大和市立病院
(神奈川県 大和市)
石川 雅彦 院長
最終更新日:2025/11/04


「健幸都市」で中心的役割を果たす基幹病院
1955年の開設以来、地域医療を支える基幹病院として、また医療従事者を育てる教育医療施設としての使命を果たしてきた「大和市立病院」。大和市役所の向かいに構えた拠点に幅広い診療科と2025年10月からは393床となる病床を備え、大和市がめざす「健幸都市」実現において中心的な役割を果たしている。2023年4月より、そんな同院の院長を務めているのが石川雅彦先生。地域医療への興味から2010年に自ら志願して同院に移り、産婦人科担当部長を皮切りに、診療部長、副院長としてその運営を支えてきた。院長就任後は手術支援ロボットを導入するなど新たな医療にも積極的に取り組み、地域医療の発展に尽力している。「何が不足しているかという視点で地域に目を向け、求められている医療を提供できる体制を整えることが重要」と話す石川院長に、同院の特徴や今後の展望などを聞いた。(取材日2025年9月12日)
まずは、大和市立病院について簡単に教えてください。

大和市がめざす「健幸都市」の実現を支える中心的医療機関として、救急医療、災害医療、急性期医療、小児・周産期医療を提供しています。特に、神奈川県央地域においては、小児救急・周産期・婦人科救急の受け入れ機関が少なく、当院の果たす役割が重要であると考えています。小児科は常勤医師が13人体制で365日24時間対応。産科はNICUを設置し、北里大学病院を中心とした県央・県北地区の周産期救急協力病院となっています。当院の周囲には急性期医療を担う病院が数多く存在する中で、機能分化も意識しながら、地域ニーズに応じた診療体制を整えることを重視しています。教育医療機関としては、臨床研修指定病院であるほか、神奈川県の看護師等実習養成施設として、医療従事者の育成に力を注いでいます。
近年、新しい医療にも積極的に取り組んでいらっしゃるとか。

2024年に手術支援ロボットを導入し、泌尿器科・婦人科・消化器外科で活用しています。新規患者さんの来院にもつながっていると手応えを感じています。循環器分野では心房細動に対する効果が期待でき、合併症の少ないカテーテルアブレーション治療であるパルスフィールドアブレーションも開始。新しい技術を導入することで「信頼できる病院」のイメージにつながればと考えています。整形外科では脊椎や人工関節が専門の医師を招き、高齢化に伴うニーズに対応する体制を強化。血液疾患に関しても大学と連携して医師を確保し、地域に不足していた分野を補っています。頼られる存在であり続け、安定的な運営を継続するためには、地域が必要とする疾患に対応できる医師を確保することが不可欠。当院のような中堅規模の公立病院は人材確保が厳しい立場ですが、院長就任以降積極的に大学を訪問し、直接働きかけて必要な分野の医師を招聘できるよう努力しています。
地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院でもあるのですね。

はい。救急搬送の積極的な受け入れにより、地域医療に貢献しています。医師が直接救急隊からの電話を受ける仕組みや、さまざまな角度から受け入れを促進する工夫も導入。逆に受け入れられなかったケースは聞き取りするなどの取り組みにより、救急車受け入れ件数はこの2年間で大幅に増加しました。さらに、地域の医師会と定期的に情報共有し、顔の見える関係を築くことでも医療連携を強化しています。がん診療は地域がん診療連携拠点病院として、内科・外科・婦人科を含めた幅広い診療科で対応。多彩な診療科をそろえ、各診療科が横断的に連携して診療にあたる体制を取ることで、複数疾患を抱えるがん患者さんの多様な症状に対応できることも特徴です。今後は緩和ケア内科を再開予定で、治療から緩和ケアまで一貫して支援できる体制構築をめざしています。地域の先生方とも連携し、在宅復帰支援や疼痛管理を含めた包括的ながん医療を提供しています。
教育機関としてはどのような役割を担っていますか?

若手医師の育成に力を入れ、北里大学や横浜市立大学と連携して教育体制を整えています。大規模病院に比べて少人数体制であるため、研修医一人ひとりに手厚い指導ができる点が特徴です。面接では成績優秀者が集まり、優秀な学生から研修先として希望されることも多く驚いています。先輩医師との距離が近く、実践的に学べる環境が魅力となっているのでしょうか。実際にここで研修した医師がそのまま大学に入局し、再び当院に戻って活躍するという循環も生まれています。また、大学と連携を組むことで、優秀な若手医師の育成にも尽力しています。教育と人材確保には一見関連がないようにも思われますが、「丁寧に育てる教育体制」が、医師確保や地域医療の質向上においても、着実に好循環を生んでいるように感じています。
今後の展望と、地域の皆さんへのメッセージをお願いします。

地域に求められる診療科をそろえ、必要な医療を実践できる医療者を確保するためには、経営の安定が不可欠です。人事院勧告により人件費の引き上げがなされた上、円安などで医療資材の費用も上昇傾向にある現在。より良い医療を提供するための原資を確保するための経営改善は今後も課題となります。毎月各診療科部長を集めて目標を確認する経営会議を開くなど、一丸となってより良い医療提供に向けて取り組んでいるところです。このように、当院は地域の基幹病院として、安心して頼っていただける体制づくりを進めています。ただし、まずはかかりつけ医を持ち、必要な際にご紹介いただくことが望ましいと考えます。救急医療やがん診療をはじめ、幅広い分野で専門性を持つ医師をそろえ、地域全体で医療を支える拠点であり続けたいと思います。「必要な時に安心して受診できる病院」をめざしています。ぜひ頼りにしていただけたらと存じます。

石川 雅彦 院長
1985年宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒業。横浜市立大学附属病院、小田原市立病院、済生会横浜市南部病院、横浜市立港湾病院などを経て、横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科部長・准教授に。2010年大和市立病院入職。産婦人科担当部長、診療部長、副院長を歴任後、2023年より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本生殖医学会生殖医療専門医。母体保護法指定医。医学博士。





