社会福祉法人聖ヨハネ会 桜町病院
(東京都 小金井市)
小林 宗光 病院長
最終更新日:2020/11/25
78年の歴史を持ち、地域に愛される病院へ
小金井市に1939年開院以来、時代を見据えながらも、最も弱い人に奉仕することをモットーとしてきた「社会福祉法人聖ヨハネ会桜町病院」。新生児と母親をサポートする「まなざし」の会や、人生の最期を見守るホスピス、高齢者と家族を支える認知症疾患医療センターや地域包括ケア病棟など、新生児から終末期まで、すべてに温かく慈愛に満ちたカトリックの精神が行き渡る病院だ。2012年から病院運営を担う小林宗光病院長は、小児循環器科の出身で、先天性の心疾患や川崎病など多くの子どもの診療に携わってきた。治療だけでなく心のケアに注力し、さまざまな家族と接してきた経験を生かし、同院でも全人的な医療を心がけ、家族へのケアや育児の相談にも積極的だ。その一方、病院長として地域の医療ニーズを的確に捉え、高齢者の医療やホスピスなど、急性期病院や開業医では行き届きにくい分野の診療にも力を入れ、地域医療全体を見渡す。「ますます医療、介護、地域との連携が必要」という小林病院長に病院の特徴やめざすところを聞いた。(取材日2017年11月13日)
こちらの病院のあらましを教えてください。
当院は「私たちはキリストのように人を愛し、病める人、苦しむ人、もっとも弱い人に奉仕します」を基本理念に、地域の医療ニーズに対応できるように診療体制や施設設備を整備し、近隣の高機能病院や開業医、福祉施設との緊密な連携の下に安全・安心の医療を提供するよう努めています。「患者さんの声に耳を傾ける」「患者さんの痛みや苦しみを理解する」「患者さんの傍らに寄り添うケアの姿勢」を桜町マインドという診療方針として掲げ、カトリックの精神が病院全体に行き渡るようにと考えています。新生児からご高齢の方までの一般的な疾患に対応し、ホスピス、内科、産婦人科、整形外科のご紹介が多いのが特徴です。2007年に全面改築、2016年には東京都から地域連携型認知症疾患医療センターに指定され、2017年には地域包括ケア病棟を開設。診療だけでなく、障害のある子どもたちを預かる「桜町児童ショートステイ」などの活動も行っています。
ホスピス病棟を設けられているのも特徴的ですね。
ホスピス病棟は、同じ病院の敷地内に独立して建てられており、建物が一つの家のようになっています。広いラウンジがあり、ご家族との食事やコーヒーを楽しむこともできます。またピアノを弾いたり音楽を聞いたり、カラオケもできる防音設備のあるプレイルームや、お祈りをするスペースもあります。患者さんが希望されればお酒も楽しめますし、入浴時間や食事時間なども患者さん本位です。ホスピスケアとしては、身体的、精神的な痛みにとどまらず、家族のこと、仕事のこと、お金のことなどの社会的な痛み、さらに生きている意味や価値にかかわるようなスピリチュアルな痛みを全体的に診ていきます。その方がいちばん大切にしていることをスタッフ全員がチームとなって支えていくのが当院の特徴です。入院を希望されるのはがんのターミナルケアの方がほとんどで、ご希望に応えるため、マンパワーも確保して、最近ではほぼ満床近く受け入れています。
診療科には、どのような特色がありますか。
診療科では整形外科と産婦人科の手術体制を強化してきました。整形外科ではスポーツ外科、膝関節を専門とするドクターも加わり、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの脊椎の手術、膝や股関節の人工関節置換術の手術も積極的に行っています。内科各領域の専門の医師もおり、チームで患者さんを診ることができ、高齢の方も安心だと好評です。産婦人科は東京医科大学病院との強い連携があり、当院では良性腫瘍の低侵襲手術を多数行っています。大きな病院から当院へ紹介されることもあります。また産科では分娩に至るまでの時期を支える「母親学級」や出産後の子育てをサポートする「まなざし」という活動を行っています。ホスピスではなく一般病棟に入院され緩和ケアが必要な患者さんには、ホスピス科の医師を中心に多職種で構成された緩和ケアチームが活動してチーム医療に心がけています。また高齢の方の入院も多いため認知症のケアにも力を入れています。
地域で果たす役割についてお聞かせください。
古くから地域の方に頼りにされてきた病院であり、多くのボランティアの方に支えられている病院でもあります。また当院の半径10キロメートル圏内には、大学病院、都立や公立病院、武蔵野赤十字病院や榊原記念病院など、ICUをもつ急性期病院が多く点在します。当院では、こうした病院では手の回りにくい領域や、既存の医療、福祉の流れの中で困っている方への対応に注力してきました。2017年には在宅療養支援病院となり、地域包括ケア病棟も開設。開業医の先生やケアマネジャーさんとも顔の見える関係ができ、連携も進んできました。地域包括ケア病棟48床は小金井市で大きい規模ですので、地域包括ケアシステムの中核となりたいと考えています。また無料低額診療も行っており、医療機関を受診しにくい方も受け入れています。「桜町児童ショートステイ」では小金井市、小平市、西東京市、武蔵野市の補助を受け、各市の障害児の受け入れも行っています。
今後の展望についてお聞かせください。
聖ヨハネ会には、障害者施設や高齢者施設などもありますから、さらに連携をとっていくことで、診療・介護をよりスムーズに進めていきたいと考えています。例えば在宅での訪問診療・看護・リハビリを行い、介護が難しくなったら施設へ、治療が必要なら病院へというように流れを作ることで、地域のニーズをさらに広く捉えることができるのではないかと考えています。認知症センターや地域包括ケア病棟も地域に浸透し、この医療圏での当院の立ち位置も明確になってきましたので、医療、介護の地域連携にもいっそう力を入れていきたいですね。そして、すべての職員が患者さんの心の痛みまでを理解してケアにあたり、患者さんの視点に立ったより良い医療の提供に努めたいと思います。他の医療機関や介護・福祉施設、行政とも緊密に連携して、高齢の方や、病気や障害のある方も住み慣れた地域で安心して暮らせるようサポートしていきたいと考えています。
小林 宗光 病院長
1974年東邦大学医学部卒業。専門は子どもの心臓病で先天性心疾患、川崎病などの子どもの診療に多く携わってきた。心臓病の子どもと家族の団体「心臓病の子どもを守る会」に関わるなど、診療だけでなく心のケアにも注力。2000年に小児科の医師として「聖ヨハネ会桜町病院」に入職し、2012年病院長に就任。カトリックの精神に基づく診療理念と、中堅病院のフットワークの良さを生かして地域を支える病院運営を担う。