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腫瘍で止まり線量のピークを迎える
副作用軽減をめざす陽子線治療

医療法人 徳洲会 湘南鎌倉総合病院

(神奈川県 鎌倉市)

最終更新日:2022/11/30

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手術、抗がん剤治療と並ぶがんの治療法の一つである放射線治療は、体への負担が比較的少なく通院での治療が可能なことから、注目度が高まりつつある。進化し続ける放射線治療の中でその先端をいく陽子線治療は、陽子線の物理的特性を生かして、がん細胞をピンポイントに攻撃。周囲の臓器への影響を抑えながら治療ができるので、副作用の軽減が期待されている。「断らないがん治療」をめざして開設された「湘南鎌倉総合病院」の先端医療センターでは、2022年1月に念願だった陽子線治療をスタート。そこで、同院の放射線腫瘍科陽子線治療部長兼、先端医療センターのセンター長補佐も務める徳植公一先生に、治療の詳細を聞いた。(取材日2022年1月7日)

がん細胞の位置で止まり線量のピークを迎える陽子線。周辺臓器への影響を極力減らし副作用の軽減をめざす

Q陽子線治療とはどんな治療ですか?

A

360度どの方向からも照射可能な回転ガントリー

陽子線治療は放射線治療の一種で、エックス線やガンマ線といった光子線を使用するのではなく、水素の原子核である陽子を加速器で加速させることでできた陽子線を使用します。陽子線は巨大な電磁石を使用した回転ガントリーという装置の中で、強力な磁石で曲げられ、体の周囲360度いずれの方向からも病変に合わせてビームを当てることで、副作用を減らすことが期待されています。当院では、先端医療センター棟にテニスコート3面分以上の敷地面積の小型陽子線治療システムを設置し、2021年1月から順次治療を開始しています。

Qどのようながんに適しているのでしょうか?

A

今後も陽子線治療は発展していくという徳植先生

陽子線は1ヵ所に放射線を集中させることができるため、腫瘍の位置に集中させ周囲の臓器へのダメージを最低限に抑えて治療を行います。特に腫瘍が限局されたものに適していると言われています。保険がきく疾患は前立腺がん、一部の頭頸部がん、小児の固形がん、骨軟部腫瘍で、4月からは長径4cm以上の肝細胞がん、肝内胆管がん、局所進行膵がん、術後再発した限局大腸がんも加わる方向です。今後はこれら以外にも先進医療として治療を行う予定です。肺がんや肝細胞がん、食道がんなど呼吸で腫瘍が動く疾患には、呼吸に合わせて照射する方法と体内にマーカーを埋め込みそれに合わせて照射する方法の両方に対応できるよう準備を進めています。

Q陽子線治療のメリットを教えてください。

A

PET-CTは治療時と同じ体位が取れるよう工夫されている

陽子線の止まるという特性を利用すると陽子線を腫瘍で止めることができ、止まったところで力を発揮します。例えば前立腺がんの場合、がんのある前立腺に向けてたくさんの陽子線を投与した場合、周囲にある直腸や膀胱への影響を抑えることができます。それによって副作用の軽減が期待できることがメリットです。また、放射線は発がん性があるため体内にばらまかれることによる二次発がんが懸念されますが、陽子線を使えばそれも抑えることが期待できます。放射線療法と化学療法とを併用する化学放射線療法では、放射線を陽子線に置き変えることで無駄に照射される放射線を減らし、副作用の軽減につながるのは大きなメリットと言えると思います。

Q陽子線治療にはどのような職種が関わっているのでしょうか?

A

多職種にわたるチーム医療で患者をサポートしている

陽子線治療では、放射線腫瘍専門の医師だけではなく多くのスタッフが活躍をしています。適応の判定や治療計画の補助をはじめ、実際に治療を行う役割、治療計画を立てる際、治療が計画どおりにいくように計算値と照射した陽子線の線量が一致しているかの確認作業をする役割、診療の補助から患者さんのサポートまで広く対応する役割など、コメディカルの支えがないと治療は成り立たないため、チームで取り組んでいくことが大切です。また、当院は総合病院の強みを生かして、糖尿病や高血圧、心疾患など基礎疾患のある人への治療や何か有害事象が起こった場合は、全診療科で協力して治療を行えるように体制を整えています。

Q治療を開始する前には何か準備が必要ですか?

A

治療計画はCT画像とMRI画像を重ねた融合画像を用いて作成

最初に適応判定委員会を開きます。前立腺がんの場合、泌尿器科、放射線腫瘍部門、放射線診断部門、診療放射線技師、看護師が一同に会して適応を見極めていきます。その判定後、患者さんに説明をして同意書を頂き治療の準備を始めます。準備は疾患により異なりますが、放射線の当て方や細かな線量を決めるため、部位に適した体位で撮影できるようオーダーメイドの固定具を用いて体を固定してCTを撮影します。臓器によってはMRIやPET-CTなどの画像も組み込みます。それらをもとに陽子線線量分布図を作り、実際に陽子線を当て検証し問題なければ治療を開始します。治療計画のCT撮影から治療までに約1〜2週間かかります。

Q治療の回数や入院の有無なども知りたいです。

A

先端医療センターの待合室は大きな窓から光が入り明るい雰囲気だ

放射線が当たる部位が特定されているため患者さんの体へのダメージも小さく通院での治療ができます。現時点の治療回数は前立腺がんでは、低リスクの場合は20回、中等および高リスクは21回です。毎回予約を取って治療を受けていただくことになりますが、照射する時間はできれば同じ時間が望ましいです。お仕事や家庭の都合の合間に治療を続け、疲れたときには体を休めたり、当院であれば、帰りにちょっと気分転換に鎌倉を散策したりして、生活の一部として治療を続けていけるのも良いと思います。

患者さんへのメッセージ

徳植 公一 放射線腫瘍科陽子線治療部長

1981年大阪大学医学部卒業。1991年国立がんセンター放射線治療部、2001年筑波大学陽子線医学利用研究センターで勤務。2008年東京医科大学放射線医学分野主任教授に就任、2018年東京医科大学特任教授を経て、2021年より現職。日本医学放射線学会放射線科専門医。

がんは年齢とともに発症しやすく、長生きすると、がんも1つだけではなくいくつも経験することは珍しくありません。それに合わせる形で体の負担が少ない陽子線治療を当院で開始することとなりました。1回の照射で終われば良いのにと思われるかもしれませんが、そうすると体の奥には相当の負担がかかってしまいます。何回にも分けて毎日少量ずつ治療をするのが良い方法ですが、どこまで通院の負担を減らせるかということもあわせて検討しています。私たちは先端技術と患者さんの負担に配慮した医療で、心身ともに負担の少ない陽子線治療をめざしています。陽子線治療は、これからも発展を続け、今以上に良い治療になっていくと思っています。

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