社会福祉法人聖テレジア会 鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院
(神奈川県 鎌倉市)
足立 徹也 院長
最終更新日:2020/11/25
鎌倉の地で質の高いチーム医療を追究
1929年に結核療養所として七里ヶ浜に開設され、その後、変遷を経て、現在では128床の回復期リハビリテーション専門病床を持つ病院となっているのが「鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院」。脳血管疾患や大腿骨頸部骨折など重篤な病気やケガによって起きてしまった体や精神の障害から回復をめざし、経験豊かな日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医をはじめ、多数の専門職、スタッフが一体となったチーム医療で一人ひとりの患者に最適な医療サービスを提供している。また病院近郊に西鎌倉地域ケアセンターを開設し、訪問看護、デイサービス、ショートステイにも取り組み、地域包括ケアシステムの一翼を担う。豊かな自然環境を生かし、敷地内にはリハビリテーションの一環として園芸や畑仕事が楽しめる菜園や散歩コースも設置されている。リハビリテーション専門病院として、人的、物的、環境面の基礎的な整備を整え、さらに高機能で、良質のリハビリテーション病院へと発展するための努力を続ける同院について足立徹也病院長に話しを聞いた。(取材日2016年11月29日)
まず、こちらの病院の特徴を教えてください。
当院は回復期リハビリテーションを中心に行う医療機関です。回復期リハビリテーションとは、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などで治療を受け、急性期は脱しても医学的・社会的・心理的なサポートが必要な患者さんに対して、家庭や職場に復帰するための理学療法、作業療法、言語聴覚療法などの各種リハビリテーションを集中的に行うことです。当院では専門医師を中心に、医師や看護師、専門スタッフが一体となったチーム医療で一人ひとりの患者さんに適した医療サービスを提供しています。また「入院生活そのものがリハビリテーション」という考えのもと、訓練室だけでなく、外出訓練病棟での生活を通じた多彩なトレーニングや、趣味や仕事を想定した屋外での活動など多彩なプログラムを実施しています。さらに外来診療や、キリスト教の精神に基づいた全人的医療としてスピリチュアルケア(心のケア)も行い、トータルに対応できるのが特徴です。
リハビリテーション医療についての思いをお聞かせください。
私は病気だけを診るのでなく、その人全体を診ることや、社会の中で幸せに暮らすために医療はどうあるべきかという点に興味をもってリハビリテーション科に進みました。そして日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医として横浜市立大学病院や横浜市総合リハビリテーションセンター、横浜市立市民病院などで、急性期、慢性期、生活期でのリハビリテーション医療を経験してきました。病院の機能分化が進み回復期リハビリテーション病棟を持つ施設が増えましたが、リハビリテーション専門医はまだ少ないのが現状です。当院では私以外にも専門医が在籍し、質の高い医療の提供を心がけています。また急性期病院での治療期間がどんどん短くなり、その一方で在宅診療への流れが強まる中で、急性期から慢性期、そして生活期へとスムーズに移行して患者さんの生活の質を向上させるために、回復期リハビリテーションの果たす役割は大きいと考えています。
病院運営の中でどのような点を大切にされていますか。
医師、看護師だけでなく、セラピスト(理学療法士・作業療法士)やケアワーカー、ソーシャルワーカー、言語聴覚士、管理栄養士、薬剤師など多職種のスタッフがチーム医療を行いますので、お互いに心豊かな人間性と知識・技術の向上を図り、質の高いチーム医療を追究することを診療方針として掲げています。また患者さんとして関わった方が回復し、亡くなるまでずっと何らかの援助を行うことがリハビリテーションの真髄だと私は考えていますので、当院に入院されている間の治療やリハビリテーションだけを考えるのではなく、急性期にどのような治療やリハビリテーションが行われてきたのか、退院後はどのようなリハビリテーションや支援が受けられるか、全体を視野に入れた対応を心がけるように伝えています。そのためにセラピストをグループ内のデイサービスに派遣してリハビリテーションを行うなど、回復期以外の患者さんに接する機会を設けています。
地域での病院の位置づけや役割について教えてください。
さまざまな機能を持つ医療機関や福祉施設、多くの関係職種が連携して、医療や介護、予防、生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築が進んでいます。私は急性期から生活期までの医療に関わってきた経験から、こうしたネットワークの必要性を痛感し、また急性期と生活期をつなぐ回復期を担う当院が、地域包括ケアシステムの中心的な役割を果たすべきだと考えています。そこで急性期病院との連携を深めるとともに、在宅復帰後のリハビリテーション・ケアの継続に向けて地域サービス機関との連携を深め、復帰後のフォローアップなどをサポートしています。さらに西鎌倉地域ケアセンターを院内に開設し、訪問看護やデイサービス、ショートステイも展開しています。また地域包括ケアシステムの実現には、地域住民も参加した街作り的な活動が必要と考え、開かれた病院をめざし、多くの方にボランティアとして積極的に協力していただいています。
地域の皆さんへのメッセージをお願いします。
リハビリテーション医療を中核とした機能を通じて、患者さんやご家族、そして地域の方々が安心して幸せに暮らせるよう、全人的医療を行うことが当院の理念です。リハビリテーション医療は患者さん一人ひとりの人生を考え、そのときそのときに最も必要であることを最適に提供することにその真髄があります。急性期病院との連携、地域で活動している医療・福祉関係の方々や、地域で暮らす方々との関係を円滑にし、さらに私たち自身が地域に出掛けていく活動にも力を尽くし、真の意味でのトータルリハビリテーションの中核施設として皆さんに貢献し、行政が行う施策にも積極的に貢献したいと考えています。生まれた時から、そっと目を閉じる人生の最後の時まで、生涯を見渡しながらの医療・福祉の実現は人の幸せにとって重要なものです。当院では外来診療からや在宅医療まで幅広いリハビリテーション医療で地域の皆さんの幸せにお役に立ちたいと考えています。
足立 徹也 院長
横浜市立大学医学部1979年卒業後、横浜市立大学病院リハビリテーション科に入局。神奈川リハビリテーションセンター、横浜市総合リハビリテーションセンターなどで、急性期から慢性期、在宅医療まで多様なリハビリテーションの経験を積み全人的な医療を志す。横浜市立市民病院のリハビリテーション科部長を16年間務めたのち、2009年から現職。日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医。