社会福祉法人恩賜財団済生会 千葉県済生会習志野病院
(千葉県 習志野市)
小林 智 病院長
最終更新日:2020/11/25
地域医療連携の中心的な役割を担う中核病院
千葉県の習志野市、船橋市、八千代市、千葉市の4つの市にまたがる広範囲な医療圏をカバーする「千葉県済生会習志野病院」。見晴らしの良い屋上庭園からは、晴れた日には富士山やスカイツリーを眺めることができる。急性期病院として2次救急に対応し、特に循環器分野では、心筋梗塞や心不全の重症患者が救急搬送された場合に医師がオンコールで駆けつける体制もとっているという。新たに心臓血管外科が新設され、循環器治療の幅も広がった。高齢化に伴い増加しているMSD(骨髄異形成症候群)や白血病、悪性リンパ腫などを治療する血液内科や、リウマチ・膠原病部門など、特徴のある診療分野にも対応している。2018年4月から院長を務める小林智先生に、同院の強みや地域の中で果たす役割、開業医院との医療連携についてなど話を聞いた。(取材日2018年6月13日)
地域の中でどのような役割を果たされているのでしょうか?
急性期病院として2次救急に対応することと、地域医療支援病院として近隣の診療所の先生方と連携をとりながら、ご紹介患者さんを受け入れるのが当院の役割です。所在地は習志野市ですが、病院の敷地で見るとほとんどが船橋市に入っているため、船橋市からファーストコールで当院に救急搬送されるケースも多くあります。その2つの市と、さらに隣接する八千代市、千葉市の幅広い地域が当院のカバーする医療圏です。千葉県の中では比較的病院が多いエリアですが、その分人口も多く、病院間での連携が重要になります。習志野市には4つの病院があり、それぞれの強みを生かして協力をしています。当院は循環器系と血液疾患、リウマチ、膠原病の治療にも対応できる内科系に強みがあり、そうした患者さんのご紹介を多く受けています。習志野地区の救急当番日には、循環器科、脳神経科、外科、内科の医師が病院に待機し、緊急搬送に備えた体制を整えています。
病院間でスムーズに連携がとられているのですね。
地域の開業医院の先生方との病診連携にも力を入れており、年に2回の医療連携フォーラムや診療科ごとの勉強会を定期的に開催しています。症状の落ち着いている方や、高血圧や糖尿病など経過観察が必要な疾患はかかりつけの医院を受診していただき、必要があれば当院で受け入れて検査・治療をする緊密な連携ができています。現在、船橋・習志野エリアで計画中なのが「心不全パス」。高齢者の心不全は、症状の悪化によって入退院を繰り返してしまうため、いかに悪化させないかが重要です。そこで循環器治療に力を入れている当院と、船橋市立医療センター、谷津保健病院の3病院が連携し、心不全治療のネットワークを構築しました。患者さんには塩分制限量や水分摂取量、処方薬などを書き込んだ心不全手帳を持っていただき、その情報を開業医院や介護現場のスタッフが共有します。それによって症状の悪化を防ぐといった取り組みです。
強みのある診療について教えてください。
カテーテル治療を行う循環器内科に加えて、2018年4月から新たに心臓血管外科を開設しました。手術室も3室増設。これまで開心術が必要な場合は他の病院にご紹介していましたが、当院でできるようになります。それによって循環器内科の治療の幅も広がりました。リスクが高い患者さんのカテーテル手術ができるようになるほか、今後施設基準をクリアすれば、カテーテルで石灰化した冠動脈を削る手術も実施可能です。また、血液内科やリウマチ・膠原病部門も特長です。専門の医師による診断、治療ができるため重要な役割を果たしていると思います。高齢化に伴いニーズが高まる整形外科は、関節グループと脊椎グループに分かれて、それぞれ手術・治療にも積極的です。5人の医師が在籍する泌尿器科では、他の急性期病院から治療を依頼されるケースもよくあります。
病院運営ではどのようなことを大切にされているでしょうか?
私が理想とするのは、ここで働く職員やそのご家族が病気になったときに、「この病院で診てもらいたい」と思ってもらえるような病院にすること。実際、そうして利用してくれる職員もいますし、病院とつながりのある業者の方たちが利用してくださることもあって、それは非常にうれしいですね。それだけ当院を信頼してもらえているのだと思います。開業医院の先生方が患者さんをご紹介してくださるのもそうですが、数多くある病院の中からここを選んでいただけて、とてもありがたいです。済生会はもともと、生活に困った方たちへの医療の提供を目的に設立されました。病院を運営するにあたっては、そうした背景を理解し、実践していかなければなりません。低所得者を救済する「無料低額診療」に加えて、病院に来られない方にも対応するために、今後は行政とのネットワークを活用し、地域の中で困っている方に手を差し伸べられるような活動を行ってまいります。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
病院の基本方針の一つに「全ての職員はレベル向上のため研鑽し、最善のチーム医療を行います」という項目があります。常にスキルアップを図れるよう、教育・研修部門を立ち上げて、外部の研修にも積極的に参加を促しています。これまで当院では、大規模災害時に医師や看護師のチームを被災地に派遣するなど、災害対策に力を入れてきました。2017年12月に千葉県の災害拠点病院に指定されたこともあり、今後地域の中で果たす役割はますます大きくなっていくでしょう。被災者を受け入れるための体制づくりをはじめ、習志野市との合同訓練への参加、水や食料の備蓄、職員の訓練など、災害を想定した準備に取り組んでいきます。いずれは重度の外傷にも対応できる救急部や、地域のニーズが高い産科の再開・体制強化もめざしていきたいと考えています。「困ったときに頼れる病院」としてこれからも努力を続けてまいります。
小林 智 病院長
1983年に千葉大学を卒業。千葉大学医学部第三内科(現:循環器内科)に入局。循環器内科を専門として千葉県済生会習志野病院の前身である国立習志野病院に勤務した後、心臓血管研究所付属病院で不整脈治療の研鑽を積む。2001年から習志野病院へ。2018年4月に院長に就任。日本循環器学会循環器専門医。「心臓は治療の成果がはっきり表れる臓器。治療法もどんどん進化しているのでやりがいがあります」と話す。