公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立市民病院
(神奈川県 横須賀市)
長嶺 弘太郎 院長
最終更新日:2025/12/11


横須賀西海岸地域での「医療のよりどころ」
「地域はこの病院に期待してくれている。だからこそ裏切るわけにはいかないんですよね」と話すのは、「横須賀市立市民病院」長嶺弘太郎院長。消化器外科を専門に長年同院の診療を支え、2025年7月より院長に就任した。1963年12月に横須賀市立武山病院として開設され、2010年4月には公益社団法人地域医療振興協会の指定管理となった同院。60余年にわたり、横須賀市西部の中核をなす病院として、市内はもちろん三浦市、逗子市、葉山町、鎌倉市などからの患者を受け入れている。「首都圏では珍しく人口減が進むエリアではありますが、ここに病院がある意味を大事にしたい。人口が多くない地域でも医療ニーズは確実にありますから」と話す長嶺院長に、ハイケアユニットを擁しての二次救急対応から急性期医療、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟での機能回復、健康診断部門での予防医療まで幅広い医療を提供する同院の特徴や診療科ごとの強み、近年の取り組みなどを聞いた。(取材日2025年11月10日)
この病院の特徴と地域で担われている役割などを教えてください。

横須賀市西海岸エリアを支える地域医療支援病院として、急性期から回復期、そして予防医療まで一連の医療を一拠点で完結できることが大きな特徴です。毎年多数の救急搬送を受け入れ、ハイケアユニット(HCU)を軸に高い急性期医療を維持しています。また、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟では、自宅や施設へ戻るための生活機能回復を丁寧に支えています。このエリアは決して人口密度が高い地域とは言えませんが、医療ニーズは確実にあります。だからこそ、「ここに病院がある意味」を大切にし、近隣のクリニックの先生方が安心して紹介できる「地域医療のよりどころ」であることが使命です。私自身も横須賀育ちで、この地域に育ててもらったという思いがあります。今回、管理者兼院長となったのも、これまでの恩返しの機会を頂いたと捉えています。患者さんにも職員にも「ありがとう」と言われる病院をめざし続けたいですね。
診療科ごとの強みがあれば教えていただけますか?

外科・消化器外科では比較的侵襲性の低い腹腔鏡手術を中心として、胃がん・大腸がん・乳がんなどに幅広く手術を実施し、その後の化学療法まで継続的に対応しています。地域のニーズに応えるために女性医師による乳腺外科外来も定期的に実施しています。肝胆膵分野の内視鏡治療でも大学病院と連携して高度な技術を導入していますし、泌尿器科では尿管がんへのレーザー治療といった珍しい治療も提供しています。整形外科では特に変形性膝関節症の治療に注力。一般外傷や人工股関節置換術、手の外科、脊椎疾患にも対応しています。さらに、週末の脳卒中診療を積極的に受け入れ、救急隊の皆さんが安心して搬送できる体制づくりを進めています。近隣の医療体制が変化する中でも「地域で完結させる医療」を崩さず、標準治療をしっかりと提供することを重視してきました。派手さよりも確実さ、そして「求められる医療をきちんと提供すること」が当院の強みです。
近年、新たに導入された治療などはありますか?

近年本格的に取り組み始めたのが、夜間透析、そして持続陰圧療法による褥瘡(じょくそう)治療です。夜間透析は、「夜寝ている間に治療し、朝は仕事へ」といった生活を守れる治療として、地域の働き世代を中心に大きな反響を頂いています。褥瘡治療は、在宅医療や施設の現場で最も困る課題の一つですが、持続陰圧療法を取り入れることで、当院が短期的・集中的に治療を行い、改善した状態で地域にお戻しするという新たなモデルづくりに取り組んでいるところです。介護者や在宅医の負担を大幅に減らすことが期待でき、こちらも開始後すぐに多方面から反響がありました。地域に暮らす方々の「困った」に応える医療こそ、当院の存在意義につながると感じています。地域の医療ニーズは時代とともに変わりますので、それらを見逃さず、柔軟に対応できる病院であり続けたいと考えています。
地域医療支援病院であるとともに、災害拠点病院でもありますね。

横須賀市内でも限られた災害拠点病院の一つとして、津波や地震などの大規模災害に備えた体制を整えています。直近では、私も県の大規模災害訓練「ビッグレスキューかながわ」に参加しましたが、災害時は通常医療と異なる判断が求められることをあらためて実感。2025年7月のカムチャッカ島沖で発生した地震に伴う津波警報発令時には実際に外来を中断し、上階へ避難する対応を取りましたが、訓練を積み重ねた職員が非常に落ち着いて行動してくれたことに頼もしさを感じました。地域住民が病院へ避難していらしたこともあり、「地域のよりどころ」として皆さんに頼られていることを強く感じました。災害は頻繁に起きるものではありませんが、だからこそ平時の備えがすべてです。地域の医療機関や行政とも連携し、西海岸エリアの安全を守る病院としての責務を今後も果たしていきたいと思います。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

私自身、横須賀で生まれ育ち、この病院でも20年近く働いて、ここで育ててもらったという思いが強くあります。その恩返しとして管理者の役目を引き受けましたが、求められるのは経営の数字に加えて、医療の質・安全・働きやすさをどう守るかという難しいかじ取りです。職員には「ありがとうと言える関係」を大切にしようと伝えていますし、互いを認め合う文化づくりとして職員表彰の仕組みも始めました。医療情勢は厳しく、病院の将来像を模索し続ける状況ですが、まずは地元の皆さんに求められる医療を丁寧に提供し続けることが最も重要だと思っています。「困ったときに頼られる病院」「地域に愛される病院」をめざし、一歩ずつ進んでいきたい。まだ道半ばですが、地域の皆さんとともに病院の未来をつくっていくつもりです。温かく見守っていただき、お困りの際にはぜひお気軽に頼っていただければと存じます。

長嶺 弘太郎 院長
1993年横浜市立大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院、独立行政法人国立病院機構横浜医療センター、横浜市立市民病院などを経て、横須賀市立市民病院に着任。消化器外科を専門に長く同院の診療を支え、2025年7月に管理者兼院長に就任する。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医。





