医療法人社団 春陽会 参宮橋脊椎外科病院
(東京都 渋谷区)
原田 智久 院長
最終更新日:2026/03/18


低侵襲治療を軸とする脊椎専門病院
頸椎から胸椎、腰椎、骨盤までの脊椎疾患を専門に扱う「参宮橋脊椎外科病院」。紹介患者の手術治療を中心に据えつつ、内視鏡や顕微鏡を用いた低侵襲手術を軸に「患者の状態に合わせて最適な手段を選ぶ」診療をめざしている。椎間板ヘルニアなどでは小さい侵襲での治療を追求し、固定術が必要な症例では筋肉をできるだけ温存するアプローチも取り入れるのが特徴だ。薬物療法やブロック注射に加え、注射でヘルニアの改善を図る方法、局所麻酔下での低侵襲な処置、手術後に残る痛みへの新たな選択肢まで、治療の幅を広げている。術後は早期離床とリハビリテーションに力を入れ、医師・看護師をはじめ院内スタッフが脊椎診療に特化した体制で、急ぎの患者にもできるだけ迅速に対応。地域の医療機関と役割分担しながら、必要な治療を必要なタイミングで届けるための連携も重ねている。2025年4月に院長に就任した原田智久先生に、同院がめざす脊椎医療と今後の展望について話を聞いた。(取材日2026年1月15日)
こちらの特色と地域での役割を教えてください。

当院は脊椎疾患を専門に、頸椎から胸椎、腰椎、骨盤まで幅広く対応しています。紹介で来院される患者さんには、強い痛みやしびれで歩行が難しい、力が入らないなど手術を要するケースが多く、入院治療は手術が中心です。一方で外来では、薬物療法や注射などの保存療法も行っています。必要な治療を適切なタイミングで提供できるよう、画像所見と症状の程度、日常生活への影響を見極めた上で手術の要否を判断し、その人にとって負担の少ない方法を提案します。治療後は地域の医療機関へつなぐことも、当院の大切な役割です。術後の経過が安定した方については、定期フォローや骨粗しょう症の治療、痛み止め・しびれの薬の調整などを地域の先生方と分担し、症状の悪化やまひなどの変化が出たとき、画像の再評価を要する場合は、速やかに対応します。脊椎疾患の患者数が増える中、当院だけで抱え込まず、地域と連携して患者さんを支える体制を重視しています。
低侵襲手術に力を入れていると伺いました。

脊椎手術は技術革新が著しい分野です。従来は大きく切開する方法が中心でしたが、近年は内視鏡や顕微鏡を用い、筋肉への負担を抑えた低侵襲手術が広がっています。当院では低侵襲手術を軸とし、椎間板ヘルニアでは内視鏡で小さく穴を開けて病変を取り除くなど、病態に応じて内視鏡と顕微鏡を使い分けています。頸椎でも範囲が限られる場合は内視鏡的に治療できることがあり、脊柱管狭窄症などでは顕微鏡のほうが視野を確保しやすく、安全性と確実性が見込める場面があります。大切なのは術式を決め打ちするのではなく、その方に必要な治療を最小限の侵襲で行うことです。側湾症やすべり症などで固定術が必要な場合は金属のねじを用いますが、骨や筋肉の隙間からアプローチして侵襲を抑える工夫も取り入れています。技術の進歩で手術時間が短縮できるケースも増え、従来のイメージだけで治療を遠ざけず、困り事が続くときはまず相談してほしいと考えています。
保存療法についても教えてください。

当院はすべて手術だけで解決しようとは考えていません。外来では薬物療法やブロック注射などの保存療法を行い、手術と保存療法の間に位置づけられる治療も用意しています。例えば、注射でヘルニアの治療を図る腰椎椎間板内酵素注入療法は、全員に適するわけではありませんが、手術に踏みきる前の選択肢になり得ます。また、細いカテーテルをお尻の付け根あたりから入れて神経の通り道となる硬膜外に働きかける硬膜外癒着剥離術という処置もあり、局所麻酔で行える低侵襲な治療として、高齢者など大きな手術が難しい場合にも提案できることがあります。さらに手術後にしびれや痛みが残る方に対し、細い電極を入れて脊髄を刺激し、過敏な痛みを抑える脊髄刺激療法にも取り組み始めました。大切なのは、手術をするかしないかの二択にせず、状態に応じて納得して選べる幅を持つことです。手術が必要かどうかを見極め、必要な場合は負担を抑えた方法を選びます。
スタッフ体制や術後リハビリもこちらの強みと伺いました。

当院の強みは、医師はもちろん看護師、受付、薬剤師まで、スタッフ全員が脊椎治療に特化している点です。日々脊椎の患者さんを診ているからこそ、初診から術後ケアまで要点を押さえた対応ができます。医師は6人在籍し、全員が脊椎治療のエキスパートとしてチームで一定の質を保ちながら診療にあたっています。毎日が手術日であることもあり、「まひで動けない」「痛くて動けない」といった急ぎの患者さんにも、できるだけ早く対応できるよう受け入れ体制を整えています。術後リハビリも特徴で、基本は翌日から立つ練習を開始し、状態によっては手術当日から始めることも。リハビリは脊椎術後の患者さんを中心に行い、スタッフも日頃から術後の注意点を踏まえてADL訓練を重ねるため、安心して取り組んでいただけるでしょう。さらに、専門領域だからこそ説明が難しくなりがちな点を意識し、できるだけかみ砕いて伝える姿勢を院内で共有しています。
地域連携を踏まえた今後の展開についてお聞かせください。

手術件数が増えるほど、術後が安定した方を当院だけで長期フォローするのは難しくなります。そこで定期フォローや薬の調整は地域の先生方にお願いし、当院は半年に1度チェックするなど役割を分担しながら患者さんを支え、術後に継続的なリハビリが必要な場合も、続けやすい医療機関へつなぎます。これまで手術件数は年々増加しています。今後は内視鏡手術から固定術、頸椎の治療まで幅広い技術を高いレベルで提供できる医師を育成し、体型や年齢に合う服を選ぶように、方法を押しつけず「その人に合う治療」を選べるチームを強化するのが目標です。神経の手術は進化していますが、一度傷めると元に戻すことは難しいため、治療の時期を逃さないことが大切です。首や背中の手術への恐怖心だけで受診を遠ざけず、まずは検査を受けていただきたいですね。メリットとリスクを理解した上でご自身が納得して判断できるよう、後悔のない決断を支えたいと考えています。

原田 智久 院長
1996年京都府立医科大学卒業。京丹後市立久美浜病院、松下記念病院、京都府立医科大学助教などを経て、洛和会丸太町病院脊椎センターの設立に携わる。後に同院副院長、同センター長を務め、2025年より現職。参宮橋脊柱外科病院での診療・手術に加え、全国各地の病院でも手術を執刀する。国内外での講演や研究発表も積極的で、海外の医師との交流や見学受け入れなど国際連携にも取り組む。日本整形外科学会整形外科専門医。





