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医療法人同和会 千葉病院

(千葉県 船橋市)

小松 尚也 院長

最終更新日:2022/04/05

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質の高い治療で急性期からの社会復帰支援を

一昔前、精神科病院は固く閉ざされた扉の向こうの世界だったといわれる。「閉じ込められる」「入ったら出て来られない」といったネガティブな印象も強く、入院は社会から切り離され自由を奪われることと同義という見方もあったという。「千葉病院」は、そうした精神科医療の在り方に早い時期から異を唱え、「自由な環境の精神科医療」を掲げて精神科の開放に努めてきた病院だ。2013年から同院の5代目院長を務める小松尚也先生もそのバトンを受け継ぎ、地域とともにある精神科医療の確立に向けて力を注いできた。「急性期に対して質の高い集中的な医療を提供し、地域にお返しする。当院から地域へ、地域から当院への流れを徹底することがわれわれの役割」として、あらゆる精神疾患を受け入れるための全方向型の病院づくりに取り組む小松院長に話を聞いた。(取材日2022年3月8日)

戦後の精神科医療において、重要な役割を担ったと伺いました。

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当院は精神科医療を行う病院として1956年に開設しました。戦前から戦後間もない頃の精神科病院の入院治療の対象は、主に神経梅毒の患者で、統合失調症の方はそれほど多くなかったようです。と言うのも、その頃統合失調症の患者は自宅で軟禁されることが多かったからです。1950年に精神衛生法が成立し、統合失調症の患者が病院へ入院する仕組みがつくられる中で、当院は千葉県船橋市に開設されました。しかし開設初期の頃は当院にも鉄格子がありました。当時は安全で有効な治療法がなく、監禁および監視という手段を取らざるを得ませんでした。そのため、誤解や偏見が世間で広まっており、有用な薬物治療の導入によって退院できる体制が整っても、地域移行は容易には進みませんでした。昭和40年代半ば、当院の第3代の院長である仙波恒雄先生が、そのような状況を打破すべく、「鉄格子を取って患者に地域で暮らしてもらおう」と動き出したのです。

先進的な取り組みをされてきたのですね。

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患者さんの自由と安全を同時に守るため、外した鉄格子の代わりになる窓ストッパーを大手メーカーと共同開発したと聞いています。以来、当院は「最善の行動と信頼」を理念に掲げ、「自由な環境の精神科医療」「社会復帰をめざした治療プログラム」「明るい雰囲気とプライバシーに配慮した環境」の3つを特色とする精神科医療を行ってきました。急性期に適切な医療を提供し、早期社会復帰を支援する場所として、地域とのつながりを育みながら患者さんの自律を支援してきたのです。患者さんの自助活動の場にしたいと、喫茶活動の場を設けたのもその一つです。自助活動を通して、少しずつ地域の人とふれあう機会を増やし、社会との接点を広げていってもらえればと思っています。

退院後のサポートにも力を入れているのですね。

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支援は、入院してすぐに始めなければなりません。患者本人のみならず、家族への支援も必要です。入院患者の多くを占める統合失調症の初期は、幻覚、妄想、興奮、昏迷の症状です。発症年齢は15歳から30歳くらいまでが多いといわれています。急性期には、医師の診断と治療の力、直接相対する看護の力が必要です。しかし急性期の後に必要なのは、リハビリテーションであり、薬剤指導であり、社会資源の案内です。急性期の症状が治まった後は、現実との接点を見失わないような配慮と家族の支えが必要です。そのためにも家族への心理教育を当院では継続的に行っています。家族が病気に対する正しい知識を得て、患者本人に適切な対応をしていただくことが大切です。最近は副作用が少なく高い効果が望める薬も次々に使えるようになっていますので、外来のみで治療可能な統合失調症の患者も増えてきました。より一層、心理教育とリハビリの重要性は高まっています。

施設がとても明るいのも印象的です。

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2020年に建てた新館は、より開放的で明るい環境を意識してデザインしました。新館1階には新型のMRIとCT、2階には認知症の療養型病床、3階にはスーパー救急病棟が入り、各階から中庭のライトアップを眺めることができます。全体的に広々とした造りで、ほぼ個室なので、患者さんにもおおらかな気持ちで治療に臨んでもらえるのではないかと思っています。認知症の病床を設けたのは、高齢化に伴ってじわじわと患者数が増加しているのを体感しているからです。2014年からは千葉県の認知症医療センターの役割も担っています。新型コロナウイルス感染症流行下ではうつ病などの患者さんも増えましたし、精神科は社会の縮図だと感じますね。認知症やパーキンソン病など脳神経に関わる病気にも、併設のクリニックとの多職種のチームでうまく連携しながら、地域が求める医療を全方位的に提供していく必要があると考えています。

最後に、地域の皆さんに向けてメッセージをお願いいたします。

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千葉病院は、昭和40年代から、自由で開かれた精神科医療をめざしてきました。精神科の患者が、他の病気の患者と同様、地域で暮らせるようにさまざまな支援を行ってきました。21世紀になり、急性期および救急病棟を開設し、千葉県の精神科救急医療システムの一角を担っています。救急急性期から、社会復帰まで一貫した診療体制を提供しています。当院の理念である「最善の行動と信頼」の言葉どおり、患者および家族に対して、安全かつ安心できる医療を提供できるように、職員全員日夜努力しております。精神疾患に関することは外来や精神保健福祉士が常駐する地域生活支援室などにお気軽にご相談ください。今後とも、多くの患者家族が幸せな生活ができるよう、医療と社会をつなぐ場として力を尽くしてゆきたいと思います。

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小松 尚也 院長

1988年千葉大学卒業。同大の精神医学教室に入局し、入院病棟や外来棟を走り回るハードな日々を送る。その後、銚子市立総合病院精神科、松戸市立病院神経内科の研修を経て、千葉大学大学院に進学。PET装置を使って脳の代謝や血流を測定する研究を行い、 博士号を取得した。 千葉大学での勤務ののち、2005年に千葉病院着任。副院長を経て、2013年に5代目院長に就任した。

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