松本 義明 院長

1954年の開業から65年以上の歴史があり、急性期医療と療養型医療それぞれの役割を担う「一条会病院」は、同敷地内に2014年から診療を始めたかかりつけ医としての役割を持つ一条会クリニックと連携することで、患者に一つの場所でスムーズに医療を提供できるような体制を提供している病院だ。一方で、多くの救急搬送を受け入れ、地域の救急医療の分野でも重要な役割を担っている。約4000坪の広大な敷地は緑にあふれ、何かと不安の多い入院患者の心を癒やしてくれるようだ。そんな癒やし要素にあふれた病院をまとめる松本義明院長に地域医療の中での役割や今後の展望などを聞いた。（取材日2019年2月6日）

おかげさまで1954年に開院して以来、この地で地域医療に微力ながら貢献させていただいてきました。このエリアは救急医療の医療資源が比較的乏しく、当院では多くの救急搬送を受け入れ、急性期の医療を提供するだけでなく、急性期後の療養期の患者さんも受け入れています。また2014年には外来部門を独立させて敷地入口に「一条会クリニック」を開設しました。患者さんにとって、日常的なかかりつけ医としてのクリニック、そして急性期や療養期の当病院と、より便利で身近な存在になれたかと考えております。ご信頼いただいて何世代にもわたって通院してくださる患者さんもおり、たいへんうれしく思っています。

当院は、急性期医療を担う一般病床と療養病床の両方の機能を持っています。医療の現場で患者さんがお困りになるのは、急性期医療の段階を終えたものの退院するには不安があったり、なかなか退院後の受け入れ体制がご家庭で整わなかったりする場合です。そんな時当院では院内の一般病床と療養病床の連携により、患者さんの要望・状況に適した医療が提供できるよう体制を整えています。また療養病床に入院中に体調が急変した場合でも、急性期医療担当のスタッフ陣によりスピーディーな対応が可能です。そして突出した専門的な分野をつくるのではなく、医療のオールラウンダーとしてどんな疾患・症状の患者さんに対しても一定基準以上の医療を届けられるよう体制を整えています。特に高齢の方の場合は複数の疾患をお持ちの場合も多いですから、いわゆる「どんな疾患にも対応できる」という力が必要だと考えています。

当院は長年地域のかかりつけ医としての役割もになってきました。しかしその一方で病院の外来であると気軽に通いにくいという声もいただいていたため、外来部門を独立させて、より患者さんが通いやすいよう体制を整えました。効率的な医療をご提供すべく、早期から電子カルテを導入して一条会病院と一条会クリニックで患者情報を共有し、既往歴はもちろんのこと、検査結果や入退院情報など診療に必要な情報を一括管理することで、スムーズな医療の提供と画像などを使ったわかりやすい説明に取り組んでいます。また普段から通院してくださることで、病気の芽を早期に発見して治療につなげ、入院加療の後はまたクリニックでフォローをして異常を見逃さないようにすることで、予防から早期発見、早期治療の継続した医療をお届けできるようにしています。

当院はがんの拠点病院となることもめざしており、がん患者さんも大勢来院されています。他院から転院されていらっしゃる方も多いのですが、その中でも多く聞く声が「医師としっかりと相談できず満足いく医療が受けられなかったので転院したい」というもの。当院ではできる限り患者さんやそのご家族の話を聞き、ご要望に沿った治療やお看取りを実現できるよう心がけています。また病気の患者さんはやはりご不安の大きいものですが、ご家族の不安も同様に大きいものとお察しします。患者さんはもちろんご家族ともよくお話させていただいて、皆さんが納得して満足いく医療が受けられるよう取り組んでいきます。

当院はいわば患者さんにとっての医療のホームグラウンド的な存在でありたいと思っています。日々の健康を見守る中で専門性の高い高度な加療が必要なら、その症状・疾患に適した専門機関をご紹介し、また当院に戻ってきていただいてフォローさせていただいています。さらに近隣の開業医の先生方とも連携して、患者さんが通いやすく相談しやすい体制を構築していきたいと思っています。一度診させていただいたら責任を持って継続して診させていただく覚悟を持ち、「一条会に行けば何とかしてもらえる」「転院してもまた戻ってきたい」「いつでも戻ってこられる」「当院に任せて良かった」などと思っていただけるような医療のご提供にこれからも尽力してまいります。