だ。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などの多職種スタッフがチームを組み、入院患者を対象として定期的にケースカンファレンスを実施。それにより患者一人ひとりに合わせた、オーダーメイドな治療が可能になる。
「糖尿病は長い期間にわたり生活習慣の改善に取り組み、血糖値をコントロールしなければいけない疾患。患者さんご自身がやる気を持って治療に取り組むことが何より大切です」と、長年、糖尿病治療に携わる犬飼院長は話す。時には患者を励まし温かい言葉をかけながら治療を進めていく。
令和元年9月からは糖尿病の教育入院のためのクリニカルパスを導入。1週間の入院期間のプログラムを作成し、効率的に検査や治療を行えるようにした。教育入院では医師による講義に加え、管理栄養士が食事指導、理学療法士が運動指導を行うなど多職種チームがそれぞれの専門分野で患者をサポートする。生活習慣を見直すことで、患者自身が治療に対し積極的になるなど、意識の変化につながるという。
「地域の皆さんの健康寿命を延ばすためにも、今後も生活習慣病の予防、治療に力を入れていきたいと考えています」
糖尿病が進行すると、合併症として動脈硬化を引き起こすことがあるため、同院ではCAVI検査を積極的に活用している。CAVI検査とは腕と足首の血圧を測定することで、動脈硬化の進行度を調べることができるもの。動脈硬化度が高い場合、血糖、脂質、血圧のコントロールが必要になる。健診のオプションとして受けられるほか、糖尿病の教育入院でも実施している。
検査ではあおむけに寝た状態で、両腕と両足首の血圧を測定。簡単な検査なので5分ほどで終了する
同院では平成31年2月に院内にあった健診部門を新棟へと移転。機能を集約させたことで、これまで以上に効率的に健診を受けられるようになった。さいたま市の各種がん検診や企業健診に力を入れ、生活習慣病の予防にも取り組んでいる。
同院外来棟から道路を挟んで向かい側にある新棟に開設された健診部門。受診者が利用しやすいようにと動線に工夫を凝らし、施設内に検査機能がコンパクトに集約されているのが特徴だ。そのため待ち時間が短縮され、一般健診であれば受付から2時間以内には終了する。短い時間で効率良く回ることができるので、忙しく働く世代でも受診しやすいメリットがある。
同部門ではがん検診などのさいたま市健診で、地域住民の健康を支える重要な役割を果たしているほか、企業健診にも力を注ぐ。特に生活習慣病予防健診に取り組み、健康的に働き続けられるようサポート。検査終了後、その日のうちに結果が出るものに関しては、その結果をもとに健診部門の専任の医師が保健指導を実施する。企業健診は毎年受診している人が多いため、蓄積されたデータから総合的に見て、どのような生活習慣の改善が必要か、どのようなことに注意すれば良いのか、詳細にアドバイスできるという。受診者からは、「気になる症状があるが外来を受診したほうがいいのか」「どの診療科に行けば良いのかわからない」といった相談が多く寄せられており、気軽に相談できる窓口として活用されている。
人間ドック(3万5000円〜)では、脳のMRI検査や乳がん検査がオプションとして受けられるほか、異常がある場合やさらに詳しい検査が必要な場合は、同院での診療にスムーズにつなげる体制が取られている。そうした外来との連携が健診部門の強みである。同部門では疾患の早期発見のためだけでなく、予防のためにも定期的な健診を推奨している。
健診部門の医師とスタッフ。親切な対応を心がけている
西部総合病院の向かいにあるため、行き来がしやすい
乳房の検査をするマンモグラフィ機器を完備。検査は女性の技師が担当する
一つの建物に健診機能を集約させたことで、待ち時間が短縮された
白を基調とした清潔感あふれる待合室。窓からは明るい光が差し込む
苦痛の少ない経鼻内視鏡も実施している。希望する受診者は多いという
同部門では2階の一角に、乳腺のエコーやマンモグラフィなど女性の検診を行うための専用フロアを設けている。待合スペースや更衣室もあり、検査から問診まですべてフロア内で完結。医師や検査技師、スタッフも女性が中心となって対応している。プライバシーに配慮された空間で、女性ならではの悩みや疾患について気軽に相談できる環境だ。
女性がくつろげるようにと細部まで配慮された空間。トイレや洗面台もフロア内に配置されている
理事長
西村 直久先生
1995年獨協医科大学卒業。その後、同大学越谷病院(現・獨協医科大学埼玉医療センター)循環器内科入局。1999年聖光会グループ医療法人聖仁会・光仁会理事長に就任。現在は埼玉県医師会理事、浦和医師会理事、埼玉県病院団体協議会議長を務める。
待合室では椅子の間隔を空け、ソーシャルディスタンスを確保
入り口では検温を実施。受付はビニールカーテンで仕切られている
同院を運営する「聖光会グループ」では、感染症を管理・制御するための仕組みとして、「西部総合病院」、「春日部厚生病院」に「SICS:シックス(聖光会グループ感染制御システム)」を導入している。院内には感染対策部門が設置され、感染対策委員会または感染制御チームが安全に医療業務を行えるように取り組んでいるのが特徴だ。メンバーには感染症に対する経験豊富な専任の医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師が配置され、院長が感染管理の任にあたる。
院内の安全に関しては、医療安全委員会や管理職会議などで感染症の発生防止から発生時の対応まで、徹底した対策を講じ、安心して医療を受けられる体制が整っている。また、厚生労働省が定める感染防止対策加算の施設基準を各病院が満たし、院内での定期的な感染症対策研修、地域の基幹病院でのカンファレンスへの参加など、新鋭のエビデンスに基づく感染対策が実践されている。
同院では、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、病院入り口に赤外線サーモグラフィを設置。来院者の体温を瞬時に測定し、発熱があればすぐに隔離スペースへ誘導する。来院者の手指消毒も徹底され、受付・会計窓口は飛沫感染防止のためビニールカーテンで仕切り、よく手が触れる場所の定期的な清掃や消毒を強化している。また、発熱などの症状のある患者には予約制の発熱の外来を設けて、専用の出入り口や屋外に医療テントなどを設営し、発熱症状のない患者と時間的・空間的に分けることで、安全性が確保できるよう工夫している。
設備面では、発熱者の診療や検査、待合のスペースに「HEPAフィルター(手術室や航空機で使用されている空気浄化装置)」を搭載した空気清浄器を導入。そうした感染対策により、安心して受診できる環境となった。同院含め、同グループの各病院では新型コロナウイルス感染症に対する入院治療は行っていないが、地域の感染症指定病院などと連携を取りながら対応している。